モバイル動画をもっと活用する

2008年11月25日(火)
池辺 政人

昨今の携帯動画のニーズ

 昨年の調査で、インターネットへのアクセス総数がPCよりも携帯の方が上回ったというニュースは、みなさんご存じだと思います。

 その背景として、若年層はまだまだ高額であるPCを個人で所有できないため、時間や場所を選ばず、1人1台必ずと言っていいほど所有している携帯電話がインターネットアクセスのツールとして一気に普及したことが要因の1つしてとあげられています。

 そこで頭角を現したのがリクルート(採用)での需要です。

 多くの大学生が携帯で情報を検索するといった現在の状況に対応し、多くの企業で携帯サイトによるリクルート情報の提供を始めるようになりました。ある企業では、採用に関する情報から内定者合格者への連絡や一斉メール配信等、ほぼすべて携帯を活用されているそうです。

 そんな中、これまでにも企業紹介のPVや学生へのメッセージビデオ等、リクルート用にオリジナル映像を制作される企業が増えてきており、また学生もその企業の代表者の顔と声を生で聞けたり、先輩たちから現場の声が映像によってリアルに伝わったなど、利用価値の高いツールとして好評を得ています。

 すると、必然的に、携帯動画で配信できないかという要望が増えてきます。

 就活中の学生は授業や企業セミナーへの参加、サークル活動やバイト等で昼夜を問わず、忙しく動き回っていて、ゆっくり取れる時間はとても少ないと思われます。それでは、せっかく用意されたリクルート用映像を見る機会が少ないでしょう。

 それが携帯で見られるようになれば、空いた時間に場所を選ぶことなく視聴できるので、学生にはとっても利便性が高く、希望する企業のリクルート用動画であれば必ず視聴することでしょう。そして、携帯動画で企業PVを配信しているということで、ブランディングツールとしても効果があります。

 そもそも携帯のリテラシーが非常に高い学生にとって、携帯動画を見ることはごく当たり前の行為となっているので、携帯動画を使ってプロモーションはとても有効な方法でしょう。

これからの携帯動画の可能性

 今後、携帯動画はどう進化していくのでしょうか。

 何より携帯キャリアのインフラ、端末自体のスペックがどんどん向上していくことは間違いないので、動画配信の主流はストリーミング形式に変わっていくものと思います。そうなれば、高画質、長時間の動画ファイルをストレスなく送受信することができるようになるので、もっといろいろなコンテンツを携帯電話上で展開することができるようになるでしょう。

 NTTドコモでは、下り100Mbps超の通信が可能な高速次世代通信技術「LTE」を2010年から導入すると発表しました。この技術が導入されると、単に通信回線速度が高くなるだけでなく、より多くの情報を瞬時に処理できるようになります。

 例えば、携帯カメラで進行方向を動画撮影しながら歩いていくと、その動画に現在地の衛星利用測位システム(GPS)データや電子コンパスデータを載せてサーバーに配信(ライブ配信だと思ってください)して、それを瞬時に解析して端末に返すことができます。

 するとその携帯画面は、リアルタイム映像ナビゲーションとして機能させることができるようなります。

 今後、「携帯電話サービスの主力は動画になっていく」として、道案内や観光情報、緊急医療などの動画コンテンツを拡充すると発表しています。この先の見通しとしては2010年にハイビジョン動画の配信サービス、2015年には第4世代携帯が登場し、立体動画配信サービスなどが実現するとされています。

 また、Flash lite 3.0が全端末に普及すれば動画再生だけでなく再生後、あるいは再生しながら次のアクションを起こすことができる、インタラクティブなツールとして発展していくものと思います。

 さらに、ドコモの動画配信の公式サイトでは、完全に905i 以降の新機種に限定した動画配信サービスも多く用意され始めています。

 やはり、携帯で動画を視聴するという行為自体、携帯電話をしっかりと活用しているユーザーを中心に利用するサービスの1つだと思います。

 ですから、現状では必ずしも全端末に配信することがベストではなく、きちんと携帯動画の活用方法を理解しているユーザーに対して、そのようなユーザーが多く使用しているであろうと思われる上位機種にターゲットを絞り、クオリティーの高いコンテンツを提供することが、携帯動画配信の成功の1つなのかもしれません。

 携帯電話の動画配信システム&サービスはこれからますます高性能、高機能を装備して幾重にも進化していくでしょう。

 しかし、どんなに機能が向上しても、使用するのは人間です。それを使用するユーザーの顔がしっかりと見えていて、本当に必要とされるサービスを提供することが何よりも大切なことであると筆者は考えています。

 なお、本稿の執筆にあたって、以下を参考にしました。

「波伝説」(http://www.namidensetsu.com/)(アクセス:2008/11)

「Watcha」(http://m-tv.jp/person/watcha/index.html)(アクセス:2008/11)

「CNET JAPAN」(http://japan.cnet.com/news/com/story/0,2000056021,20382957,00.htm)(アクセス:2008/11)

株式会社Xenomedia blend
代表取締役/ビデオディレクター。独学で映像制作の技術を学び、スノーボード、サーフィンのビデオ制作を経て2007年4月にインターネットに特化した映像制作会社を設立。現在はコンテンツ制作をメインにモバイルプロモーションの企画や PC・携帯の動画配信のインフラを提供する。http://www.xenomedia-blend.com/

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