COBOLエンジニアが実際のWeb開発業務に携わる際に気をつけるべきこと
はじめに
この連載コラムでは「COBOLエンジニアがPHPとRuby on Railsを習得するために必要なこと」と題して、COBOLエンジニアが効率的にオープンソース・ソフトウェアの技術習得を行うためのトピックや体験談を取り上げます。
最終回となる今回は、実際にRuby on RailsとPHPを学習したCOBOLエンジニアが、Web業界にキャリアチェンジし、学習した内容をどう業務に活用しているのかを中心にインタビューしました。
COBOLからオープンソースへのキャリアチェンジ
今回インタビューしたのは、新卒後入社した中堅の大手メインフレーム会社から、地方の中小Web系企業であるF社に転職したM氏(25歳)です。
彼は、新人研修終了直後から約3年間COBOLに携わっている間、ずっとPHPやRailsのようなオープンソース技術を用いたWeb開発をしたいと希望を出し続けてきましたが、叶わず、とうとう転職を思い立ちました。F社に応募した理由を、彼はこう語ってくれました。
「これからはPHPやRailsはニーズが高まると聞いて、オープンソースの仕事をさせてくれる会社をさがしていました。F社は、地方ではめずらしくオープンソースに力を入れていることと、何より教育事業部も持っていたので、ここに入社したら教育してもらえるのでは、と、考えました。そしたら面接官だった社長から“うちは学校じゃない”と怒られたのですが、若さとやる気を買ってもらえたらしく、PHP技術者認定初級試験に合格したらという条件で、内定をもらいました。」
与えられたのは試験対策本1冊のみでしたが、オープンソースであるPHPは無償で簡単に実行環境を構築することができます。M氏は、実際にプログラミングしながら、無事、PHP技術者認定初級試験に合格しました。そして入社後、フレームワーク研修を受けることになります。
「自分が受けた研修は、フレームワークとクラウドを使用した、短期間ですがとても実践的な研修でした。黙々と1人でテキストを読んだりコンソールにハローワールドを打ち込んだりするような勉強ではなく、実際にWebサイトを構築してそれをクラウドにアップして、自分のスマホでつくったサイトがデプロイされているのを確認するという講義は、単純に面白かったです。クラウドも機能制限された状態とはいえ無償で使えるとのことだったので、家に帰っても作業することが出来ました。今まで資格試験等で勉強して習得した点の状態の知識が、うっすらと細い線でつながったような気がしました。」
最初は、技術の違いよりも仕事のやり方の違いに困惑
資格取得と講座でささやかな自信をつけたM氏は、研修終了後、早速プロジェクトに配属されました。担当業務は、Railsで構築された自社サービスのカスタマイズです。しかし、1つのプロジェクト期間が3年近くあるような大規模な開発案件にしか携わったことのないM氏は、実際のWeb開発プロジェクト参画直後、今までの自分のやり方が通用しないことで、どんどん自信を喪失していきました。
「最初に上司から1人月1人で1つのサービスを要件定義から設計、テスト、製造、ローンチまでこなせと言われて(笑)。てっきり冗談だと思ったのですが、一緒にプロジェクトに着任した同僚は当然のことのように受け止めているのをみて、あの時は、あっ僕間違ったかなって、激しい不安に襲われました。」
同じタイミングで着任した、やはりRails未経験だったWeb技術者の同僚の立ち上がりが自分より圧倒的に早かったことにも焦りを感じました。
「正直、技術よりも、仕事のやり方や進め方というか、COBOL開発とWeb開発の文化の違いに面喰らいました。こんないい加減な進め方でいいのかって腹立たしく感じることばかりで…。そんな中、同じスタートラインから始めたWeb出身の同僚は何の文句も言わずに自分よりスムーズに問題なくこなせているんですよね。僕かっこ悪すぎ(笑)。とにかくもう毎日がめちゃくちゃストレスでした。いっそ全くの異業種なら自分も割り切れたでしょうし上司や同僚にも配慮してもらえたでしょうが、普通に経験者とみなされるし。あの時は今思い返してもかなりしんどかったです。」
それでも3か月後には、M氏は同僚と遜色ない位の働きが出来るようになりました。
「自分のものの見方を変えることで、だいぶ楽になりました。あくまでの僕の感じ方ですが、大切にしているものが、Webはスピードで、COBOLは安定性なのかな、と。ただこういう考え方は、全く知識がない、自信がない状態ではたぶんできなかったと思います。もし独学で得たプログラミング言語知識や研修で受けた経験や自信がなければ、もしかしたらついていけてなかったかもしれません。」
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