連載 :
  インタビュー

ミドクラ、富士通との全世界規模の戦略的OEMパートナーシップを締結

2015年8月4日(火)
松下 康之 - Yasuyuki Matsushita

2015年7月29日、ネットワークの仮想化プラットフォームを提供するミドクラ(日本法人:ミドクラジャパン株式会社、共同創業者兼会長:加藤隆哉、以下、ミドクラ)はミドクラが開発したネットワーク仮想化ソリューション、ミドクラ・エンタープライズ・ミドネット(MEM)を富士通株式会社を通じて世界に販売するための戦略的なOEMパートナーシップを締結した。

これは2014年5月のOpenStackにおける富士通との提携と同年10月に発表された業務提携に続く3つ目の「富士通~ミドクラの業務提携」と言えるものだが、注目すべきは単にリセラーとしてミドクラの製品を売るだけではなく、サポートを含めて富士通が全世界に向けてMEMを販売することだろう。

2015年7月29日:ミドクラ、富士通と戦略的OEMパートナーシップ締結を発表
http://www.midokura.jp/press-releases/fujitsu-midokura-07-29-2015/

2014年5月の提携:ミドクラ、OpenStackで富士通と提携
http://www.midokura.jp/press-releases/fujitsu-midokura-05-21-2014/

2014年10月の提携:富士通とミドクラ、グローバルでのクラウド事業の共同展開を視野に業務提携を強化
http://www.midokura.jp/press-releases/1731/

今回の提携に関してミドクラ側の推進役である事業開発担当の小柳正和氏(コーポレートデベロップメント、バイスプレジデント)にインタビューを行った。

コーポレートデベロップメント バイスプレジデント 小柳正和氏

コーポレートデベロップメント バイスプレジデント 小柳正和氏

———今回の提携は単にOEMで製品を流すということではなく富士通が販売とサポートも行うという部分に要点があると思っても良いでしょうか?

そうですね。去年の5月に富士通のOpenStackソリューションに関して富士通のプライベートクラウドソフトウェア、ServerView Resource Orchestratorとの連携を発表しましたが、実際にはそれ以前から製品担当の事業部のエンジニアなど多くの方にMEMを評価して頂いています。つまり1年以上前からMEMの評価、検証などを行って来て頂いてまして、今回それがOEMというカタチになったということです。特に全世界を対象に販売だけではなくサポートもやって頂くことになりましたので、ミドクラとしてもトレーニングをさせて頂いたり、協力関係は出来上がっています。今後、富士通のソリューションとの連携も出て来るのではと期待しています。

———今回の提携にコメントをしている富士通の方が日本と富士通ヨーロッパの方になっていますが、これはICT市場として最大の北米地域も含まれるのでしょうか?

はい、今回の提携は日本、北米、ヨーロッパ更にその他の地域を入れてワールドワイドで展開して頂くことになっています。

———OpenStackのネットワーク機能が注目されているとは思うのですが、特に北米ではVMwareのハイパーバイザとNSXの組み合わせとKVMとMidoNetの組み合わせで評価されることが多いと以前、創業者の加藤さんから伺ったことがあります。それについてはいかがですか?

OpenStackについては以前はNSXとの競合案件がほとんどだったのですが、最近は他のパターンも増えています。オープンソースソフトウェアという側面ではJuniperのOpenContrailやPLUMgrid、Nuage Networksなどと競合することがあります。今回の富士通との提携でより多くのお客様から機能や信頼性については評価を頂けるのではと思っています。

———2014年の11月にミドネットがオープンソースソフトウェアとして公開されました。オープンソースソフトウェアとしてコミュニティがリードするMidoNetと有償でミドクラが提供するMEMは何が違うのですか?

MEMには運用のためのツールが追加されています。それにサポートが提供される部分が大きな違いです。ただ、機能の開発はコミュニティベースのMidoNetで行って徹底的な検証やバグフィックスなどをMEMに対して行うことで信頼性を担保するようにしています。この部分の進め方に対しては社内でもまだいろいろと議論を行っている段階です。今後、変わる可能性があるかもしれません。

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今回の提携はベンチャー企業であるミドクラが著名なSI企業である富士通から最終的に信頼を勝ち得たという一つの証なのだろう。ベンチャーの時計で言えば一年はとてつもなく長い時間、大企業の常識で言えば、たった一年で業務提携からOEM契約までこぎつけたのは両社のプライベートクラウドソリューションに賭けた熱い思いだったのかもしれない。MidoNetとMEMの関係やコミュニティへのかかわりなど、ミドクラの今後に注目したい。

著者
松下 康之 - Yasuyuki Matsushita
フリーランスライター&マーケティングスペシャリスト。DEC、マイクロソフト、アドビ、レノボなどでのマーケティング、ビジネス誌の編集委員などを経てICT関連のトピックを追うライターに。オープンソースとセキュリティが最近の興味の中心。

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