スイッチの帯域を高めるEthernet Fabric
Ethernet Fabric技術と類似の仕組みの比較
2010年後半には、いくつかのメーカーがIEEE 802.1aq Shortest Path Bridging(以下、SPB)と呼ぶ技術を市場に投入した。SPBは、VCSが基にしているIETF TRILLと比べて、どのように異なるのだろうか。
802.1aq SPBは、TRILLと同様に、L2で使用できるルーティング・プロトコルとしてIS-ISを規定している。そのほかの特徴としては、バックボーン側でMACアドレスの学習をさせないことが挙げられる。TRILLのような独自のMAC-in-MACカプセル化技術とは異なり、SPBの場合、パス管理のためのOAM(保守・管理機能)に、Ethernetの技術を使用できる。
SPBでは、VLANとユーザーを同定するためにVIDを使用する。このため、L個のVLANとM個のBridge があり、さらにN個のマルチパスがあると仮定すると、L x M x N個のVIDを消費することになる。したがって、このままでは大規模ネットワークへの適用が困難となる。また、MACアドレス学習の対称性の要請から、MACフレームの転送などに大きな課題がある。
もっとも、802.1aq SPBが抱える上記の課題は、802.1ah Provider Backbone Bridge技術と同時に使用することによって、大部分が解消する。TRILLと802.1aq SPBのどちらが優れているのか、という話は、着目している点によって異なってくるが、下記の表に示した通り、フレーム効率に関してはTRILLの方が優れている。
TRILL 20バイト | TRILLヘッダ | 8バイト |
Outer MACヘッダ | 12バイト | |
SPB(+PBB) 22バイト | 802.1ahタグ | 18バイト(Outer MAC 含む) |
B-VLANタグ | 4バイト |
図6: TRILLとSPBの比較(クリックで拡大) |
また、TRILLと802.1aq SPBの大きな発想の違いとして、Time-To-Liveがある。SPBはEthernetを踏襲しているためTTLは無い。一方、TRILLは「ルーティング」の発想に基づいているため、TTLが存在する。
また、SPBにはEthernet以上のMACアドレス学習は無いが、SPB+PBBでは、コントロール・プレーンでの学習が可能になっている。TRILLの場合はEnd Station Address Distribution Instanceと呼ぶオプションが規定されている。この点に関してBrocade VCSでは、FCのファブリック・サービスに基づく独自の拡張を行っている。
このように、新しいデータセンター・ネットワーク技術では、MAC学習の最適化も含む、さまざまな機能を定義している。
第2回まとめ
今回(第2回)は、仮想化やクラウドがもたらすトラフィックの増加に対して、ネットワーク側に必要となる機能について説明した。純粋に、ネットワークから見た、スループットを向上するための技術について解説した。第3回では、VCSがもたらすサーバー仮想化との連携機能と管理性について説明する予定である。