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ティム・クックのアップルの戦略:「人生は短く、持つべきものは友」

2015年10月22日(木)
ReadWrite Japan

(写真:アップルの CEOティム・クックはBoxWorksでBox のCEOアーロン・レビと抱擁を交わした)

スティーブ・ジョブズ時代、アップルのCEOは、自社で慎重に段取りをした製品発表の場以外にはほとんど現れなかった。しかし、ティム・クックは、先月サンフランシスコで行われたオンラインストレージ企業Boxの年次会議、BoxWorksにおいて、CEOのアーロン・レビの隣で声明を発表した。

その声明の内容は、アップルがBox、IBM、そしてCiscoのようなパートナーを通した企業顧客との提携を望んでいる、というものだった。クックは、IBMとCiscoの名前を何度も挙げた。

レビとクックはマイクロソフトを称賛し、アップルとBoxはマイクロソフトと「スパーリング」をしてきた時代もあるが、今後は良いパートナーになるだろうと述べた。Microsoft Officeは現在、アップルの端末でも、Boxのストレージおよびコラボレーション・サービスでも問題なく動作する。

「アップルとマイクロソフトは競合するのではなく、多くの点で提携できます」とはクックは言う。「私は恨みを持ち続けるような人間ではありません。人生は一度。そして一生は短いのですから、友人となる方がいい」

ビジネスに利益をもたらす友人

アップルがBoxと提携したのは大きな衝撃であり、昨年クックがIBMと突然の提携を行った例に続くものだ。アップルは、医療、小売、教育など、特定の産業を対象とするアプリを開発する企業で、専門家の手助けをするべく開発者関連のスタッフを提供している。その代わり、これらの企業の顧客がiPhoneやMac、iPadを購入するというわけだ (特にiPad Proが、このようなパートナーシップによって売上を伸ばすであろうということは想像がつく)。

「われわれはアプリケーションの製作を行っている企業と開発面で提携を行います」とクックは述べた。「弊社、あるいはIBMやCiscoがその必要性を認識するよりも先に、Boxにとって提携が必要となることが多いでしょう」。

ハードウェアの販売だけでなく、このようなビジネス向けアプリの開発者から注目され、提携の機会が増えることにより、アップルは利益を得るだろう。例えばBoxは、最初はiOSのみで利用できる新しいアプリを紹介している。

クックは、消費者向けアプリのメーカーに宛てたのと同様のメッセージを配信した。すなわち、グーグルのモバイルOS 、Androidを実行する端末の数は多いかもしれないが、アップル端末の市場はまとまりがあって分かりやすく、アプリを開発するのがより容易だということだ。

レビとクックが壇上に立ったのとほぼ時を同じくして、グーグルのCEOサンダー・ピチャイは、最近のイベントで、Androidのユーザーが14億人を超えたと発表した。

「開発者にとって、エコシステムが断片化してしまうのは望ましくなく、開発が容易になるようなツールや、業界の主要なプレーヤーと共に開発に取り組めるような人物が望まれています」とクックは述べた。グーグルの名前にこそ言及しなかったが、クックはOSがバージョン間で断片化していることについて、過去に何度もアンドロイドを批判している。グーグルが必ずしも最も提携しやすい企業であるというわけではないということを指摘する、もっともな「ジャブ」を繰り出したのである。

とはいえ、アップルには独力で開発を行ってきた長い歴史があるが、印象的なパートナーシップは計画倒れになっている。だからこそ、クックはできるだけ頻繁にパートナー企業と話し合う必要がある。そうする以外に方法はなく、パートナーのイベントで彼の人気ぶりを見せるのはその後だ。

トップ画像提供:Owen Thomas for ReadWrite

Owen Thomas
[原文]

※本記事はReadWrite Japanからの転載です。転載元はこちらをご覧ください。

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