大幅に強化されたHyper-V 2.0のパフォーマンス
強化されたネットワークと使い分けのポイント
CPU、ディスクと並び、サービスのパフォーマンスに及ぼす影響が大きいのがネットワークです。Virtual PCやVirtual Serverでは特定のネットワークカードをエミュレートするデバイスが提供されていましたが、Hyper-Vではネットワークが全面的に見直され、独自の高速な仮想ネットワークカードと仮想スイッチが提供されています。
統合コンポーネントによりドライバが提供されているOSでは、上記の高速な仮想ネットワークが利用できます。非対応のOSやインストール環境では、従来のエミュレートデバイスがレガシー ネットワーク アダプターとして利用可能です。
Hyper-V 2.0での強化点は、10GbEへの対応と、ジャンボフレームのサポート、TCP オフロードやVMQのサポートが挙げられます。いずれの機能も仮想マシン内で利用できます。
10GbEは、現在広く使われているギガビットネットワークの10倍高速な10Gbpsのネットワークです。NAS上に置かれたVHDをiSCSI経由でマウントして使用するような場合、高速なネットワークのサポートはパフォーマンスだけでなく信頼性の向上にもつながります。同様に最大9014バイトのジャンボフレームが利用できます。
TCP/IPの通信は本体データ以外に制御のためのデータが付加されているため、一度に多くのデータを送信することでオーバーヘッドを減らすことができ、パフォーマンスが向上します。ただし通信エラーが発生した場合、再送するサイズも大きくなるため、十分に高速で安定したネットワークでないと、かえってパフォーマンスが下がってしまうこともあります。
また、仮想マシンでのTCPオフロード(TCP Chimney)やVMQ(Virtual Machine Queue)のサポートにより、通信の処理をネットワークカードに肩代わりさせることができます。通信のパフォーマンス向上とともにCPUの負荷の軽減が期待できます。それぞれの機能を有効にするためには、対応したネットワークカードが必要です。
実運用の環境では、ネットワークの強化を生かすとともに、複数のネットワークカードを使い分けることをおすすめします。
1つは管理専用のネットワークとし、管理OSのみにアクセスできるようにします。インターネットから管理OSに直接アクセスできないようにし、また仮想マシンへの通信とは共用しません。
2つめ以降は仮想マシンの数や通信量に応じて適切な枚数のネットワークカードをサービス用に割り当てます。このネットワークを通じてのみインターネットと通信します。iSCSIを利用している場合は、専用のネットワークカードを用意しましょう。
電源管理で追加されたコアパーキング機能
Hyper-V 2.0を含むWindows Server 2008 R2では、電源管理が機能強化され、柔軟な設定によりさらに効率の良い運用ができるようになりました。Hyper-Vの観点ではコアパーキング機能の追加が挙げられます。
コアパーキングとは、複数のコアがある場合すべてのコアにまんべんなく処理を分散させるのではなく、負荷の低い時にはいくつかのコアに処理を集約し、その他のコアは休ませる(パーキング)という機能です。休んでいるコアの消費電力を節約することで、より効率の良い電源管理が可能です。
コアパーキングは管理OSおよびハイパーバイザーの機能であり、0.1秒単位でコアパーキングできるかどうかを判断します。細かい単位でコアを休ませることにより、効率の良い電源管理を実現しています。仮想マシン側ではコアパーキングについて特別な対応をする必要はありません。Hyper-Vによりサーバーを集約して台数を減らし、さらにコアパーキングにより無駄な消費電力の少ないシステム運用が期待できます。
次回はLive Migrationについて解説します。