雑談(会話)のネタがない時

2017年6月29日(木)
大倉 利晴(おおくら・としはる)三好 康之(みよし・やすゆき)

はじめに

三好です。今回は最終回ということなので、雑談のネタが無い時にどんな話をするのがいいのか?雑談ネタを咄嗟に考えないといけない時のヒントになるようなことを考えてみたいと思います。

“天気の話”や“時事の話”じゃありきたりだし、咄嗟に頭に思い浮かんだことを口にして、相手に引かれたり、嫌悪感を持たれるのもまずいし…。かなり難しいですよね。

これは、大倉さんと若手エンジニアと僕の3人で食事をしている時の話です。

話題:初めてのコント

そういや、俺にも○○君(若手エンジニア)みたいな時期があったんだよね。当たり前だけど(笑)。

新入社員の頃って、最初は…自分の思った仕事ができずに、悩んだり、凹んだりすることもあるよね。「なんでお茶くみしなければならないんだろう」って感じで。

僕もね、放送作家を目指して有名タレントのHさんの家に住み込みをさせてもらってたんだけど、Hさんって日本茶が大好きでね。傍にいる時は、僕がお茶の用意をしていたんだよね。

放送作家になりたいのに毎日お茶くみだよ(笑)。

でもね、毎日お茶を入れているうちに、どうすれば“とびっきり美味しいお茶になるのか”を考えるようになって、お湯の温度や入れ方を考えるようになったんだよ。こっちも意地になっちゃって(笑)。それに「おいしいね」って喜んでもらえたら嬉しいからね。

そんなお茶を入れる生活も…3か月ぐらいたった頃かな。ある夜のこと、“そろそろお茶を出すタイミングだな”と、お茶を用意してお出ししたら、なんとHさんに「なんでもいいからコント書いておいで」と言われたんだよね。

そりゃもう嬉しくてさぁ、僕は間髪入れずに「はい!」と返事して部屋に戻って考えた。そして、原稿用紙3枚ほどのコントを書いて持っていったんだ。その原稿をHさんに手渡すと、Hさんはテーブルの上で“トントントン”と整えると、さっと私の方に向けて差出し、「0点!もう1回、なんでもいいから書いておいで」だって(笑)。ほんと、あっけにとられる間もなかった。

返された原稿を受け取り、「はい、書いてきます!」と、すぐに部屋に戻った。普通ないよね(笑)。目も通さないって。僕の書いたコント…まったく見てくれなかったんだよ。しかも0点。

普通は凹むのかな?でも僕はこう思ったんだ。「Hさんはやっぱり凄い人だなぁ」って(笑)。部屋で読み返したら、確かに面白くもなんともなかったんだよね。

そうなると「さあ、もう1回!」だよね。さっきより面白いと思うコントを書いて、もう一度持っていったんだ。「書いてきました。」と原稿を差し出すと、今度はなんと、その原稿を読んでくれたんだよね!そして読み終えたHさんは、原稿を私に返して「はい、0点!」って(笑)。でもね…全然凹まなかったんだよね。嬉しかった。だって、さっきは読まずに0点だったのに、今度は読んでくれて0点ですよ。気持ちのいい0点でした(笑)。それに…さっきよりも少し前に進んだんだよ。Hさんは「もう1回。今度は夫婦のコントを書いておいで!」って、ついに、コントの設定をもらえたんだよね。

僕はもう嬉しくて、「はい!書いてきます!」と部屋に戻った。で、また自分の書いたコントを読み返してみた。するとやっぱり、これまた面白くもなんともなかったんだよね(笑)。これは0点だと思った。それに…これは後からわかったことなんだけど、Hさんの採点は0点か100点かのどちらかしかないんです。そんなHさんの“はっきりした点数の付け方”は、当時の僕にはすごく励みになったんだよね。

さあ、夫婦のコントだよね。じっくり考えてもう一度持って行ったんだ。すると今度は…なんと、ざっと目を通した後、赤ペンを持ってもう1度原稿を見直してくれたんだ!

そしてHさんは、おもむろに「○子の手、小刻みに震える。っていいね。これはまだ使ったことなかったから、ここだけ採用!今度のコントの中に入れよう。」と言って、なななんと採用してくれたんだ!その時は、ほんと嬉しかったな!そして「はい!」と言って、原稿と一緒にお札を1枚もらったんだ。Hさんは「お小遣いじゃないよ。それは私からの原稿料。先輩たちのような放送作家になって原稿を書くと、テレビ局から原稿料がもらえるんだよ。そうなれるように頑張りなさい。」って。泣いたね(笑)。こんな有り難い教えまで頂けるなんて。

え? Hさんに「なんでもいいから書いておいで!」って言われた時、何を書いたらいいか質問しないんですか、って?

実はね、Hさんには質問ってしちゃいけなかったんだよね。一切。僕も当時は質問したくて同じような疑問を持っていたんだけど、今ならわかる。質問をすると発想が狭まってしまうんだよね。今回も最初から「夫婦のコント」だったわけじゃなかったんだ。僕の書いたものを見て、それが何に使えるかを後から考えるって感じだった。そういう意味では設定がなったわけではなく、「なんでもいいから」というオープンな設定があったんだよね。良いモノを創造するっていうのは、そうやって段階を踏んでいくんだなってわかったのは、それから随分経ってからだね。

企画やアイディア出しの時ってさあ、最初は広く自由に受け付けると、思いもかけない発想からヒットが生まれることがあると思うんだ。僕は、あの時のHさんの人を育てるスキルを“見ずに0点、見て0点、そして3度目にこれいいね”っていう方法?それをホップステップジャンプ教育法と名付けた。勝手に(笑)。あの時の有り難い教えは、今でも役立っているんだよな。

【解説】ビジネススキルとしての“雑談力”(三好)

今回は、誰でも経験している“話題に困った時”の話ですね。最近だと、ブログを書いている人も多くて…会話じゃないけど、同じような悩みを持っている人も増えてきていると聞いています。

こんな時に参考になるのが、大倉さんの“雑談”なんです。これは普通に食事をしている時の雑談のワンシーンなんですが、この雑談の中に、いいところがちりばめられています。

この話題の中にちりばめられた“いいところ”

① 他人の悪口は言わない。自分の話をする

1つは自分の話(経験談、エピソード)をしているところです。よく他人の話ばかりする人っていますよね。その人を“べた褒め”、“称賛”するのは良いですが、悪口だったら最悪です。例えそれが全く面識のない遠い存在の芸能人や政治家、著名人、何か事件を起こした人でさえ止めたほうがいいと思います。確かに、悪口や噂話は話題にしやすいし、話が盛り上がるし、雑談としてはすごく簡単です。相手の耳に入らないし、周囲に同調しやすいしって思っても、“自分のために止めておきましょう。その場が盛り上がったり、相手が笑っていたとしても、あなたが「悪口を言う人」に設定されてしまうことには代わりません。「あの人、きっとどこかで私の悪口も言ってるんだろうな」って根っこの部分で信用されなくなりますからね。

②自慢話にならないように注意する

これは本当に、僕も注意しないといけないんですが…自慢話ってしたくなるんですよね(笑)。SNSでも注意しないと、“リア充アピール”とか“間接自慢”とか、結構嫌がられています。確かに、他人の自慢話を聞いてもねぇ(笑)。

でもこの話には“自慢”が入ってませんよね。なんせ“ダメ出しされた”、“0点取った”って言ってるんですから。“お茶くみ真剣にやってます!”って…これを頑張ってるアピールって嫌悪感抱く人がいないとは言えませんが、普通はそんなに嫌味はありません。

そう考えたら、話題として最適なのは“自分の失敗談”“苦労話”“弱点”“コンプレックス”などの方ですよね。僕はそれを“面白エピソード”と呼んで、自分が失敗した時に「将来の面白エピソードになる」と自分に言い聞かせて立ち直るようにしています(笑)。

③楽しそうに話す

自分の話、しかも“失敗談”や“苦労した話”も、実は一歩間違えれば“自慢”になってしまうので、そこにも注意しなければなりません。自分に酔った表情でする“苦労話”は、相手には“自慢”に見えますからね。

④説教臭くしない

相手と年齢差があるようなケースでは注意が必要ですよね。上司と部下、親と子のような関係でも同じです。時に、しっかりと指導・教育しないといけないケースもあるような関係性の場合、雑談も…説教臭くなってしまうから注意しないといけません。部下や子供が、上司や親と話をしたくなくなるのは…雑談が、すぐに説教に変わってしまうから、あるいは雑談ではなく説教だからというのも大きいと思います。

仮に口調が優しく、諭すように話したとしても…「こうした方が良いんだよ」っていうスタンスが少しでも見抜かれると、部下や子供にとってそれは雑談ではなく、説教ですからね。特に、思春期の子供や、緊張感のある新人は感受性が研ぎ澄まされているから、そういうところに敏感で見透かされちゃいますからね。

このコントの話のように、雑談に答“べき論”や“正解”はいらないんです。Hさんじゃないですが、相手に自由に受け取ってもらって、相手の自由な発想で、相手が真似したい!真似した方が良いと思っても思わなくてもね。

まとめ

雑談というのは、その1回で何かを伝えるわけでもなく、何かが伝わるものでもありません。日々繰り返される“雑談”を通じて、相手は総合的にあなたの“思考”を推し測るって感じです。しかも、そうして定義した人格は、逆に指導や教育にも影響を与えますからね。いくらいい教育論を並べ立てようと、SNSを通じて伝わってくる人格が全然違っていたら分かりますよね。どちらを信用するのかって。

日頃“自慢したい”って思っている人は雑談にそれが出てきます。“他人を蹴落としたい”と思っている人は悪口として雑談に出てきます。“雑談する相手を笑顔にしたい”のなら、面白く笑える話にするでしょう。

「雑談にこそ人格が出る!」

そう考えたら、やっぱり雑談って重要ですよね!

おわりに

さて、全10回にわたって紹介してきた本連載「大倉利晴の“That’s談 閑話Q?題”」も今回で最終回となります。放送作家としての経験を基に“コミュニケーションの極意”について語ってきましたが、皆さまの参考になったでしょうか。

本連載を通じて、主に“雑談の重要性”を強調してきましたが、仕事の現場ではまだまだ“雑談はムダ”という認識が強いことは否めません。しかし、雑談は対人関係の潤滑油です。ぜひ、皆さまも積極的に、コミュニケーションに雑談を取り入れていただければ幸いです。

半年に及ぶ長い連載でしたが、ご愛読ありがとうございました!

著者
大倉 利晴(おおくら・としはる)
フリーの放送作家。過去に萩本欽一氏に師事していた経歴を持つ大御所。テレビ・ラジオの企画構成をはじめ、ラジオのパーソナリティ、テレビ出演、講演、作詞などを行っている。主な構成番組は「欽ちゃんのどこまでやるの」「オレたちひょうきん族」「笑っていいとも」「クイズ100人に聞きました」他多数。他に「M-1グランプリ」の予備審査員なども務める。
著者
三好 康之(みよし・やすゆき)
株式会社エムズネット代表

IT 関連企業又は、企業の情報処理部門専門コンサルタント。加えて、大手SE 向けの資格取得講座や階層教育を担当。高度情報処理技術者試験対策講座では驚異の合格率を誇る。情報処理全区分制覇他資格多数。『情報処理教科書プロジェクトマネージャ』(翔泳社)など著書も多数。全国の優秀なITエンジニアを参画するプロフェッショナル集団、ITのプロ46代表も務める。
e-mail:miyoshi@msnet.jp
URL:www.msnet.jp

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