携帯動画配信、その最新事情

2008年11月4日(火)
冨谷 直輝

今後の携帯動画動向と現在の活用事例

 携帯動画を利用する大きなメリットは、紙媒体と連動できるというところです。QRコードを印刷物に載せるだけで、何百~何万枚もの広告物が携帯動画プロモーションのアクセスツールに成り代わります。

 そのような利便性を考えた場合、先の事例のような認知度による障壁もあとわずかで一掃されるに違いありません。これまでのIT全体の普及までの道のりを思い出せば、インターネットという仮想空間が今や当然のように存在し、数年前まで実現が難しいとされていた動画配信は今やPCサイトでは必須アイテムとなり、そして携帯へ移行してきているのです。

 同じようにキャリア側にある制限も時代のニーズに合わせてスペックアップしていくことは当然であり、これも早い段階で解決されるものと思われます。

 つまり、今後携帯動画を使って情報を配信するという行為自体、ごく当たり前のツールとして普及するということも確かなのです。これからの携帯サイトにはビジュアル力の高い視覚的なインパクト、動的な情報ツールが必須になってくるでしょう。

 そんな中、実際に動画を導入し、効果的に活用されている企業や個人店等も増えてきています。

携帯動画の有効活用

 ここでいくつかの活用事例をご紹介致します。

 ブライダル業界では、ハワイ挙式をプロデュースする企業が、新しい結婚報告ツールとして、報告ハガキから挙式動画が携帯で見られるサービスを提供しています。(参考:ブライダル de DOGA(http://www.keitai-v.biz/sc/))

 美容室/エステティック業界では、ある美容室が好評なヘッドスパとフェイシャルマッサージに特化した動画を携帯で配信しています。駅前等で配るチラシ等に掲載することで効果を出しています。

 また、店頭に並んでいるたくさんのスノーボードDVDの中で、パッケージデザインだけでは購入喚起は起こしにくいことから、店頭のポップやパッケージにQRコードを貼(は)り付け、その場でサンプル動画を見ることができる携帯プロモーションを展開しています。

 では、QRコードを掲載すれば人は携帯動画を視聴するのか。もちろん、そうではありません。そもそもQRコード自体はすでに認知度も高く、目新しいものではないからです。ただ紙媒体に掲載されているだけでは、読み込もうという行為へ喚起することはできません。このQRコード自体を引き立たせ注目させ、ここから携帯動画が配信されることをセンスとインパクトで強くアピールしなくてはユーザーに携帯動画を視聴させるまで喚起できないのです。

 つまり、ユーザーが携帯動画をダウンロードしたくなるように入り口であるQRコード自体の仕掛けにもっと工夫を凝らすべきだと考えます。ここに気づかずに効果が出せなかったことで、携帯動画の可能性に疑問を持たれる方も多かったと思います。

 携帯動画配信というその技術の素晴らしさにおぼれて、本来のプロモーションの原点を忘れてしまってはどんなに高度な技術も台無しです。これらのツールは最終的にエンドユーザー(利用者側)の視点に立って考えられなければ、全く意味をなさないということを心がけましょう。

 これらの事例のように、携帯動画単体ではなく、さまざまな媒体と組み合わせて上手に活用することによって、情報ツールとしての大きな役割を果たすことができ、動画ならではのインパクトある伝達力を最大限に生かすことが可能になるのです。

 次回はモバイル動画配信の仕組みやASP型配信サービスについて紹介します。

 また、本連載の執筆にあたって、株式会社Xenomedia Blend(ゼノメディアブレンド)(http://www.xenomedia-blend.com/)の池辺 政人氏から、データのご提供や取材に多大なご協力をいただきました。

 なお、本稿の執筆にあたって、以下を参考にしました。

「ケータイの動画コンテンツ視聴に関する調査~ケータイで動画コンテンツを見る頻度、時間は半数弱が増加~|ネットリサーチ(モバイルリサーチ)ならネットエイジア」(http://www.mobile-research.jp/investigation/research_date_080523.html)(アクセス:2008/10)

「モバイル動画サイト成功の鍵はSEOの徹底!/モバイル動画に関する調査 | Web担当者Forum」(http://web-tan.forum.impressrd.jp/e/2008/02/08/2622)(アクセス:2008/10)

株式会社イオス
ディベロップメントDiv. プロデューサー。1977年東京生まれ。大手SI企業にて業務系のWebシステム開発、およびグループウェア/ワークフロー開発に従事。その後、株式会社イオスにて、モバイルサイト構築プラットフォーム「Rockbird(http://www.rockbird.jp/)」の開発ディレクションを行う。現在はさまざまなモバイルサイトのプランニング、および構築のスタイリングを手がける。http://www.e-o-s.net/

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