BCPを理解して災害復旧計画に取り組む
はじめに
東日本大震災をきっかけに、事業継続管理への取り組みの重要性が再認識されている。既に策定済みの企業においては計画の見直しを実施中であり、未策定の企業においては早急な計画の策定が必要とされている。事業継続を計画し管理していくことの重要性については、もはや議論の余地は無いところだろう。本連載では、企業活動(事業)を支えるインフラである情報システムにおける事業継続計画について、検討のステップ、検討のために必要な各種指標、構成などを解説していく。
なお、本稿で述べるBCP策定のために検討すべき事項やステップについては内閣府が発行している「事業継続ガイドライン 第一版」および「事業継続ガイドライン 第一版 解説書」が参考となる。したがって、詳細な内容についてはこれらを参照して頂くことを推奨する。
BCPの概念
近年の企業活動において、災害や事故による業務中断の影響は自社に与える損失にとどまらず、サプライチェーンを構成する企業の業務停止や損失へと波及する。そのため、企業が災害・事故に遭遇しても業務を継続するということは社会責任を果たすという意味からも必要であり、事業継続への取り組みは必須項目となっている。
事業継続への取り組みとは、『どのような災害・事故(リスク)に遭遇しても、重要業務の中断をできる限りしない、あるいは中断してしまった重要業務を可能な限り早く再開させるか』という課題を実現するための戦略的な計画(BCP)とその運用管理(BCM)の構築への取り組みとなる。
図1はBCPの概念を表したものである。縦軸の操業度とは、サービスの範囲、量、質など企業の活動状況を表す値で、平常時であれば100%になる。
図1:BCPの概念(クリックで拡大) |
災害や事故により業務が停止してしまった場合、BCPを策定していないと操業度は災害発生と同時に一気に0%となり、赤の実線のような曲線をたどると予想される。BCPを策定している場合では青の点線に示すように、最低限の操業度を維持しながら、操業度100%である平常時まで、より短期間での回復が可能となる。