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アップルの広告における焦土作戦で、グーグルが無力に?

2015年8月17日(月)
ReadWrite Japan

アップルは広告事業を行っている。だが、それを何としてでも守らねばならないわけではない。とりわけ、グーグルに対抗する手段が得られる場合には。

問題となっている手段というのは、iOS 9に搭載されたアップルの新たなコンテンツ・ブロック用ソフトウェアだ。新しいモバイルOSにより、アップルのカスタマー・エクスペリエンスが大いに改善されるのは確実だ。それにより同時に、広告収入が頼みの企業に大打撃を与えることになる。

そう、グーグルにだ。

アップルはグーグルを倒すことよりも、カスタマー・エクスペリエンスの改善に集中的に取り組んできたことはほぼ間違いないが、グーグルに対し、「このことが非常に大きな影響をもたらす可能性がある」とチャールズ・アーサーは推論している。

確かにそうだ。

アップルはユーザーを丁重に扱う

アップルと広告とは、少々好悪の入り交じった関係である。スティーブ・ジョブズが「こういったモバイル広告のほとんどが最悪なものだ」と不満を述べたように、初めは純粋に憎しみを抱いていた。

その後、アップルはQuattro Wirelessを買収し、「ユーザーの注目を集め、よい結果につながるような様々な広告を生み出すため」の手段としてiAdを導入した。

例外はそれだけだった。少なくとも、アップルはそれ以上を望んでいなかった。iAdはかなり遅れてグーグルのモバイル事業を後追いしたものだった。

アップルが多くの国々よりも多額の資産を手にしている現状では、CEOのティム・クックは枕を高くして眠れるだろう。しかし、悩みの種もある。プライバシーと、徐々に力をつけてきたモバイル広告のコミュニティが、ユーザーに対してカスタマー・エクスペリエンスを強要している問題だ。

アップルの広告事業に対して悪影響となる可能性があるにもかかわらず、クックは攻勢に出た。オンラインの声明では「アップルでは、優れたカスタマー・エクスペリエンスとは、皆様のプライバシーを犠牲にして得られるべきではないと考えます」と述べている。

広告も同様だ。広告はモバイルのウェブページを無駄に増やし、パフォーマンスを損ない、バッテリーを低下させる。これを改めるため、デスクトップ向けにはAdblock Plusのようなサービスが出てきており、アップルもスマートフォンで不要なコンテンツをブロックする仕組みを開発者に提供している。

誤解のないように言っておくと、アップルは広告ブロック用のソフトウェアをリリースしようとしているわけではない。ポール・ハドソンが述べているように、同社のアプローチはそれとは異なるものだ。

広告ブロッカーのパフォーマンス・コストは非常に大きいため、モバイルでは動作が遅く、難しいものになります。それに加え、広告ブロッカーの特質として、訪れるウェブページでどんな操作を行うか、その拡張機能が全て認識しなければなりません。それを考えるのは非常に煩雑です。そのため、アップルはあるソリューションを導入しました。それが、Safariの拡張機能としてコンテンツ・ブロックに対応するという方法です。これは、全く新しいモデルを利用して、ユーザーが訪問できるウェブサイトや表示できるコンテンツをプログラムで決定するという仕組みです。この結果、パフォーマンスが飛躍的に向上し、何よりも、ユーザーのプライバシーが徹底して守られることとなりました。

アップルが広告ブロッカーに進出したというわけではないが、これはいわば、その新たな一種といえそうだ。そして、モバイル広告に多大な影響を及ぼすであろうことは間違いない。

グーグルに背水の陣を敷く

それは特にグーグルにとって都合の悪いことだ。無料のサービスを提供する代わりにユーザーのデータを収集し、より有効なターゲット広告を打っている企業にとっても同様である。

アーサーは以下のような影響が考えられるとして、詳細に考察を行っている。

考えてみましょう。iOS 9が発表され、多くのiOSユーザーは鬱陶しい広告をブロックできることを非常に喜んでいます…一方、Androidユーザーは(決して同じようには)措置を講じられません。少なくとも、結果は次のどちらかです。

・iPhoneへの移行を検討するAndroidユーザーが出てくる
・グーグルはAndroid 離れを防ぐため、Google Playストアで広告ブロッカーの販売を許可するようプレッシャーをかけられる

これらはどちらもグーグルにとって好ましくありません。

だが、これはユーザー、そしてアップルにとっては、ほぼ間違いなく、非常に喜ばしいことである。

一方で、アップルのiAdは同様のコンテンツ・ブロッカーの制約を受けることはない。iAdはOSレベルで運用されており、それを回避できるからである。

けれども、アップルは何十億台も売れているデバイスを生み出すにあたって、わずかな広告収入にはさほど関心がない。おまけに、アップル製品では、余分な広告のない優れたカスタマー・エクスペリエンスが得られるとユーザーに思わせることができれば、販売台数がさらに増えるのは間違いないだろう。

このような状況が、突如としてグーグルを無力化することになりうるだろうか?もちろんそんなことはないだろう。だが、アップルはモバイルにおいて課題追求を進めている。そして、その手段はグーグルに深手を負わせる可能性があるのだ。

画像提供:Nestor Galina

Matt Asay
[原文]

※本記事はReadWrite Japanからの転載です。転載元はこちらをご覧ください。

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