Webサービスの基本

2010年1月5日(火)
藤本 壱

独自の実装をとるWebサービス

Webサービスを作る上では、理想的には、SOAPやRESTに準拠することが望ましいです。しかしSOAPやRESTに準拠すると、システム的に複雑になったり、対応可能なクライアントが少なくなったりして、現実的ではなくなってしまう場合があります。

例えば、RESTに沿ってリソースを操作できるようにする場合、PUTやDELETEといったプロトコルに対応することが必要です。クライアント側のHTTPプロトコルのライブラリによっては、PUTやDELETEには対応していないこともあります。

そこで、SOAPやRESTの基本的な考え方を取り入れつつも、独自の実装をとっているWebサービスがあります。

例えば、ソーシャル・ブックマーク・サービスのDeliciousでは、ブックマークを操作するためのWebサービスを提供しています。

このWebサービスでは、GETプロトコル(GETメソッド)で以下のアドレスにアクセスすることで、ブックマークを追加できます。

また、GETプロトコル(GETメソッド)で以下のアドレスにアクセスすることで、ブックマークを削除できます。

URLを使って情報の位置を指定していることから、上記の手法は“REST的な雰囲気を持っている”とも考えられます。しかし、「情報の追加」や「情報の削除」をHTTPのメソッドで表さず、URLの中の「add」や「delete」で表しています。このことから、上記の手法は厳密なRESTではありません。

しかし、GETプロトコル(GETメソッド)で追加や削除の操作もできることから、DELETEプロトコル(DELETEメソッド)に対応していないクライアントであっても、DeliciousのWebサービスに対応させることができます。

Webサービスを組み合わせる「マッシュアップ」

現在では、世の中には多数のWebサービスがあります。個々のWebサービスを単体で使っても役に立ちますが、複数のWebサービスを組み合わせることで、より便利なアプリケーションを作ることができます。

例えば、「グルメマップ」というアプリケーションを作ることを考えてみましょう。この場合、以下のように、飲食店情報を提供するWebサービスと、地図を表示するWebサービスを組み合わせれば、目的のアプリケーションができます。

(1)飲食店情報を提供するWebサービスから、店の情報と、その店の緯度/経度を取得します。
(2)地図を提供するWebサービスに、(1)で得た緯度/経度の情報を渡し、その店の地図を取得します。

このように、複数のWebサービスを組み合わせて、1つのアプリケーションを作ることを、「マッシュアップ」(Mushup)と呼びます。

マッシュアップの例として、「ongmap.com」を紹介します(図3)。このサイトは、Google Mapを中心に、多数のWebサービスを組み合わせて、地図上にさまざまな情報を表示します。地図の中心点の付近で、以下のような情報を簡単に探すことができます。

  • 公衆無線LANのスポット
  • ホテルや旅館
  • 飲食店
  • その地域の写真

Webサービスの充実や、Ajax(Asynchronous JavaScript + XML)などの開発環境の進化にともなって、マッシュアップを取り入れたサービスはいろいろとリリースされています。

次回は、JavaScriptライブラリのjQueryを使って既存のWebサービスにアクセスしてみる例を紹介します。

【参考文献】

『RESTful Webサービス』(Leonard Richardson、Sam Ruby著、山本 陽平監修、株式会社クイープ翻訳)(オライリー・ジャパン発行、発行年:2007)

1969年生まれ。神戸大学工学部電子工学科卒。ソフトメーカー勤務後、フリーライターとして独立。現在では、パソコン関係およびマネー関係の書籍を中心に執筆活動を行っている。ブログ「The blog of H.Fujimoto」は、Movable TypeやWordPressの情報を中心に毎日更新している(http://www.h-fj.com/blog/)。

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