FoodTechは生活にどのような変革をもたらすのか? 食×テクノロジーが実現する可能性とは ―第7回 IoT女子会レポート
7月13日(土)、東京・秋葉原のDMM.make AKIBAにて、毎回大好評のIoT女子会の第7回が開催された。今回はキユーピー株式会社との共催による、「2030年の食生活を支えるサービスを考える! 女性限定アイデアワークショップ」だ。
イベント冒頭では、DMM.make AKIBA コミュニティマネージャー兼エバンジェリストでIoT女子会主催の上村遥子さんより、「女性の視点を活かしてIoTの世界を広げていきたい」というIoT女子会の趣旨と、「今年はFoodTech(Food×Technology)をテーマに開催していきたい」と挨拶。2019年最初の開催となった今回を含め、今後のIoT女子会への意気込みを語った。
キユーピーグループの成り立ち
はじめに、キユーピー株式会社 経営推進本部 経営企画部 事業企画チームの竹内綾子さんより、キユーピー株式会社の紹介があった。
はじまりはマヨネーズとの出会いから
1919年創業のキユーピー株式会社は、今年100周年を迎えた。創始者の中島董一郎氏が当時の農商務省による海外実業練習生として英国と米国に滞在した際に、旅先で出会ったというマヨネーズとオレンジママレード。「ぜひ日本でも広めたい」と思ったのがきっかけとなり、1925年にマヨネーズ、1932年にオレンジママレードの販売に至った。
マヨネーズやドレッシングに豊富なラインナップがあり、それらが同社の売上の多くを占めていると思われるが、実はこれらの売上は全体の3割程度。カット野菜や惣菜、卵加工品の販売など幅広く手掛け、独自の物流システムもグループ内には兼ね備えているという。
キユーピーグループが目指す未来
竹内さんは「IoTの加速により、冷蔵庫の残り具合を感知し注文を促すような機能をもった冷蔵庫が世に出てくるかも知れない」とした上で、近い将来に家電メーカーが競合になる可能性もあるのでは、と示唆。「食で笑顔をキユーピーと。」という2030年ビジョンを掲げ、お客様1人ひとりの食のパートナーとなるよう、食品だけを扱うメーカーではなく、食品に関わるモノ・コトを広く扱う「食生活」メーカーへと歩んでいきたいと語った。
「食×テクノロジー」が実現する可能性とは
続いて、上村さんより、「食とテクノロジーの関係 ~FOODTECH~フードテック2019」というテーマで発表があった。
紙から電子へ ―レシピの文化変遷
1990年頃まで、レシピといえば雑誌や書籍など紙が主流だったが、テクノロジーの発展により2000年頃からはクックパッドなど、ネットでレシピを探すようになった。ここ最近では数分間の動画で作り方まで見ることが可能となり、レシピは「読む」から「見る」へと変貌を遂げている。
世界・日本の「食」を取り巻く環境の変化
「いま、世界中でFoodTechが注目されている」という上村さん。世界の人口は増加傾向にあり、地球上の全人口の消費カロリーを満たすには食糧生産量を今より60%以上増やす必要があるという。その一方日本では、人口減や少子高齢化がさらに加速する。このような背景から、フードロスや環境問題など、世界中で個人も地球も持続可能な社会を目指すという活動が起こっていると語った。
食のサプライチェーンとテクノロジーの事例
現在では、食のサプライチェーンの問題解決に多くのテクノロジーが活用されている。上村さんから、その事例の紹介があった。これまで食べられていなかった領域の食材が増えている背景には、「来る世界的な食糧不足を懸念していることが垣間見える」と上村さんは分析する。以下、箇条書きにて紹介する。
【原料・生産】
・牛の発育や健康状態を人工知能で管理する「U-motion」
・肉の細胞から採取した細胞を培養し次世代食材とする「Memphis Meats」
・バッタに含まれる良質なタンパク質やアミノ酸を発見し、バッタを粉末食材とする「HargolFoodTech」
【加工】
・アボカドに特殊コーティングを施して水分の減少を1/3に減らし従来の2倍長持ちさせる「Apeelsciences」
・規格外商品を活用した商品展開をしている「BeautifulSmile」
【流通】
・氷が蓄積しない特殊急速冷凍技術によりフードロスを削減する「デイブレイク」
・遺伝子テストの分析データからユーザーに最適な食事を宅配する「Habit」
【消費】
・出前のイノベーションを起こしたオンラインフードデリバリーサービス「UberEats」
・車内に搭載したオーブンでロボットがピザを焼き宅配時に焼き上がりを届ける「ZumePizza」
・水を使わず材料を入れるだけの調理鍋「ホットクック」
クックパッドは、これまでに蓄積したレシピとIoT調理家電を連動し、調理の可能性を広げるサービス「Oicy」を開始。レシピ通りに配合された調味料が自動で出てくる「Oicy Taste」など、作り手の手助けをしてくれるコンセプトモデルも発表している。
また、「COMP」や「BASE FOOD」は、必要とされる栄養素が入っているという完全栄養食でもある。
世界で行われているFoodTechの事例
上村さんが最後に紹介したのは、世界のFoodTech事例だ。「豊かさが担保された持続的な食のため、様々な企業がチャレンジしている」とのこと。
・スーパーで廃棄する食材をアプリと連動し消費者をマッチングするスウェーデンの余剰食料割引アプリ「Karma」
・スーパー内に水耕栽培場があるドイツの「infarm」
・6つの道具を使ってバーチャル食事を体験できる「Project Nourished」
・アプリでサラダのバリエーションを選ぶと自動で箱に入って出てくる完全無人レストラン「eatsa」
このほかにも、食べたいものを好きなだけ食べられるが太らないという体験や、アレルギーや諸事情により食べることのできない人の満腹度を刺激するなど、これまで体験したことのない世界観を作り出すさまざまなアイデアがあるという。
アイデアワークショップ
ここからは「2030年の食生活を支えるサービスを考える」をテーマに、キユーピー株式会社が2030年に向けテクノロジーをどのように活用し、どのような食生活に関わるサービスがあったら良いか、アイデアワークショップが行われた。
①「キユーピー×テクノロジー」で思い浮かぶサービスのアイデアを出す
②参加者全員のアイデアを貼り出し、一人ずつ未来感やあったらいいなというアイデア3つに投票
③チームビルド:投票の上位7アイデアで再グループ分けし、各アイデアをブラッシュアップ
④グループごとに最終的なアイデアを発表!
最後に行われた、実演を交えたグループごとの発表では、初対面だったことが嘘かのように、会場は女子校のような和気藹々とした空気に包まれた。また、アイデアワークショップ後には懇親会が行われ、キユーピー株式会社のグループ会社が運営する「EVERYTHING SALAD青山」のサラダやキユーピー株式会社のドレッシングなどが提供された。
* * *
食は私たち人間にとって欠かすことができない。テクノロジーとの掛け合わせにより、今後個々人の食生活が楽しくなるような彩りがもたらされるだろうと感じた。また、今回のアイデアワークショップについて、竹内さんをはじめとするキユーピー株式会社から参加された方々は「2030ビジョンの実現に向けて、いろいろなアイデアをいただき参考になった」と語っていた。2019年初の開催となった今回のIoT女子会。今後のテーマとともに、次回の開催がとても楽しみである。
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