「PyCon JP 2015」がやってくる!! 見どころ満載、楽しみ方は無限大
PyCon JPは、「Pythonユーザが集まり、PythonやPythonを使ったソフトウェアについて情報交換し、交流するためのカンファレンス」だ(PyCon JP公式サイトより)。2011年の「PyCon mini JP」と称したミニイベントから始まり、同年夏には記念すべき第1回の「PyCon JP 2011」を開催。2013年にはアジア太平洋地域のPyConである「PyCon APAC」も開催するなど、回を重ねるごとにその規模を拡大し、参加人数も増やし、着実に成長を遂げている。
Think ITとしては、本年10月9~12日に開催される「PyCon JP 2015」より、メディアスポンサーとして初参加する(遅い!)。そこで今回は、PyCon JPの座長を務める鈴木たかのり氏、副座長の関根裕紀氏、メディアチームの今津紀子氏に、PyCon JP 2015の見どころを聞いた。
PyCon JPの生い立ち
―― 2011年に初めて「PyCon JP」が開催されるまでに、どのような経緯があったのでしょうか?
たかのり氏:「PyConはもともと世界中で開催されているカンファレンスですが、2010年に「PyCon APAC」というアジアパシフィック地域のPyConがシンガポールで開催されて、日本から4名が参加しました。せっかく日本から行くので現地で会おうという話をして、その場で会って、全員が楽しかったという感想を持ち、その後日本に帰ってきてから『あれを日本でもやろうよ!』という話になって、試しに2011年の1月に「PyCon mini JP」というミニイベントを開催しました。
ミニイベントにしたのは、当時PyConのニーズがあるのかどうかが不透明だったからなのですが、実際にやってみたら130人くらいの人が来てくれたので、『これは、継続してやろう!』ということになりました。そして2011年の8月に第1回を開催して、こちらも盛況だったので『毎年やっていきましょう』ということで徐々に規模も拡大しつつ、毎年開催しています」
―― なるほど。そのPyConにたかのりさんが関わるようになったきっかけは?
たかのり氏:「私はコミュニティなどに関わらず、ずっと普通に開発者として仕事をしていました。そのときに、部署でZopeの「Plone」というアプリケーションを使いだして、情報があまりないので自分から情報を出したり、情報を求めてコミュニティにも行き始めたりしました。これがコミュニティ活動のきっかけです。
そのコミュニティで寺田さん(一般社団法人 PyCon JP代表)と知り合いになって、あるとき寺田さんから『Ploneカンファレンスという、年に1回みんなが集まるカンファレンスがあるけど、面白いから行かない?』という話があり、一緒に参加しました。行ってみたら、これがすごく面白かった。何か分からないけどすごく面白かった。それが私の原体験で、「ああいう感じのカンファレンスを日本でもできたら良いな」というのが、『PyCon JPをやろうぜ』って言い出した時のリファレンスになっているというか。
私は、初めて参加したPloneカンファレンスをベースに、自分がカンファレンスを開催するならこうしたい、と考えていることを少しでも盛り込みたいな、と思ってやっています。そのあたりはたぶん寺田さんと私で結構共通点があって、例えばスピーカーでもお金を払うとか、ご飯は必ず出すとか、外国人がいたら普通に話かけようとか、そういう国際カンファレンスっぽいものを日本でもやっている感を出したイベントにしていきたいなということはありますね」
テーマに込めた思い
―― PyCon JPには各回テーマが付けられています。今年は「Possibilities of Python」というテーマですね。テーマはどのように考えているのですか?
関根氏:「最初にアイデアを出してから、去年のテーマなどを見て決めています。今年は特に『去年から繋げていきたいね』と話していました。去年は「Rediscover with Python(Pythonで再発見)」というテーマでしたが、今年はそこに繋げられるようにと色々とブレストをして、最終的にはPythonに関わる人も、Python自体も大きな可能性を秘めているというところで「Possibilities of Python」に決まりました」
たかのり氏:「去年は、再発見するのはPython自体じゃなくて、Pythonを経由して『この人はこんな事ができるのか』とか、『こんなツールにこんな使い方あるのか』とか、自分が見ている範囲外にあるものを見てほしい、といった話が最初にありました。
こういうイベントだと、講演内容で選ぶと自分が聴きたいものしか行かないじゃないですか。そうじゃないところにも『あ!こんなものがあるのか!』とか『こんな事をやっている人いるのか!』とか、そういうものに触れるきっかけがあると良いなと」
―― 実際の成果として感じられるところはありましたか?
たかのり氏:「去年うまく繋がって良かったのは、「ポスターセッション」ができたことです。ポスターセッションでは、参加者がポスターで展示されているものを見ていくので、「まったく自分の知らないジャンルのことをやっているよく分からない面白人間がいる」、ということを知るきっかけになったのではと思います。それがすごく良かったなと感じています」
関根氏:「ポスターセッションだけでもWEB系、ゲーム系、データ解析系、ハードウェア系といろいろな人がいて、今は1つの技術だけじゃなく、色々な技術が集まってシステムはできているわけですから、そういう意味ではPythonだけじゃなくて、幅を広げて色々な所から色々な人に来てほしいですね」
PyCon JP 2015の見どころ
―― 先ほど「ポスターセッション」というお話も出てきましたので、ここで「PyCon JP 2015」の見どころについて教えてください。
キーノートセッション(基調講演)
たかのり氏:「まず、大きな見どころとしては「キーノートセッション」です。海外と国内から1名ずつゲストをお呼びして講演していただくのですが、初日は海外からリン・ルート(Lynn Root)さんという女性スピーカーが来日されます。
また、2日目はビープラウドの佐藤治夫さんが登壇します。佐藤さんは技術者でもあり経営者でもあるので、普通の技術者の方とは違った視点のお話が聴けると思います」
トークセッション(30分・45分)
たかのり氏:「スピーカーが講演する「トークセッション」では、海外から多くのプロポーザル(発表の応募)が来ていますし、国内からも色々なジャンルのプロポーザルが来ているので、素晴らしいものになると思っています。2013年にPyCon APACを開催したこともあり、海外から黙っていても『誰だよ!』みたいな人がプロポーザルを出してくれています(笑)。
この間参加した台湾のPyCon APACでも、知らないバングラデシュの人からいきなり『PyCon JPにプロポーザル送っているから!』と言われました。海外から自分で『PyCon JPに行きたい』と思って積極的に動いてくれるのは、すごくありがたいですね」
関根氏:「あと、面白いかなと思うのは「オフィスアワー」といって、スピーカーの方と話せる場を用意する予定です。去年もやったのですが、『スピーカーがこの時間この場所にいます』と案内し、参加者は自由に質問や情報交換をしてくださいというものです」
ポスターセッション(ブース形式)
関根氏:「去年から新しく始まった「ポスターセッション」は、発表者がブース内で自由に展示物などを用意して、参加者はその発表を見たり、聞いたり、説明を受けて体験したりできるセッションです」
たかのり氏:「何をするのかもまったく自由で、話をしても良いし、何かをやっても良い。去年は普通に展示しているものがほとんどでしたが、『PyLadies Tokyo(Pythonが好きな女性を結ぶ国際的なコミュニティ)を立ち上げるよ!』という展示がありました。あくまでも『立ち上げるよ!』という宣言です(笑)。
ブースに来た女性参加者にアピールする目的だったと思うのですが、そんな内容でも良いなと思いましたね。PyCon JPがコミュニティ立ち上げのきっかけになるという」
―― 女性参加者のお話がありましたが、女性プログラマーはイベントに行ってもあまりコミュニケーションする人がいないという悩みがあると聞きます。女性の立場から見ていかがですか。
今津氏:「私の感覚では、PyCon JPは結構女性多いです。PyCon JPでは女性の比率がすごく高いというわけではないですが、懇親会で喋ったりされている女性は多いなという印象ですね。あと2013年のAPACのときには普通にスピーカーで女性の方がいて、あまり日本人の女性スピーカーは見ないので、結構珍しいなと思って」
たかのり氏:「スピーカーに女性は増えてほしいですよね。スピーカーに女性が増えると、自然とそれを『聞きに行こう!』という女性も増えるんじゃないかなと思います」
今津氏:「気にはなると思いますよ、絶対に。あとは、女性スピーカーを見て『ああなりたい!』と思ってくれると良いですね。モデルがいると、女性もそれなりに参加しやすくなると思いますので」
新しい試み「子ども向けワークショップ」
―― 今回、新しい試みとして子ども向けのワークショップがあるとお聞きしましたが。
関根氏:「これは、今年のテーマが「Possibilities of Python」ですので、子どもたちにプログラミングなどを通じてPythonを体験してもらえる機会を提供できたら良いな、というのが前提にありますね」
たかのり氏:「子ども向けワークショップでは、カンファレンスに出席するかどうかは自由ですが、カンファレンスには海外からも色々な人が参加するので、その雰囲気も味わえるのではないかと。子どもたちにとって、そういうことが一番大きいですよね」
チュートリアル
たかのり氏:「イベントとしては、「Lightning Talks」と「チュートリアル」があります。チュートリアルは昨年まで3コマで講師を依頼していましたが、今年は講師を公募して6コマ開催します」
関根氏:「チュートリアルは講義+ハンズオン形式の有料ワークショップです。機械学習などデータ系のセッションを中心にWeb系、Python初級、Sphinx入門といった色々なジャンルから応募が来ています。まだ内容は決定していませんが、どのようになるか楽しみですね」
参加者へのメッセージ
―― 最後に、これから参加しようと思っている人たちに向けて、主催側からメッセージをお願いします。
たかのり氏:「自分から努力して前のめりに参加すると絶対に楽しいと思うので、ぜひそうしてほしいです。受け身でいると、多分そんなには楽しくないかなと(笑)。
例えば、ランチの時間も長めに取っているので、食べて終わりじゃなく企業ブースを見て回ったり、会場内でセッションのスピーカーを見つけたら積極的に話しかけたりしないと、すごくもったいないと思います。トークセッションだけじゃなく、色々なイベントもやっているので、ただ参加するだけでなく、自分から進んで体験してほしいなというのはありますね」
関根氏:「私は『一歩踏み出すと良いのかも知れない』と思いますね。いつもはここで止まっていたけど、PyConに参加した時だけでもちょっと踏み出してみよう、と。色々な可能性を持った人がいて、きっと何か道が開けると思うので、そこを少し頑張ってほしいです」
たかのり氏:「そうですね。例えば、勇気を出して外国人に何か英語で話しかけて伝わらないと落ち込むけど、すごく一生懸命聞いてくれようとするし、近くにいる英語の分かる人が伝えるのを手助けしてくれたりすることもあるし、そこは恐れずにトライした方が良いですよね」
関根氏:「自分もそうなのですが、やる前から失敗を恐れて、何もしないことあるんですよね。失敗した自分を想像してやめてしまう。せっかくの機会なのにもったいないですよね。だったら、『こうした方が良いかな』と色々とチャレンジしてみて、うまくいったものを次回もまたやろう!というのが、すごく良いと思います」
今津氏:「カンファレンス1日目の懇親会、「パーティ」と呼んでいますが、PyCon JP 2015ではパーティの会費もチケット代に含まれているので、ぜひ参加して色々な人と話してほしいです。PyCon JPのスタッフは当日、スタッフのTシャツを着ているので、『あの人と話したいけどどうすればいい?』とか『あの人紹介してくれない?』とか『こういう事やっている人と知り合いたいけど、誰か知り合いはいない?』みたいなことがあれば、どんどん言ってほしいです。
いきなり他の参加者に話しかけるのはちょっと怖いな、という人でも『スタッフだからなんでも聞いていいぞ』と。ぜひ、スタッフをはじめ、色々な人に話しかけてほしいと思います」
今回のインタビューを通じて印象的だったのは、たかのり氏の「自分から楽しむ努力をしなければ決して楽しめない」という言葉だった。また関根氏の「一歩踏み出すと良いかも知れない」という言葉も、今津氏の「色々な人に話しかけてほしい」という言葉も、言い換えれば「自分から楽しむ努力をすること」を示すものだろう。
また、毎回新たな試みを行っていることも注目すべき点だ。参加者に楽しむ努力をさせるだけでなく、主催側も楽しめるための努力をする。特に今回初の試みとなる「子ども向けワークショップ」は、まだその内容は明らかになっていないが、非常に興味深い。少なくとも、これまでのIT技術イベントにはなかったコンテンツと言えるだろう。また、2年目となる「ポスターセッション」も、今年はどのような展示が飛び出すのか楽しみなところである。
現在、PyCon JP 2015ではポスターセッションの発表者を募集中だ(8/31まで)。また、9/1からはLightning Talksの講演者募集も開始される。面白い展示やアイデアがある、聴いてほしい・分かち合いたい想いがある、色々な人たちとコミュニケーション取りたいなどと考えている人は、ぜひ思いきって参加してほしい。
なお、キーノート、トークセッション、チュートリアルの詳細な内容については、随時更新される「PyCon JP 2015」公式サイトを参照してほしい。
「PyCon JP 2015」公式サイト
https://pycon.jp/2015/ja/
「一般社団法人PyCon JP」Webサイト
https://www.pycon.jp/#
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