走る!噛む!測る!Kinect for Windowsコンテストで飛び出した奇想天外なアイデアたち
グランプリ受賞は「Kinectによる側弯症計測システム」
東洋大学 メディカルロボティクス研究室
見事グランプリを獲得したのは、東洋大学メディカルロボティクス研究室、秋元氏のプレゼンテーションによる、「Kinectによる側弯症計測システム」です。
側弯症は若年での発症率が高いため、小中学生の時に検査する必要があります。ただし、X線による検査では被ばくのおそれがあったり、またモアレ診断用の機械は1台あたり数百万円と非常に高価なことなど、様々な課題がありました。
これを安価なKinectで実現しようとしているのが東洋大学のシステムです。プレゼンでは、より安価な側弯症の検査システムとして、順天堂大学でのデータ集計が進んでいるなど、実用化に向けての動きがアナウンスされました。
Kinectだけでなく、計測するための器材も用意されていて、所定の位置に立って、両手で持ち手をつかむことで、背骨の曲がり具合を正確に計測することが可能です。
審査員からも質問が多く寄せられ、現在の全国における検査の実態や、より早く実用化して欲しいといった要望が聞かれました。
その他の発表作品
ここからは、その他の発表を紹介していきます。
Kinectを利用した半球型視点追随ディスプレイ
隅田 間静氏
Kinectでユーザーの頭部位置を計測して、半球型のスクリーンに投影した3D画像を回り込みながら見ることのできるシステムです。
モニターが一つのため、複数人には対応していないなど課題はあるものの、Kinectを使ったモーションキャプチャと3D映像の融合という、表現の可能性を感じることができました。
Kinectを応用した産業用ロボットの画像認識システム
ダブル技研株式会社
ダブル技研株式会社からは、産業の効率化を目指して作成されたシステムが紹介されました。
このシステムでは、Kinectのカメラと深度センサーを活用して、生産ラインに流れる部品の向き、高さを正確に認識した上で、ロボットハンドがピッキング作業を行うことが可能になります。
購買客動態の検知・集計アプリケーション
チームOWL
スーパーの買い物客はなぜその商品を買わなかったのか?目当ての商品が見つからない、あるいは手が届かない、などの理由で買い物をあきらめていた客の動態をつかみ、売り場の改善などに役立てる事のできるアプリです。
具体的には「商品を見ずに通過した」「商品に注目した」「商品を手にとった」「商品を購入した」という4つの行動をKinectが認識して、ユーザーの行動を分析・解析します。
HAND ME CARD
Ist
“手をつなぐ”というコミュニケーションに注目したアプリで、手をつないだアクションをKinectが感知すると、デジタル名刺を交換できるというものです。
カードには名前や連絡先、他に情報の追加ができるため、イベント会場や会社などで、直接コミュニケーションを深めるツールとして使うことができるという、今大会の中でもひときわ優しさを感じさせるアプリでした。
Kinect フレフレ・ロボット
チーム アフレル
最後にプレゼンを行ったのは、Think ITの連載記事でもお馴染みのアフレルによる、Kinectフレフレ・ロボットです。軽部氏扮する体操お兄さんがジェスチャーで指示を出すと、数十台のロボットたちが一糸乱れずに動作する様子はなかなか壮観でした。
教育のための見える化教育の一環として発表を行ったとのことでしたが、子どもたちによる途中のパフォーマンスも印象的で、楽しく見ることができました。
表彰式
グランプリおよび各賞の受賞結果は以下の通り
賞 | 作品名 | 応募者名/チーム名 |
---|---|---|
グランプリ | Kinectによる側弯症計測システム | 東洋大学 メディカルロボティクス研究室 |
アイデア賞 | ジョグ・ザ・ワールド | アニマルズ・パーティー |
技術賞 | 非接触型咀嚼センシング ~食環境づくり噛むログ~ | 千葉大学先進的マルチキャリア育成プログラム TeamCIT |
奨励賞 | KINECTを用いた腹腔鏡下手術支援システム | 三木 大輔 氏 |
グランプリに輝いた東洋大学 メディカルロボティクス研究室の秋元氏には、審査員から早く実用化し欲しいという発破をかけられる一幕もあり、発表作品に対する期待がうかがえました。
おわりに
大会を通じて感じたのは、市販されている高価なセンサーユニットに比べて、アイデア次第で安価に精度の高いシステムを作れることです。完全に置き換えができなくても、部分的に補うことができたり、場合によってはこれまで不可能だったことを可能にするといった、非常に高いポテンシャルを感じることができました。
審査員からも、たくさんのセンシング機能を使ってもらっている。生活につながるKinectを感じることができた。といったコメントがありました。新しいSDKを使ったアイデアにも期待しているとのことで、これからの発展がとても楽しみです。
【関連リンク】
(リンク先最終アクセス:2012.10)
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