いま、子どもたちにプログラミング教育が必要なワケ

2018年8月10日(金)
谷藤 賢一

はじめに

みなさん、はじめまして。谷藤 賢一と申します。

私は現在、秋葉原にプログラミング教室を構えるとともに、社会人向けのIT教育をはじめ、子ども向けプログラミング教育の「子ども社会塾」をつくばで開講しています。

学生時代から、学歴社会と終身雇用の蜜月なシステムに疑問を持っていました。なぜ暗記して答えられた人だけに有利な人生が与えられるのか? なぜ受験が終わったら忘れても構わないのか? なぜ成績優秀かつ何も知らない人が優遇されるのか? なぜ?なぜ?なぜ?……

そして、それがたった1つの原因にたどり着くことを1987年に知ってしまいました。知るのが早過ぎたのでしょうか……誰もそこを見ようとしないことに驚き続けること約30年。ついにプログラミング教育、センター試験廃止、働き方改革など国が動き始めたことをきっかけに、1987年からの31年間で調べ上げたネタをお伝えしたく、この連載を始めました。

教育系サイトではなく、IT系のサイト連載を決めたのは、私自身が元SEというだけではありません。エンジニアであれば、きっと私が掴んできたネタを理論的に理解していただけると信じているからです。

教育ネタは、とかくヒステリックな空気になりがちです。教育の世界にはIT業界では考えられない非論理な不思議ワールドが広がっています。エンジニアであれば、論理的に冷静に情報を共有し、発信者にもなれます。私は、子どもたちを正しく導く同士が欲しいのです。

それは日本を良くすることでもあり、我々の老後を支えることでもあるのです。エンジニアであればそれができます。まずは共感していただくだけで良いので、ぜひお読みいただければと思います。

大転換から置いてきぼりの教育

2020年に始まる、小学校におけるプログラミング教育の必修化。都内を中心に、子ども向けプログラミング教室が大盛況です。どうして突然「子どもにプログラミング」なのでしょうか?IT人材不足?それも1つにはあるでしょう。でも、本質的にはそこではないようです。思いっきり短縮して言うと「イエスマンからイノベーターへ」でしょうか。それも、国の方針で。それほど騒がれていませんが、戦後初の大転換と言えるかも知れないのです。

ニューヨーク市立大学大学院センターのキャシー・デビットソン教授の発言は衝撃的でした。「将来、子どもたちの65%が今存在しない職業に就いている」。世界は第4次産業革命前夜です。日本はどうでしょう?黙って言うことだけ聞いていれば、会社が老後まで面倒を見てくれるのでしょうか?いわゆる終身雇用、年功序列です。今や時代遅れですよね。日本も大きく変わってきているのです。

でも、まったく変われていないものがあります。それが「教育」です。暗記中心で最終目標は大学受験。合格すれば、それまで勉強したことは忘れても構わない。4年間たっぷり遊んで、あとは就活だけちょっと頑張れば良い。単純に考えて、それで日本が成長できると思いますか?

かつては戦後の焼け野原からの再スタートだったので、成長するしかありませんでした。そしてバブルを謳歌し、ゴッホからエンパイヤステートビルまで買い漁るまでに成長した日本。ところが、1991年のバブル崩壊でハイ、終了~! その後は衰退の一途ですよね。

会社から言われたことしかできないイエスマンを大量生産してしまった日本。恐ろしいことに、今もイエスマンを大量生産し続けている日本。失われた10年は20年になり、もうすぐ30年です。子どもの教育を何とかしないといけないことはもうお分かりですよね。よく30年近くも先送りしてきたものです。このままでは日本沈没。

改革に向けていよいよ国が動き出した

そんな目前に迫る危機にようやく気付いたのか、ついに国が動き始めました。それが教育改革であり、働き方改革なのです。「知ってるよ、センター試験が終わったり、残業が制限されたりって、アレでしょ?」いえいえ、そんな小さな話ではありません。

メディアからの情報だけでは大事なことを見落とします。この改革の根っこにあるのは大きなことなのです。だから、戦後初の大転換と言えるかも知れないのです。「大げさな。だってそんなこと周りで言ってる人いないよ?」それはつまり「知らないだけ」ですよね。この連載で「知ってしまった……」になりましょう。

ちょっと怖い話もするかも知れません。安心する話もするかも知れません。逃げずに知ることです。繰り返しになりますが、世界は第4次産業革命前夜です。日本だけ昭和でい続けることはできません。イエスマンからイノベーターへ変革をしなければ飲まれます。

あなた自身もそうですし、もっと大事なのは子どもたちです。将来、AI(人工知能)に子どもたちの仕事が奪われるかも知れません。「じゃあ、今から何の勉強をさせておけば将来を奪われないで済むの?」そんなこと、分かりません。「何をさせておけば」という発想そのものが昭和だからです。昭和の思考では答えは出ません。そのことに、まず親世代が気付かなくてはなりません。

改革を邪魔する「認知的不協和」

昭和の人には恐ろしい変化でしょう。実際、この手のセミナーで吐き気を催して会場を飛び出すママもいるそうです。私も信じがたい昭和な場面に数多く出くわします。実際にあった例をお話しましょう。

「AI時代の到来に備えなければ」というネタを振ってみたところ、「私はそんな時代がすぐに来るとは思いません!」というビックリな答え。

「学校で教えることだけに頼っていたら、取り返しのつかないことになる」というネタを振ったところ、「まずは受験です!そんなのは受験が終わってから考えることでしょう!」という、これまたビックリな答え。

「資格さえ取れば安泰という時代はとっくに終わっている」というネタを振ったところ、「資格を取ったという自信が大事なんです!」という、ビックリを通り越して唖然とする答え。

世のママたちは恐ろしいまでに昭和であることが分かってきました。古い価値観にしがみつき、新しい情報を否定しようと必死です。これは心理学で「認知的不協和」といわれる現象です。「酸っぱいブドウ理論」と呼ばれるもので、新しい情報によって自分に不都合なことがあると、「あのブドウは酸っぱいに違いない!」と事実を曲げようと必死になってしまう現象です。

これは意外に強力で、目の前に丸を見せても、「それが丸だなんて誰が決めたの!」とか、「○○大学の○○博士の研究によると……」、なんて言うと、「○○博士なんて私は知らない。聞いたこともない。そんな知らない人の言うことなんて信じられない!」とか。これが認知的不協和です。

プログラミング必修化の大きな意味

子どもたちは今、第4次産業革命を前にして、昭和の壁に阻まれています。しかし、ようやく国が動き始めました。社会は言うことをよく聞くイエスマンより、何かを生み出すイノベーターを求めているのです。その1つが小中学校でのプログラミング必修化なのです。「え!? 学校でプログラミング? 何の意味があるの?」大きな意味のほんの一部がプログラミングなのです。

次回では、もう少し「プログラミング教育」について触れていきます。

プログラミングスクール「子ども社会塾」塾長。株式会社C60代表取締役。1981年よりプログラミングに親しみ、大学時代の1987年からシステム開発の仕事に従事。以後、技術と営業を中心に大手、ベンチャー、外資系など12社を経験し2009年に独立。

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