最新版PostgreSQLバージョン8.4の機能
ユーザー定義関数に関連した拡張
バージョン8.4では、ユーザー定義作成に関連して、さまざまな拡張が行われています。
例えば、可変引数の関数を作れるようになりました。以下のように記述すると、引数としてTEXTの次の2番目以降に、複数個の整数型の引数(VARIADIC INTEGER[])を受け取ることができます。ただし可変引数で受け取るデータ型は1種類に限定されます。
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CREATE FUNCTION my_sprintf (TEXT, VARIADIC INTEGER[])
RETURNS TEXT LANGUAGE plpgsql
AS $$ …関数定義本体… $$;
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また、関数の引数にデフォルト値を設定できるようになりました。以下のように書くと、my_funcを引数無しでも、引数1個でも、どちらでも呼び出せます。引数を指定しなかった場合は、整数型の入力値として、デフォルト値の1が入ります。一般的なプログラミング言語ではたいてい備えている機能ですので、SQLの関数を書く場合にもおのずと欲しくなる機能でした。
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CREATE FUNCTION my_func (INTEGER DEFAULT 1)
RETURNS TEXT LANGUAGE plpgsql
AS $$ …関数定義本体… $$;
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関数の返し値として、複数カラム、複数行を返すことは、以前からできましたが、バージョン8.4からは、その記法が簡単になりました。以前は「RETURNS tablename」と、返し値用のテーブル(または複合データ型)をあらかじめ作っておいて、そのテーブル名を指定する必要がありました。バージョン8.4になり、CREATE FUNCTION文の中に、返し値用のテーブル定義を記述できるようになりました。
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CREATE FUNCTION my_tbl_f ()
RETURNS TABLE (c1 INTEGER, c2 DATE) LANGUAGE plpgsql
AS $$ …関数定義本体… $$;
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上記の例では、便宜的に言語名を「plpgsql」としていますが、どの言語で記述する場合であっても、共通の拡張となります。
なお、PL/pgSQL言語自体も、バージョン8.4ではエラー出力機能の強化やEXECUTE USING句の対応、カーソルによるループ記述、CASE構文など多数の機能が追加されています。PL/pgSQL言語は他のデータベース製品の手続き型言語に似ていますが、今回の機能追加によって、他のデータベースからPostgreSQLへの移植作業が,よりやりやすくなることが期待できます。
アクセス権限管理の拡張
バージョン8.4では、テーブルのアクセス制限が、テーブル全体だけでなくカラム(列)単位で指定できるようになりました。あるテーブルの特定カラムだけは指定ユーザー以外は参照できない、更新できない、といった指定ができます。以下は、最初に管理者ユーザーで権限を設定した後で、一般ユーザーで参照を試みている例です。
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sample=# CREATE TABLE c123 (c1 TEXT, c2 TEXT, c3 TEXT);
CREATE TABLE
sample=# GRANT SELECT (c1, c2) ON c123 TO foo;
GRANT
sample=> SELECT c1, c2, c3 FROM c123;
ERROR: permission denied for relation c123
sample=> SELECT c1, c2 FROM c123;
c1 | c2
----+----
(0 行)
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このほかの目立った強化点は、以下の通りです。
■日本語メッセージ
PostgreSQLは以前から多言語に対応していて、コンパイル時にメッセージ定義ファイル(日本PostgreSQLユーザー会が作成・配布している)を適用すれば、日本語のメッセージを出すことができました。バージョン8.4からは、このファイルが同梱(どうこん)されるようになりました。ビルド時の指定により、実行環境のロケール指定に応じて、日本語メッセージを出力できるようになります。
■PgAdmin III
厳密にはPostgreSQL自体の強化ではありませんが、PgAdmin IIIという管理GUIツールの新版であるバージョン1.10が、PostgreSQL8.4に合わせてリリースされました。PostgreSQLのWindows版の配布パッケージには同梱(どうこん)されています。PgAdmin IIIは、GUI画面からPostgreSQLの一通りの操作を実行できるようにするものですが、バージョン1.10では、ドラッグ&ドロップによって開発できるようにクエリビルダー画面が拡張されるなど、機能強化が図られています(図3)。
■その他
PostgreSQLバージョン8.4では、データ型の自動的な変換機能を使う設定を、簡単に定義できるようになりました。これは地味ですが、バージョンアップして8.4を使いたい人には福音となっています。バージョン8.2から8.3への変更ではデータ型の指定が厳密になり、それまでのSQLが動かないというケースが続出しました。しかし、バージョン8.3でデータ型の自動的な変換機能を利用するには、C言語による関数の記述が必要となり、敷居が高いものでした。
このほか、細かな改善改修が多数、行われています。
PostgreSQLバージョン8.4におけるバージョンアップ内容の一覧は、PostgreSQLのオンラインマニュアル内にあるリリースノートの項目を参照いただくのが良いです。ただし、リリースノートのページにはあまり詳しくは書いていないので、その記述をもとにマニュアルの各機能の説明ページを探し、その内容を確認するのがよいでしょう。
■まとめ
今回は、PostgeSQLバージョン8.4の新機能について見てきました。次回は、レプリケーションツールなどを中心に、PostgreSQLの可用性、信頼性を向上させる方法を紹介します。