RISC-Vを手がけるSiFiveのCTOがIoT時代のプロセッサーを語る!
Embedded Linux Conference+OpenIoT Summitでは、GoogleやIntelなどの著名なITベンダーだけではなく、多くのベンチャーが自社の技術や製品を展示していた。そういったベンチャー企業の一つが、この記事で紹介するSiFiveだ。SiFiveは、今回のカンファレンスにDiamondスポンサーの一社として参加するという気の入れようだ(もう一社のDiamondスポンサーはIntel)。SiFiveはRISC-Vというプロセッサの設計支援を行うベンチャーで、UC Berkeleyでの研究から端を発しているマイクロプロセッサの第5世代であるRISC-Vを、オープンソースな実装として公開している。
RISC-Vに関しては、後藤弘茂氏によるPC Watchの記事を参考にするといいだろう。
海外で急激に盛り上がる新CPU命令アーキテクチャ「RISC-V」
今回のカンファレンスではIntelと並ぶスポンサーシップ、初日から最終日まで行われるRISC-Vハッカソン、そしてIntelに匹敵するサイズの展示ブースというように、SiFiveは非常に存在感を示したと言える。キーノートとしても初日の2番目というポジションで大いに目立っていた。
キーノートに登壇したのは、SiFiveのCo-FounderでCTOのYunsup Lee氏だ。
タイトルが「Designing the Next Billion Chips : How RISC-V is revolutionizing Hardware」であることから分かるように、これから大量に利用されるであろうIoT向けのマイクロプロセッサ市場で、ロイヤリティフリーのRISC-Vがいかに革新を起こしていくか? という内容だ。
Lee氏は、これまでの大量生産されるプロセッサでは「今後予測されるIoTやEdge Computing、さらに機械学習などのニーズには応えられない」と語る。そして、オープンソースソフトウェアが無償で公開されることで、世界中のエンジニアによって進歩が加速したことをハードウェアも模倣するべきだとして、RISC-Vのプロセッサデザインをオープンソースとして公開した背景を解説した。
そして同じようにハードウェア設計をオープンソース化した例として、NVIDIAのDeep Learning Accelerator(NVDLA)を紹介。NVIDIAがDeep Learning Acceleratorをオープンソースとして公開すると発表したのは、2017年のGTCにおいてである。一方RISC-Vは、かつてSun Microsystemsが開発したSPARCの原型となるRISCプロセッサを研究していたDavid Patterson氏が関わっている。そう考えると、RISC-VはUCBでの研究からSPARCを経て、オープンソースとして再度IoTの現場で脚光を浴びているということになるのだろう。
そしてSiFiveのビジネスモデルは、このオープンソースプロセッサをユースケースに合わせてデザインするサービスを提供することである。そもそも、プロセッサのカスタマイズが非常に高価であることに対するアンチテーゼとして始まったのがRISC-Vということであれば、それをファブレスで実現する企業があるのは必然だ。用途に合わせて32ビットの省電力プロセッサ「Freedom Everywhere」と、データセンターでの利用を目指した64ビットマルチコアの高性能プロセッサ「Freedom Unleashed」を用意し、必要に応じてサードパーティの周辺機器を組み合わせて、実装することが可能だという。
そして競合他社との比較という部分に話が及ぶと、Intel、Armなどのプロセッサに対しては大きな性能差があることを強調する。ここでは、プロプライエタリなプロセッサに対して、性能面でも大きなアドバンテージがあることを解説した。
そして今回のサミットと同時開催されたハッカソンの概要を説明した。実際には、このプレゼンテーションが行われた3月12日の午前中からホテルの別室にてスタートしており、賞金と開発用のリファレンスボードが提供されるなどSiFiveとしての力の入れ具合が分かるものだった。
ハードウェアをオープンソースとして公開することで開発を促進させようという試みは、IBMが推進するOpenPOWERやFacebookがデータセンターのサーバーを仕様を公開する試みとして賛同が集まったOpen Compute Projectなどがある。ホビー用としても人気のあるArduinoも、ハードウェア設計はオープンソースとして公開されている。こうした流れが着実に増えていることは、最近Linux Foundationが関わった2つのプロジェクトのリリースが立て続けにあったことからも感じられる。
ひとつは、Intelがソースコードを寄贈したSound Open Firmwareだ。オーディオデバイスのファームウェアを公開することで、開発を進めようというプロジェクトである。
参考:The Linux FoundationがSound Open Firmwareプロジェクトを歓迎
そしてもうひとつは、OpenBMCというプロジェクトだ。OpenBMCは、データセンターなどで使われるサーバーを管理するためのコントローラーのファームウェアを公開することで、様々なシステムの管理を容易にしようとする試みだ。IBMがコードを寄贈し、Facebook、Google、Intel、Microsoftが参加するという。ここでも独占するのではなく公開することで、利益を最大化しようとする流れを感じ取ることができる。
参考:OpenBMC
独占することで得られる利益とそれを維持するためのコストの和を、公開し共有することによる価値が上回るようになる。この大きな潮流は、ソフトウェアの領域で始まったが、ハードウェアでも同様の現象が起きるのかもしれない。
SiFiveのオープンソースプロセッサが、今後どのような部分に使われていくのか注目していきたい。
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