開発ドキュメントとは何か!?
「開発ドキュメントとは、読んで字のごとく、開発のときに使うドキュメントです!」
得意満面な笑顔で答えるA奈。
「そのドキュメントには何が書かれているかしら?」
「はい。顧客の要望やシステムの設計、仕様などが書かれています」
A奈は「えっへん」と胸をはった。それをみても表情を変えずにB乃が続ける。
「では何のために書くのかしら?」
「はい! 開発に使うためです!」
「…開発に使うのは、『開発ドキュメント』っていうくらいだから当然ね。じゃぁ開発中に、どういうところで使うか説明してごらんなさい」
「え〜っと、え〜っと、開発するときにプログラマの人たちが内容を確認します」
「それもあるわね。では他には?」
「え? ほかにですか? え〜っと…プロジェクトマネージャの人も内容を確認します」
「…さっきの答えとあまり変わらないわね。じゃぁヒント、システム開発に関係しているのは開発する側の人たちだけ?」
「開発するんだから、開発する人たちがいますよね…。他に、他に…」
「わからないかしら? もう一度学校に戻って教養からやり直す?」
「いえ、あそこはもう嫌です!(がくがくぶるぶる)」
「じゃぁ、もうちょっと考えてごらんなさい」
「え〜っと、え〜っと…。あ! システム開発を発注する人です!」
「そうね、開発ドキュメントが必要になる人は、開発する側だけじゃなくて、開発を依頼する側にもいるのを忘れちゃだめよ」
「は〜い」
死屍累々の現場に、何が足りない?
「さて、開発ドキュメントが必要な人がわかったところで、この現場をよくみてみましょう」
A奈は屍のようなプログラマでいっぱいの開発室の中を見渡した。各自の机の上にはさまざまな書類のプリントアウトがあり、それ以外にもモニタ上に数多くのドキュメントが開かれている。
「みなさん、いろんなドキュメントを持ってますね」
「そうね。とっても多くのドキュメントが散らばってるようにみえるわね。それぞれには何が書いてあるかしら」
「…そうですね、ほとんどがメールか、メールのプリントアウトみたいです。『この機能を入れてほしい』とか『あそこの仕様が変わりました』とか、あ〜こっちには『あの機能は入れないことになりましたので、仕様は○日にメールしたものに戻してください』とかとか。あ、こっちの人は1日前のメールのプリントアウトを見てるけど、こっちの人は今日のメールを見てます。同じ箇所の仕様なのにどっちも違う内容だ〜」
「そう。ドキュメントはたくさんあるけれど、まったくまとめられていなくて、作業がいったりきたりしている状態ね。これじゃ手戻りが多すぎて、いくら徹夜をしても終わるわけがないわ」
「ほんとにそうですね。なんでこんな状況になってるのかしら」
「…だから、私たち、開発ドキュメントの妖精の力が必要なのよ」
次のページ