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enchantMOONに覚える奇妙な既視感(デジャヴュ)

2013年9月5日(木)
宮原 徹(みやはら とおる)

Think IT編集部から届けられたenchantMOONを見て、奇妙な既視感(デジャヴュ)を覚えた。

実はenchantMOONについてはノーマークで、編集部から「レビューを書きませんか?」と言われるまであまり興味が無かった。そのため、先入観無しで見られるよう、編集部からenchantMOONを受け取るまで、関連記事などを見ないようにしていた。

既視感(デジャヴュ)の正体

さて、実際にenchantMOONの実物を受け取って感じたのは「あれ、この感じ、記憶にあるな」ということ。理由を考えてみると、10年以上前の仕事に思い当たった。今でこそ私は仮想化やクラウドといった、どちらかというとレイヤーがやや上寄りの分野で仕事をしているが、10年以上前は「アクアリウムコンピューター」というアプライアンスのサーバーハードウェアを製造、販売する仕事をしていた。名目上は代表取締役社長ということになっていて、主にマーケティングとセールスを担当していた。

この会社では、「blue grass」や「silver neon」、「white neon」といった熱帯魚の名前をつけた、小さいサーバー(マイクロサーバー)を作っていた。LinuxとWeb管理ソフトウェアがプリインストールされていて、簡単に設定できてすぐに使えるということと、デザインのかっこよさが売りだった。そういえばneonシリーズにはハンドル(というか取っ手)が付いていたのが、enchantMOONに似ているといえ無くもない。

マイクロサーバーの製造、販売を行っていた頃の筆者
マイクロサーバーの製造、販売を行っていた頃の筆者

自らのビジネスから学んだこと

しかし、このビジネスは結果的にうまくいかなかった。課題はいくつかあったのだが、最大の問題は製造コストだった。小さいサイズを実現するために工業組み込み用PCボードを使っていたのだが、これが高かった。発注ロットの数量が多くなれば安く仕入れられるのだが、立ち上げたばかりのビジネスではそんなに数量はさばけない。さらに見た目をかっこよくするために、ケースの射出成形のための金型を作ったり、LEDで光らせたりといったことにもいちいちコストがかかった。結果として製造原価が高く、さらに販売のために粗利を乗せていくと最終的な販売金額は相当高くなってしまった。見た目は良くて欲しいと言われるが、金額を言うとなかなか買って貰えない。Linuxでサーバーをやりたいだけだったら、自作PCなりホワイトボックスなりでもいいわけで、そちらの方が圧倒的に低価格だった。

この失敗から私が得た教訓は、やりたいことを実現するための創意工夫には手間暇コストをかけるべきだが、本質に直接関係しないことには極力コストをかけないという、ごく当たり前のこと。

かっこいいサーバーを作るという「ビジネスの熱狂感」は認めるが、結果が出ない、継続性が無いのではビジネスにはならないということだ。優先順位を間違えてはいけない。私のやりたかったことは、突き詰めていけばLinuxの普及だったので、ハードウェアは何でも良かったのだ。結局、ハードウェアビジネスへの追加投資は困難という経営判断もあり、私のベンチャー企業での仕事は10ヶ月ほどで終わった。

ハードウェア作りは製造コストとの戦いでもある
ハードウェア作りは製造コストとの戦いでもある
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著者
宮原 徹(みやはら とおる)
日本仮想化技術株式会社 代表取締役社長兼CEO

日本オラクルでLinux版Oracleのマーケティングに従事後、2001年に(株)びぎねっとを設立し、Linuxをはじめとするオープンソースの普及活動を積極的に行い、IPA「2008年度 OSS貢献者賞」を受賞。2006年に日本仮想化技術(株)を設立し、仮想化技術に関する情報発信とコンサルティングを行う。現在は主にエンタープライズ分野におけるプライベートクラウド構築や自動化、CI/CDなどの活用について調査・研究を行っている。

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