全体構成はどうする?どうできる?
新たにiPhone向けサイトを作成
iPhone向けのサイトを新規に構築するのは技術的にはそれほど難しくはありません。言ってしまえば、PCサイトを小さな画面で見えるようにするだけです。使える技術やコンテンツも既存のPCサイト構築とほぼ変わりません。CMSなどを利用してコンテンツがきちんと分離されているならばさらに簡単になります。
むしろレイアウトや装飾に悩んでしまうPCサイトよりも表現が制限される分、すっきりできるかもしれません。
やはりここでも最も注意すべき点は、「サービス・コンテンツの整理とフォーカス」です。大まかな方針は以下の通りです。
まず、ユーザーが最も使いたいであろう機能、見たいであろう内容に絞って構成し、残りはiPhoneでも見やすいようにある程度調整されたPCサイトにまかせてしまうことです。
最近たまに見かけるよくできたブログパーツには、サイトで提供しているメインサービスを非常にコンパクトにまとめたチョイ見せ+メインサイトへの誘導になっているものがありますが、あの考え方にとても近いやりかたです。PCの機能を持ち出すツールであるという観点からすると、サイトをパーツ化してしまうというのは理にかなった考え方です。
さらに、主な機能や内容をシンプルにまとめ、トップのメニューからそれらにリンクすることです。
これはホーム画面とネイティブアプリケーションの関係のような考え方です。PCサイト側から見れば、サイドメニュー(もしくはトップのタブ)をトップページにし、それぞれをクリックした先をサービスやコンテンツとする考え方です。
見た目や構成はネイティブアプリケーションと似たような感じになりますので、動作についても「ユーザーがネイティブアプリケーションで慣れている操作やイフェクト」から外れないように注意しないと、逆に不快感を与えてしまうことにもなりかねません。
これらの考え方をきれいに実現しているのが、Yahoo!(http://www.yahoo.co.jp/)とAmazon(http://www.amazon.co.jp/)です。どちらも数タップでユーザーが知りたいであろう情報に届くよう作られており、動作が軽いだけでなく、ちょっとした面白さまで準備してあります。
iPhone向けのサイトを作るべきか否か
今すぐ作るべきです、とまでは言いませんが、少なくともiPhone向けのサイトを考えることは、自サイトが提供しているコンテンツやサービスがいったい何なのか、ユーザーに提供できる気持ちよさとは何かを再考するきっかけにはなるでしょう。
この気持ちよさは触ってみないとなかなかわかりませんので、もしもiPhoneをお持ちでなければぜひ入手してください。新型iPod touchでもほとんど同じことができますので、そちらでも良いでしょう(iPhone対応すればiPod touchにも対応できます)。
少し長期的に見ても、決して無駄な投資ではありません。「グーグルフォン」として発表されたG1の標準ブラウザはiPhoneと同じSafariのベースになっているWebkitであり、またG1のベースOSとなるAndroidの開発団体にはDoCoMoやKDDIも参加しています。これから数年の間に、iPhoneに影響を受けたAndroidベースの高機能端末が出てくるのは、想像に難くありません。
また、開発する技術者にもメリットがあります。Safariはここ最近では最も積極的に将来標準になりうる規格を取り入れて実装しているブラウザです。iPhone特化であれば、そのような先進的な機能を試し、学習することもできます。ケータイ向けという特殊な技術ではなく、「次のWebの世界」で一般的に使えるであろう技術なのが良いところです。
今回は全体構成にフォーカスを当て、技術的なことにはあえて触れませんでしたが、次回からは具体的な方法を紹介します。お楽しみに。