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enchantMOONに覚える奇妙な既視感(デジャヴュ)

2013年9月5日(木)
宮原 徹(みやはら とおる)

何を優先するべきか、を考える

では、enchantMOONはどうなのか。実はまだあまり本格的に触れていないので、製品そのものについての判断は次回の記事であれこれ考えてみたい。しかし、実機を渡される際に色々と見せてもらったり、試しに触ってみたかぎりでは、なんでPoC(Proof of Concept:概念を証明するための試作品)をソフトウェアで行わなかったのか、ということだ。新しいコンセプトであればこそ、できるだけ広範囲に広めるための方策を採るべきではなかったのか。
つまり、一からモノを作る必要があったのか、ということだ。基本は手書き入力ということだが、だったら「ブギーボード」でいいのではないか、とも思った。私自身、字も絵も下手だからブギーボードすら使わないのだが。私は、キーボードという手書きよりも圧倒的に高速で確実な文字入力の手段を得たことで、これまで沢山の文章を残してきた。だから、ネットワークに接続されるデバイスで手書き入力にこだわるところが今ひとつピンと来ないところはある。そのあたりの個人的な考えは置いておくとしても、7インチほどのサイズの電子デバイスで手書き入力というのが、今ひとつしっくりと来ない。

そのため、どのようなシチュエーションで利用させたいのかも見えてこない。仕事の打ち合わせなどのメモであれば、速度的にキーボード入力だろう。ノートPCだけでなく、タブレットに外付けキーボードの人も多い。メモはそのままメールで関係者に送れるメリットもあるし、文字列検索でメモを探すことも簡単だ。
絵を描きたいならペンタブレットを使うだろうし、Webなどを見たいのなら今ならiPadかAndroidタブレットなのは、この記事を読んでいる読者ならよくご存じだろう。

作り手の“熱狂感”をどうやって広めるか

と、ここまで書いてきて、単にenchantMOONをディスってるだけと思われるかもしれないが、私自身の見方はちょっと違っている。私が書いたようなことはきっと分かっているだろうし、そういったことを全部ひっくるめて、それでも「enchantMOONを作りたかった」ということなのだなと思う。それは、10年以上前に「マイクロサーバーを売りたかった」、あの頃の私の熱狂感を思い起こせば分かる。そういったところも含めての「既視感」なのだ。分かるからこそ、できれば私のようにビジネス的に挫折すること無く、うまくいって欲しいと思い、言わずもがなのことを独り言のように書かせてもらった。

enchantMOONでユーザーにさせたいことは何なのか。そしてそれを実現するためには本当にモノを1から作る必要があったのか。そのあたりのことを考えながら、次回に向けて色々と触ってみようと思う。

【関連リンク】

enchantMOON

(リンク先最終アクセス:2013.09)

著者
宮原 徹(みやはら とおる)
日本仮想化技術株式会社 代表取締役社長兼CEO

日本オラクルでLinux版Oracleのマーケティングに従事後、2001年に(株)びぎねっとを設立し、Linuxをはじめとするオープンソースの普及活動を積極的に行い、IPA「2008年度 OSS貢献者賞」を受賞。2006年に日本仮想化技術(株)を設立し、仮想化技術に関する情報発信とコンサルティングを行う。現在は主にエンタープライズ分野におけるプライベートクラウド構築や自動化、CI/CDなどの活用について調査・研究を行っている。

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