アップル、グーグル、サムスンがウェアラブルでユーザーを囲い込もうとする理由とは
ゲスト著者、クリスティアン・カントレルは開発者、ブログライター、そしてSF作家だ。
あなたは結構な確率でiOSユーザーかAndroidユーザーかだろう。また結構な確率でどちらを使っていようが、買い替えの際にもそれを継続して使うことだろう。モバイルデバイスというものはある意味支持する政党やアイスの好み、どのジェイムス・ボンドがお気に入りかなどの様なところがあり、それぞれの人が自分の好みを持ち、アイデンティティの一部となり、そしてそれを頑なに守るものだ。
しかし時折、『ゲーム・オブ・スローンズ』の好みのキャラクターの様に思わぬタイミングでこれまでとは違う側に付くこともある。
理由はスクリーンサイズのバランスが気に食わなかったり、周りが違うプラットフォームを使ってることからのプレッシャーだったり、悪知恵が回るセールスマンが在庫処分することからインセンティブを得ようとしているからといった事からかもしれない。
ともあれ、スマートフォン業界の動きをつぶさに観察すると、多くの消費者はこれまでどうり同じプラットフォームに残っているものの、この流れは変わる兆しを見せている。
プラットフォームの移行が起こるに当たって3つの要素がある。まず新しく出てきたものの物理的形態に馴染み、またそのユーザーエクスペリエンスに慣れ、そしてデータ移行のリスクを乗り切れる、あるいは他人任せにする事が出来る様になることだ(他人任せに出来るといっても、たいていは都合のいいことばかり言うただのセールストークに過ぎなかったりするが)。
あるプラットフォームから別のプラットフォームに移ることは不便を伴うかもしれないが、不可能なことではない。メジャーなプラットフォームが自分たちの魅力を増す為だけでなく、客が別のところに移る障壁を高めるためにも工夫を凝らすのはこのためだ。そしてこれら障壁となるものの新たな候補として出てきた重要なものがウェアラブルになる。
どの様にしてウェアラブルでユーザーの囲い込みを行うのか
一般的にいうと、ウェアラブルには2種類ある。プラットフォームに依存するかしないかだ。依存するウェアラブルとはiOSであろうがAndroidであろうが(Windows Phoneであろうが)使えるデバイスの事だ。これらにはFitbitなどの主なフィットネストラッカーや、Pebble Time、Garmin Fenix3といったスマートウォッチが含まれる。
これらの主な利点は手持ちのどんなデバイスともペアリングできる点にあり、機能的に十分、あるいはまぁまぁ納得いくレベルにある。
プラットフォーム依存のウェアラブルとは特定のブランドのデバイスでのみ使えるものであり、事実、単独のものというよりは特定のデバイスの延長線上に位置づけられている。分かりやすい例がApple Watch、Android Wearデバイス、そしてサムスンを皮切りに出てきた多くのリストデバイス群だ。
プラットフォーム依存デバイスの利点は、APIやサードパーティデバイスがアクセスできないサービスを活用するために、携帯のOSとより緊密に結びついており、たいていの場合、よりシームレスかつ統一的なユーザーエクスペリエンスを提供できる点だ。しかし欠点は特定のプラットフォームにばかりお金を使うことになり、次のアップグレードの際に買う価値があると思った選択肢に乗り換える機会を制限される事だ。
もしグーグルがAndroid WearでのiOSサポートに向けて動いているという噂が本当なら、第3のカテゴリー:プラットフォーム推奨ウェアラブルが現れるということになる。プラットフォーム推奨デバイスは特定のプラットフォームに”ネイティブ”対応しているが、他のプラットフォームでもある程度は動くというものになると考えられる。
Android WearスマートウォッチとiPhoneのペアリングについての問題は、OSとの統合性に置ける限界、あるいは根本的に埋められないプラットフォーム間の溝があるおかげで、Android Phoneと連動して使っている場合、あるいはiOSとApple Watchの組み合わせで使っている場合と比べてユーザーエクスペリエンスが残念なものになるかもしれない点だ。Androidデバイス抜きでグーグルのサービスを使おうとしている多くのiPhoneユーザーは、既にこういった問題に直面している。
例えばMoto360(Androidデバイスからもだろう)からはApple Payは使えないし、開錠機能も使えない。結果、ウェアラブルにお金をつぎ込めばつぎ込むほど、より互いの連動を重視するよう自分のデバイスを選ぶ事になるかもしれないという事だ。
他のプラットフォームに浮気するつもりがない人にとって、一つのベンダに偏ることは何の問題でもない。互換性や買い替え商品の選択、ユーザーサポートなどの問題を大きく簡素化できるという意味では、これはありがたい事だ。
しかし選択肢を常にオープンにしておきたい人々にとってはどうだろう? 最も有望な候補がよそのプラットフォームから顧客を奪うために挑戦しつづけることを喜ぶ人たちにとってはどうだろう?ウェアラブルの台頭は互換性について難題を突きつけるものだ。
グーグルの主な収入源はサービスであり、より多くのプラットフォームでサービスの提供を望んでいることは理解できる。しかしアップルのように未だハードウェアのマージンで大きな収益をあげている企業はどうだろうか? デバイスとプラットフォームの統合は顧客の利便性のためだけではない。これはビジネスの根幹だ。
Apple Watchが市場シェアに必死にならない理由
Apple WatchとiPhoneが表裏一体の関係にあるのは、アップルにとって間違いであるかのように思える。スマートウォッチの様な新しいカテゴリーに巨額の投資をしたにもかかわらず、市場の狙える範囲の中で比較的狭い層にだけアピールするようなものをわざわざ作った理由はいったい何なのか? 更に言うと、iPhoneは世界のスマートフォン市場の18%を占めているにすぎず、Apple Watchを持っているのは更にその一部だろう。
逆にもしApple Watchがあらゆるスマートフォンと互換性があり、さらにiPhoneとペアリングすることで追加の機能が提供できるとしたら、この商品が狙える市場の範囲は一気に広がることだろう。
ありえる結論としては四半期あたりに何百万台かを売り上げるより、プラットフォームの保持・拡大を採ったということかもしれない。一般的な企業にとって利益は一定かつ予測可能で、安定したもので無ければならない。この事は企業にとって出来るだけユーザーが従順(あるいは囲い込み状態)で無ければならないことを意味する。
企業はビジネスおよびマーケティングを顧客と製品をパイプラインするよう構築する必要がある。顧客に衝動買いをさせないためにサービスを購読させ、他の選択肢に目を向けさせないために囲い込みの壁を作り上げる必要がある。
顧客を保持し続けるために(少なくとも合法的な範囲で)何もさせないというのはもちろん適切な事ではない。これら多くの企業は互いに競争しているというよりは、それぞれが別のルールの中で活動しているようなものであり、この事は弊害を招くことにもなる。
道のりは険しい
ウェアラブルがより使いやすく一般的なものになるにつれ、この逆説が多くの人々にとってより具体的なものになるということを言っておく価値はあると思う。これらのデバイスは情報や人とのやり取りをよりやりやすくするものであり、PCや携帯その他の若干不便なデバイスから我々を解放するものだ。
そしてその代償として、我々は囲い込まれる事を受け入れようとしている。スマートウォッチの様なものを買うなという意味ではない。私たちがデバイスを身につけている以上、自分たちもデバイスに縛られているという事を十分理解するべきだということが言いたいのだ。
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※本記事はReadWrite Japanからの転載です。転載元はこちらをご覧ください。
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