OpenIoT Summit開催。「IoTに最も重要なのはビッグデータと機械学習による価値の創造」
The Linux Foundationがホストする「Embedded Linux Conference+OpenIoT Summit North America 2018」という長い名称のカンファレンスが、2018年3月12日から14日までポートランドで開催された。今回は、このカンファレンスの1日目のキーノート、Google CloudでIoTのプログラムリードという肩書を持つAntony Passemard氏のプレゼンテーションを紹介する。
タイトルは「Intelligent Internet of Things」というものだ。Passemard氏は冒頭「IoTという言葉は今後、消えていくだろう」という言葉からプレゼンテーションを開始した。これはInternetに接続されたデバイスが様々な分野で使われることで社会が便利になり、結果としてその存在が当たり前になる、ということを示唆している。その例としてPassemard氏が挙げたのが「全く遅れの出ない空港」であり、「自分にカスタムメイドされた医薬品」である。IoTがクラウドと連携することで、これまで不可能であったことが可能になるという良い面を強調した形だ。
そしてIoTに期待されているのは「リスクを下げる」「コストを下げる」「利用を拡大する」ことであるとして、それを実現するためには3つのチャレンジがあると語り、セキュリティ、ビッグデータ、マシンラーニングを挙げた。
これはIoTが単にネットに接続されたデバイスであるという認識よりも、その先にあるユースケースを見据えた発想であろう。つまりデバイスがセキュアであること、そのデバイスから発生するデータをビッグデータとして使うこと、そしてそのビッグデータから得られた知見をビジネスの価値に変えるということだ。特にビッグデータに関しては、その量が著しく増加していることを指摘して、デバイス側の問題というよりもそれを受け取るバックエンド側に課題があることを指摘した。これはGoogle Cloudの関係者としては当然の発想だろう。
そしてその課題に対して、Googleは過去15年に渡ってビッグデータに関する問題を解決するために努力してきたことを説明した。
ここからは2002年のGFSから始まる現在までの流れを振り返ることで、Googleの社内での開発の結果が論文として公開されたものから、オープンソースソフトウェアとして開発が始まり、さらにそれが逆流するかのようにGoogle Cloudのサービスとして展開されるようすを解説した。これはビッグデータだけではなく、コンテナなどGoogle社内ではすでに使われている技術が、他社によってあたかも全く新しいイノベーションであるかのように語られることをGoogleが嫌い、率先して論文として発表し、オープンソースとして公開する近年の流れに沿った説明と言える。そしてIoTの受け皿となるプラットフォームであるGoogle Cloudが世界中に展開され、IoTの接続ポイントとしてどこからも利用可能であることを強調した。
そしてAirbusの事例を紹介し、これまで不可能だった画像処理が機械学習によって可能になったことを紹介。ここではGoogleが得意とする画像認識における機械学習が問題解決の鍵であったことを解説し、「人工知能による画像処理がすでに価値を生み出している」と語った。
ただ、機械学習のモデルを開発するためのエンジニアが足りていないことを指摘して、人工知能をもっと拡めるためには、より簡単に機械学習が使えるようにすることが重要だと語った。そしてその問題に対するGoogleとしての回答が、Google Cloud AutoMLだと語った。ここからはGoogleが開発したCloud AutoMLの説明、そしてその中で使われるTensorFlowをハードウェアで実装したTPU(TensorFlow Processing Unit)の説明が行われた。
IoTメインということもあり、今回のカンファレンスでは主に組込系のセッションが多いのは当然としても、初日のキーノートの一番最初のトークにGoogleが割り当てられたのは意外であった。実際の内容は、いかにもGoogleらしくクラウドを主にプッシュするものであった。Googleの観点では、IoTにおいて最も重要なのはデバイスではなく、ビッグデータとそれを価値に転換する機械学習であるということがよく分かるキーノートであった。
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