Flashはなぜ嫌われるのか
Flashで嫌われること
それではもう少し具体的に、実際にFlashがユーザーに嫌われる例を5つ紹介します。これらの「嫌われ」はすべて、ユーザー自身の目的達成が大なり小なり阻害されること、つまりユーザビリティが損なわれていることに起因しているものです。
1つ目は、「無意味なスプラッシュページ」です。例えば、言語選択や製品種類などの選択だけのページで、わざわざ1ページ独立して設けるほどのものではないにもかかわらず、ユーザーに余計な1ステップを強要しています。
2つ目は、「クリック後のフィードバックに無駄に時間がかかること(「Now Loading」を含む)」です。演出として待たせる(じらす)ことを狙っているケースもありますが、Webサイトはテレビと違い、ユーザーが自身の目的をスムーズに達成するために利用するものなので、こういった「じらし」はユーザーをイラつかせる以外、何物でもありません。
3つ目は、「テキストが、テレビCMのように少しずつ現れる演出(自分のペースで読めない)」です。Webサイトでは、ユーザーはテキストを素早く斜め読みし、自分が求めている「キーワード」にひっかかるかを瞬時に見極めようとする傾向があるので、このような演出はまどろっこしいだけです。さらに、そのテキスト(キャッチコピーなど)が、抽象的で具体性に欠ける内容だったりすると、さんざん待たされたユーザーの受ける印象は最悪になります。
4つ目は、「マウスのなにげない移動によって、ある個所に偶然マウスオーバーしてしまい、ユーザーが予期しない挙動を起こしてしまうこと」です。例えば、勝手にメニューが開いたりして、本来ユーザーが見たいと思っていた部分が隠れてしまうことなどが該当します。
5つ目は、「ユーザーの慣習を無視した、斬新過ぎるユーザーインターフェース」です。例えば、クリックしなくてもマウスオーバーするだけでコンテンツ内容が切り替わる(先に進む)ケースがありますが、ユーザーにとっては予期していなかったフィードバックなので、ビックリすると同時に、状況把握ができずちょっとしたパニックに陥る場合があります。
Flashはユーザビリティ的には「悪者」なのか?
なんだかこれでは、Flashのネガティブポイントばかりを挙げてしまったように見えてしまいますが、これらは筆者が手がけてきた数々のユーザビリティ改善プロジェクトや、ヒューリスティック評価(ユーザビリティ評価手法の1つ。ユーザビリティの専門家が、評価対象のWebサイトを見て、さまざまな問題点を指摘する手法。)の中で、実際に目にしたことばかりです。
Webユーザビリティの第一人者、ヤコブ ニールセン(Jacob Nielsen)氏は、2000年に発表したコラムで「Flashは99%有害(http://www.usability.gr.jp/alertbox/20001029.html)」と言っています。あれから8年、今となっては「99%」はさすがに大げさだと思いますが、上記に挙げたような、ユーザーへの配慮を無視した制作側(運営側)の自己満足がFlashアプリケーションにはいまだに多く存在し、ユーザーの意識との間で大きなギャップが生じていることを、クリエーターおよびWebサイト運営者は謙虚に受け入れるべきではないでしょうか。
では、Flashはユーザビリティ的には、もはや「悪者」でしかないのでしょうか。いいえ、そんなことはありません。Webサイトのユーザビリティを高めるにあたっては、「Flashならではの利点」というものも、もちろんあるからです。
次回は、この「Flashならではの利点」を活かしたユーザビリティの向上について紹介します。