ESXiの使いどころ!
ディスクレスな環境
「第1回 ESXiって何だ?」で紹介したように、ESXiにはEmbedded Editionがあり各サーバーメーカーよりあらかじめ組み込まれた形で販売されています。この場合、ESXiだからできるディスクレス構成が可能になります。なお、VMware社より公式にサポートされていませんが、Installable EditionでもUSB Bootは技術的には可能です。
より多くの仮想マシンを動作させていくためには、物理サーバー1台あたりの能力が高いものを利用するスケールアップ構成か、複数の物理サーバーを並べて利用するスケールアウト構成にする必要があります。
スケールアップ構成では、いずれ物理的な限界が発生しますし、1台あたりのサーバーの能力単価が高額になります。そのため、十数台以上の仮想マシンを稼働させていくためには、通常はスケールアウト構成を採用します。
その際に効果を発揮するのが、ESXiのディスクレス環境です。
一番のメリットは、仮想マシンの増加や稼働率向上により物理サーバーを増強する時に、ESXiの組み込まれたサーバーを用意すれば、あとは仮想マシンのイメージを集約したNASやSANのストレージに接続して、簡単な設定をするだけですむことです。
もし、このESXiの環境をブレードサーバーで構築しているならば、面倒な物理接続も省略できます。つまり、購入したブレードサーバーをシャーシに挿入するだけで環境の増強が完了するのです。
さらに、各物理サーバーには内臓ディスクが無いために省電力かつ、ディスクからの発熱を抑えることができます。ESXi自体の構成情報も、コマンドで簡単にバックアップすることができるため、サーバーの管理という面でも大幅に楽になります。
ESXiの秘めたる可能性
ここで、少し将来に対する期待を込めて、想像を膨らませてみましょう。
残念ながら、原稿執筆時点(2008年9月現在)では、公式にESXiをUSBメモリにインストールして、好きなサーバーで起動させることはできませんが、もし将来的に許可された場合は、どんなことができるのでしょうか?
筆者は昔、とある工場の生産管理システムを開発していたのですが、とにかく夜間バッチの計算処理に時間がかかり四苦八苦していました。もし、ここで利用できたとしたら、例えば夜は人が使わないデスクトップマシンを拝借してUSBからESXiを起動し、あらかじめ準備しておいたバッチの分散処理用OS環境をネットワークから起動させてリソースを集約すれば、計算能力を高めることができます。
現在でも、USBメモリにBootイメージを入れて好きなPCで起動するLinuxなどがありますが、それがさらに発展するとESXiの入ったUSBメモリを好きなPCに挿入して、状況に応じた仮想マシンをネットワーク越しに起動することが可能になります。
32MBというコンパクトな状況を考えると、そもそもマザーボードやCPUのベンダーは、あらかじめ組み込んだものを登場させる可能性もあります。もしそうなれば、仮想サーバーが必ず起動できるようになります。用途によっては、ソフトウエアパッケージ開発でも、現在のようにさまざまなOS環境に対応したものを個別に開発、メンテナンスしていくのではなく、そのソフトウエアに特化したOS環境ごと配信することにより、開発やサポートの工数を大幅に削減できるかもしれません。
いずれも、ネットワークの帯域やライセンスの問題などがあり、すぐに実現する世界ではありませんが、ESXiが秘めた可能性は十分にご理解いただけると思います。
では、最後にESXiの使いどころを整理してみましょう。