2020年必修化。あなたの生活もプログラミングされている? なぜ今、プログラミング教育が必要なのか ―第10回 EDIXレポート

2019年7月26日(金)
望月 香里(もちづき・かおり)

6月19日(水)~21日(金)の3日間、東京ビックサイト会議棟と青海展示棟にて、第10回学校・教育・総合展(EDIX)が開催された。その模様を2部構成でお送りする。今回は、来年から必修化となる「プログラミング教育」について、2講演の内容をレポートしたい。

プログラミング教育とは“いま”を知ること

はじめに、株式会社 情報通信総合研究所 ICTリサーチ・コンサルティング部 平井総一郎氏と、NPO法人 みんなのコード 代表理事 利根川裕太氏による「来年から必修化~今からでも始めたい小学校プログラミング教育~」のトークセッションだ。

株式会社 情報通信総合研究所 ICTリサーチ・コンサルティング部 平井総一郎氏

NPO法人 みんなのコード 代表理事 利根川裕太氏

なぜプログラミング教育が必修なのか?

最近の家の中にはコンピュータが10台以上あるという。スマホやパソコンはもちろんのこと、センサーで電気がついたり、温度管理したりする家電製品などはすべてコンピュータで、我々の生活必需品の中に組み込まれている。小学校教育で、今もお米を育てたり電気回路を学んだりするのは、子ども自身が体験してその仕組みを知ることで、世の中の仕組みも理解するためとのこと。自分の身の回りのことを理解するためにもプログラミング教育は必須なのだ、と利根川氏は言う。

●小学校プログラミング教育の手引き(第二版)
http://www.mext.go.jp/component/a_menu/education/micro_detail/__icsFiles/afieldfile/2018/11/06/1403162_02_1.pdf

小学校プログラミング教育の手引き(第二版)

何のためにやるのか、まずは手にとって触ってみて

プログラミング学習を取り入れている事例では、朝の自習時間やスキマ時間などの余剰時間を使って取り組んでいるケースが多いという。小学校では、各教科の学びを達成していく中でプログラミングを体験することを目的としている。道具としてプログラミング“で”学んでいくと捉えてほしい、と平井氏。

教科のねらいを達成するために道具としてプログラミングで学ぶという考え方

また、講演に参加していた学校関係者へのアドバイスとして、まずは様々な肩書きを捨て「自分が子どもになったつもりで」触ってみてほしい。プログラミング教育はそこから始まる。子ども自身が経験し、最適なやり方を仲間やチームで試行錯誤しながら進める工程に意味がある。簡単なものから、完璧を求めずにプログラミング教育を楽しんでほしい、と平井氏は呼びかけた。

ポイントは教師自身が立場や肩書きを捨てて、純粋に楽しむこと

何を学ばせたいか、イメージを持つことが大切

とは言え、いざプログラミング教育を取り入れるとなると、金銭コスト・運用コスト・管理コストの問題がある。利根川氏は、無料で使用できたり、低価格で長く使えたりするアプリもどんどん出てきているので、うまく低コストで運営できるものを選んでほしい、とアドバイス。実際に使ってみて、コスト面でも運用面でも誰もが扱いやすいものが良いとのこと。

授業で使える無料のプログラミング教材「プログル」

プログラミング教育の成功事例でも、最初を小さなステップから始めているところが多いそうだ。小学6年生が高校1年生にJavaを教えていた光景を目にした時には、プログラミングは若い人の方が有利であると実感した。プログラミングを活用した自由研究をする子も徐々に現れてきている今、教科という規定のみで評価することなく、子どもの学びの土壌としてもっと許容範囲を広げていってほしい、と平井氏は力説した。

情報活用能力は従来の読み書きやそろばんと同じ

次は文部科学省初等中等教育局 情報教育・外国語教育課 情報教育振興室 室長 折笠史典氏による「情報活用能力の育成におけるプログラミング教育」だ。

文部科学省 初等中等教育局 情報教育・外国語教育課 情報教育振興室 室長 折笠史典氏

現在、技術革新は確実に社会に広がっており、医療や行政事務(法政)ではAIが活用されている。2030年頃にはロボットやAIが社会に出てくる時代になるだろうと、折笠氏はいう。

●政府広報のSociety 5.0
https://www.gov-online.go.jp/cam/s5/

政府広報のSociety 5.0。今回のEDIXではさまざまなセミナーで取り上げられていた

社会に開かれた教育環境の実現

「情報活用能力」とは学習の基盤となる能力のことで、プログラミングは学校におけるICT教育の一環であるという。世界で行われている「OECD/Pisa」生徒の学力到達度調査をご存知だろうか(英語日本語)。

OECDが進めるPISA(Programme for International Student Assessment)と呼ばれる国際的な学習到達度に関する調査

その2015年の調査結果によると、日本の読解力の平均は低下していた。安倍総理も言っていたように、今後のICTの情報活用能力は、従来の読み書きそろばんと同程度に必要となってくるだろうとのことだった。

世界的に見ても日本の読解力の平均は低下傾向にあるという
(出典:OECD 生徒の学習到達度調査(PISA) 2015 年調査 国際結果の要約)

折笠氏が、まず取り組むべきと指摘したのは、先生や生徒がいつでも使えるように、ICT環境を整備すること。現在は生徒5、6人にコンピュータ1台の割合で、3人に1台までには至っていないが、黒板を電子黒板にするなど、先生のICT活用能力は年々上がってきているという。デジタル面が得意ではない先生への支援として、ICT支援員の配置やチームティーチング(複数人の教師がチームを組んで授業を行う形態)で生徒に教えていくことが大切になるだろう、と語った。

プログラミング教育のいま

また、プログラミング教育における現在の課題として、小規模な自治体の取り組みが遅れているほか、そもそもどのようにプログラミングを活用したら良いのか分からない、という意見も多く聞かれるという。折笠氏は、情報不足な点に関しては各種ポータルサイトでの情報発信もある、と呼びかけた。

未来の学びコンソーシアム」では、教科による実践事例を掲載している。ぜひ授業に活用し、プログラミングの模擬授業をやってみてほしいとのこと。また、2020年度からの小学校プログラミング教育の実施に向け、小学校の取り組みを支援する「プログラム教育推進月間(通称:みらプロ)」も併せてチェックしてほしい。

文部科学省・総務省・経済産業省が連携して立ち上げられた「未来の学びコンソーシアム」

2020年度からの小学校プログラミング教育の実施に向け、各小学校での取り組みを支援する「みらプロ」

情報モラル教育も必須に

これほど多大な情報に手軽にアクセスできるようになると、情報モラル教育についても学んでいかなくてはならない。内閣府が2018年に公表した青少年のインターネット利用環境調査では、高校生は97%、中学生は70%、小学生5年生以上は45%がスマートフォンを使ってインターネットに接続していることがわかった。SNSなどのコミュニティサイトで犯罪被害に合う割合も過去10年弱で2倍に増えている。自画撮り被害も増えており、その半数は中学生とのこと。

また、「小学生が自分でブログを作ったという設定で危険箇所はどこか」という調査を小学校で行ったところ、「ブログのコメント欄で、住所を教えてと聞かれる」「自宅近隣の写真が掲載されている」「学校やクラス、自分の名前が特定される投稿」などがその正解だったが、小学生の正解率は12.8%しかなかったという。インターネット利用の低年齢化は進んでおり、早期の情報モラル教育が、今後より必要になってくるだろうと語った。

プログラミング教育の実現に向けて

折笠氏は、これからのプログラミング教育の在り方として、授業でICTを活用することにより、自分の考えたことを皆の前でプレゼンするなど、現実社会の仕組みと学校があまり乖離しないようにしていきたい、と語る。また、今後ICTはイノベーションがもたらす社会の変化のマストアイテムになってくるとした上で、教師に対する意識調査によれば25%の教育団体が遠隔授業をやってみたいという。「やってみたい」から「必ずできる」になるようにしていきたい、と折笠氏は講演を締めくくった。

* * *

今回、2つの講演を聴講したが、特に利根川氏、平井氏のトークセッションでは、自分が勝手に作っていたプログラミングに対するハードルが、どんどん下がって行くのを感じた。プログラミング(論理)的思考を育成するための「アンプラグドプログラミング」「ビジュアルプログラミング」「フィジカルプログラミング」を実際にやってみたいと思った。社会の仕組みを知るプログラミング教育。ぜひ、あなたもこの機会に始めてみませんか。

著者
望月 香里(もちづき・かおり)
元保育士。現ベビーシッターとライターのフリーランス。ものごとの始まり・きっかけを聞くのが好き。今は、当たり前のようで当たり前でない日常、暮らしに興味がある。
ブログ:https://note.com/zucchini_232

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