DC全体からみた効率的なサーバー環境とは
「はやぶさ」は地球に帰って来て何を思ったか?
つい先ごろ、小惑星探査機「はやぶさ」が約7年の宇宙旅行を終えて地球に帰ってきました。「はやぶさ」が地球を飛び立った2003年と比べて、ハードウエアとしてのサーバーやサーバーを取り巻く環境、データセンター事情はどう変わったのでしょうか?
サーバーを取り巻く諸事情を振り返りながら、CTCが取り扱うsgi社製品の中でもRackableシリーズ(旧Rackable Systems社製品)を引き合いに、効率化の視線からクラウド世代を支えるデータセンターにとっての福音とは何かを全2回の連載で考えてみたいと思います。
サーバーハードウエアの変わらない面
サーバーハードウエアをフォームファクタ(形状)という視点で見た場合、この7年の間に大きな変化は無かったと言えるでしょう。現在主流となっている1~2Uサイズのx86ラックマウントサーバーは2000年前後には主要メーカーでラインアップされており、RISCサーバーであればやや大型ながらそれ以前(1990年代後半)からリリースされています。現在販売されているx86ラックマウントサーバーにはいくつかの共通点があります。
- 横幅19インチ(=48.26cm)、奥行き70~80cm
- エアフローは前面吸気、背面排気
- 前面に各種LED、電源ボタンを配置
- 背面にEther、シリアル、電源ケーブル等のコネクタを配置
またもう1つの主流をなすブレードサーバーも2003年までに一通り出そろっています。ブレードサーバーに共通の特徴についてもまとめておきましょう。
- 各ブレードサーバーは前面からエンクロージャに挿入
- 各ブレードサーバーはエンクロージャ内のバックプレーンを経由して、電源供給を受け、かつ背面にある各種I/Oポートに接続
- 従ってEther、シリアル、電源ケーブル等のコネクタはエンクロージャの背面に配置
- エンクロージャの横幅は19インチ
- エアフローはエンクロージャに対して前面吸気、背面排気
これら共通の特徴がラックマウントサーバー、ブレードサーバーのメリットをもたらす反面ある種の制限を課しているとも言えます。
指標(1):SWaP
かつてSunがUltra SPARC T1チップをリリースしたころに「SWaP(Space Watt and Performance)」という指標を提唱しました。 これはデータセンターでは単位面積、単位消費電力あたりのパフォーマンスを極大化するようなシステムを追求し、 そのようなサーバーを選択するべきではないか?という発想です。いわゆる「データセンターの3階層モデル」において、人海戦術的にサーバー台数でカバーするWebエッジ層で有効な指標です。
図1:データセンターの3階層モデル(クリックで拡大) |
x86ラックマウントサーバーやブレードサーバーは、端的にはフォームファクタの観点からSWaPの"S(Space)"を効率化することが期待されて利用されてきました。ブロードバンドインターネットの普及に伴い、データセンターの扱うデータ量、必要とされる処理能力が急激に増大する中で、Webエッジ層のスケールアウトに対して、データセンターの限られた床面積に効率的にサーバーを詰め込むために見いだされた結論の1つです。
フォームファクタとしてラックマウントサーバーやブレードサーバーを採用することにより、40Uラックに対して、1Uラックマウントサーバーであれば最大40台、ブレードサーバーであれば3~4エンクロージャ、サーバー台数にして60台を詰め込めるようになりました。ラックあたりサーバー台数の高密度化に対する1つの解答がラックマウントサーバーでありブレードサーバーでした。
翻って、「はやぶさ」が帰ってくるまでの7年の間、IT業界はフォームファクタの側面からラックマウントサーバーやブレードサーバーを上回る"S"の効率化を実現できなかったということかもしれません。
図2:典型的なラックマウントサーバーとブレードサーバー(クリックで拡大) |