クラウドネイティブなシステムのためのラインアップを揃えるEMC―EMC Worldレポート

2016年6月2日(木)
松下 康之 - Yasuyuki Matsushita
EMC World2日目にクラウドネイティブなアプリケーションのためのスケールアウト製品群が紹介された。VMAXオールフラッシュ、OpenStackを実装したNUETRINO、Isilonのオールフラッシュモデル、Project Nitroなどがプレゼンテーションに登場した。

ラスベガスで開催されたEMC World 2016の2日目は初日がEMC CEOのジョー・トゥッチ氏とDELLのマイケル・デル氏の揃い踏みからトラディショナルなITとクラウドネイティブなIT、更にパフォーマンス重視かキャパシティ重視かによって4つのセグメントに分けたイントロとでも言える概略編だったのに比べて、2日目は主にクラウドネイティブなアプリケーションのための製品群が紹介された。

カフェを模したステージに登壇したのはProduct &MarketingのPresident、Jeremy BurtonとCore Technology DivisionのPresident、Guy Churchwardだ。

カフェを模したステージに登壇したJeremy BurtonとGuy Churchward

先ずは2016年2月に発表されたVMAXのオールフラッシュアレイ、さらにVNXの後継シリーズとなるUnity、スケールアウトストレージとしてはもう古参の域にあるIsilonの新プロジェクトNITRO、更にVxRACKに搭載されたEMC製のOpenStackアプライアンスであるVxRACK NEUTRINO Nodesと

盛りだくさんである。また新製品としてEnterprise Copy Data Management(eDCM)という新しい領域にも製品を発表し、クラウドネイティブにおいてポートフォリオを拡げようとしている意欲を感じる。

VMAXオールフラッシュは今年2月にロンドンで発表された製品で2つのモデルから構成される全く新しいVMAXという触れ込みだ。3D NANDフラッシュを使ったストレージアレイで最大4PBのキャパシティを持ち、4百万IOPSに99.9999%の可用性を持つという。先日日本でも同時に発表されたPCI接続されるNVMeメモリーを使ったDSSD D5はここでは特に触れられず、より市場が大きそうなVMAXオールフラッシュをステージに持ってきたという感じだ。VMAXオールフラッシュはスケールアップとスケールアウトの両方を行えるような構成になっており、V-Brickというコントローラとストレージのアレイに、アレイ部分だけを追加してキャパシティを増やすことができ、更に同じV-Brickコントローラを追加することでスケールアウトできる。

DSSD D5とVMAXオールフラッシュについては以下を参照。http://cloud.watch.impress.co.jp/img/clw/docs/746/451/html/emc10.jpg.html

次に紹介されたのは、ミドルレンジの新しいストレージ製品ラインとなるUnityだ。オールフラッシュ、ハイブリッド、それに加えてVMwareの仮想化基盤の上で実現される仮想アプライアンスの3つのタイプを持つ。SUSEのLinuxをベースとしたIntelサーバーで稼働させるソフトウェアデファインドストレージだが、オールフラッシュとHDDとのハイブリッドを製品として用意して、ミドルレンジの製品らしく容易な運用を可能にする新しいHTML5ベースのUIが追加されていることを強調していた。ユニットの外観すら写真の様な見せ方で管理がラクであることをみせつけた。とにかくシンプルであることが売りで旧製品のVNXに比べても大幅に改善されたという。またVMwareのVVOLとのシームレスなインテグレーションのデモを行い、今回のステージではあまり存在感の無いVMwareとの仲の良さを示したとも言えよう。最後にAR的にプレゼンテーションを行う二人のVPが実際にストレージの中に入り込んでシステムを説明するという飛び道具も使ってデモンストレーションを行った。

新しいミッドレンジストレージのUnityを紹介

続いて登場したのは新しいCopy Data Management製品だ。正式にはEnterprise Copy Data Management(eCDM)と呼ばれる。ある調査によれば企業の中には一つのデータセットにとって約10個のコピーが存在するそうだ。この場合、コピーとはバックアップや開発用のテスト用データも含まれる。災害対応の目的で遠隔地に置かれるものもコピーといえばその通りで、その管理をストレージの観点で行うもののようだ。実際にはEMCの社内では、コピーデータマネージメントのベンチャーであるActifioが仮想敵として告知されているようで、実際に新しいビジネスドメインを切り開こうとしているように見える。これが成功するかどうかは、開発部門でのデータ活用の部分に大きな市場を見出しているActifioの後を追うのか、あくまでバックアップのより新しい管理方法の一つなのか、これからのEMCの出方に注目したい。ちなみに出荷は2016年のQ3らしい。今回はスニークプレビューということだろう。

次に紹介されたのはハイパーコンバージドインフラストラクチャーのVxRailだ。Unityがソフトウェアデファインドストレージとハードウェアのコンビネーションだとすれば、こっちはコンピュートノードも含んだストレージと統合されたシステムだ。管理はUnityと同じようにシンプルで使いやすいことを目標としている。そこからより大きな構成を目指していくのであれば、VxRACKというマルチラックのハードウェアを持った製品ラインがある。ここでVMwareのCTOをステージに呼び込み、仮想化がクラウドには必要であると強調し、vRealize Suiteを紹介することによってここでもEMCとVMwareの仲の良さを示したと言えよう。

VMwareのCTOも登壇

ここで紹介したいのは、VxRACK NEUTRINO nodesと呼ばれる製品だ。これはEMCが構成したOpenStackをVxRACKに搭載したもので、OpenStackのリリースはKilo、つまりMitakaの2つ前のリリースとなる。土台となるストレージの部分にはScaleIOを使い、ハードウェアとしてVxRACKを使ったということだ。これはOpenStackが自社で構成をつくるのが難しいと感じる企業には朗報で、VxRACKは元々SclaleIOがベースとなるハイパーコンバージドインフラストラクチャーなのでその上にOpenStackを載せた形になる。そのため、価格が設定されており、$300Kからということをブースの説明員が教えてくれた。実際に日本での価格はこれからということだろう。アップグレードが難しいというOpenStackの問題点にも考慮して簡単にできるようにするという説明があったが、果たしてどれくらいのレベルのものになるのか、要注目だ。

最後にスケールアウトストレージとしては非常に多くの顧客を持っているIsilonだが、ここでようやくオールフラッシュのモデルが発表された。これはまだコードネームで呼ばれているもので、Project Nitroと呼ばれるものだ。オールフラッシュ元年を謳うEMCにとってはIsilonにも早くオールフラッシュを持ってきたかったと思われるが、実際のデリバリーは2017年の予定で今年中にベータ版が登場するという。

Project Nitroは2017年にリリース予定

今後増加すると思われるクラウドネイティブなシステムに向けた製品群ではやはりニュースが多く、ポートフォリオカンパニーであるEMCにとっても重要なショーケースとなった2日目のジェネラルセッションであった。

著者
松下 康之 - Yasuyuki Matsushita
フリーランスライター&マーケティングスペシャリスト。DEC、マイクロソフト、アドビ、レノボなどでのマーケティング、ビジネス誌の編集委員などを経てICT関連のトピックを追うライターに。オープンソースとセキュリティが最近の興味の中心。

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