KubeConでGitLabのアライアンスVPに訊いてみた
GitLabは、サンフランシスコに本社を置くベンチャー企業で、CI/CDやDevOpsを支援するツールを提供している。「本社」とは書いたものの、GitLabはすべての社員がリモートで仕事を行う企業としても知られている。固定したオフィスに社員が集まるのではなく、世界中に分散したチームが協調して働くことが基本となっている。
日本ではGitHubの知名度が高いために勘違いされそうだが、GitLabのビジネスのメインはソースコードリポジトリではなくCI/CD関連ソリューションの提供だ。アメリカの著名な調査会社、フォレスターが2019年9月に発行したレポートでも、クラウドネイティブなCIソリューションとしてGoogle、Microsoft、AWS、CircleCIなどともにリーダーとして挙げられている。このことからも分かるように、Continuous Integration(CI)の領域では高く評価されている。
GitLabは今回のKubeConにも出展しており、会場で行ったGitLabのVP of AlliancesであるBrandon Jung氏のインタビューをお届けする。同席したPR ManagerのNatasha Woods氏は、CNCFに属していた広報のスペシャリストで2019年6月にGitLabに転職しており、今回のインタビューのセットアップをしてもらった。
自己紹介をお願いします。
Jung:私はGitLabでアライアンスに関する仕事を担当しています。対象となる相手はクラウドプロバイダーからシステムインテグレーター、ソフトウェアベンダー、リセラー、VARまでです。エンドユーザーと開発以外の話は、すべて担当していると言っても良いかもしれません。私個人としてはGitLabに2年ほどいますが、その前はGoogleで8年ほどパートナー関連の仕事をしていました。さらにその前の仕事場はIBMでした。
日本では最近はGitHubがエンタープライズ企業において知名度を高めています。GitLabは似たような名前で混同されるかもしれませんね。GitLabが何をやっているのかを紹介してください。
Jung:そうですね。GitLabは「Laboratory」の部分にフォーカスしてソフトウェアを開発していますが、GitとLabを繋げた時にこんな状態になるとは、想定していなかったのも事実ですね(笑)。GitLabは、デベロッパーのためのベストなツールを提供しています。主な製品はDevOpsを実装するためのツールで、対象はRaspberry PiからLinux、メインフレームまで幅広く対応しています。GitHubがソースコードリポジトリをメインとしていることに比べると、GitLabがカバーする領域は広いと思います。特にソースコード管理、イシュートラッキング、CI/CDについては業界でもベストのツールを持っていると自負していますが、顧客はそれぞれ自分たちが使い慣れているツールを組み込んで使うこともできます。例えばJiraやJenkinsなどですね。
CI/CDソリューションということでCircleCIとも比較されますが、GitLabのSaaS版であればCircleCIとも比較の対象になると思います。我々のユーザーからの反応は、SaaS版だけではなくオンプレミスでも同じ機能を提供して欲しいというものが大半なのです。そのため同じコードベースで、SaaS版もオンプレミス版も実装しています。
GitLabのビジネスモデルを教えてください。
Jung:GitLabのビジネスは、オープンコアモデルを中心にしてソフトウェアのライセンスをサブスクリプションで購入してもらうことで売り上げを出しています。ソリューションとしてはSaaSでの提供とオンプレミスでのライセンス提供という2つの形態があり、どちらも同じソースコードで実装されています。
GitHubもGitHub.comとGitHub Enterpriseの2本立てという部分では似ていますね?
Jung:しかしGitHubの場合はSaaS版とEnterprise向けのソフトウェアが同じではないので、その部分が異なりますね。往々にして、SaaS版で実装された機能がオンプレミス版では使えないということが起きているようです。一方GitLabの場合は、SaaS版とオンプレミス版を同じコードベースで実装しており、そのようなことはありません。同じコードベースで実装されていることの利点は、同じ機能がどちらのプラットフォームでも同時に利用可能であるということで、これこそが我々の顧客が求めていることに他なりません。
ユーザーに対してはサブスクリプションモデルで課金される形ですか?
Jung:そうです。オンプレミスの場合はライセンスを販売する形です。SaaSであれば実行したビルドの無料時間以降は有償になりますが、オンプレミスの場合は実行時間は関係ありません。ライセンスだけで無制限にビルドを実行できます。GitLabのソフトウェアはオープンコアで、コアの部分はオープンソース、付加価値の部分はプロプライエタリというものですが、ライセンス自体は「ユーザーベースオープンコア」と呼んでいるもので、非常にシンプルです。
これはユーザーのタイプによって必要とされる機能を分け、その機能が誰にとって必要であるのか? これによってどのライセンスに組み込まれるのか? これが変わるというものになります。まずユーザーを3つのタイプに分けます。最初はデベロッパー、次にビジネスマネージャー、そしてセキュリティ責任者(CSO、Chief Security Officer)です。GitLabが開発し提供する機能のうちでデベロッパーが使うものであれば、それはどのライセンスでも利用できる無償の機能になります。次にその機能がビジネスマネージャーにとって必要なものであれば、それは有償の機能として提供されます。そして最後にその機能がセキュリティを担保するために必要なのであれば、それは「Ultimate」と呼ばれるもっともハイエンドなライセンスのために実装されることになります。
GitLabでのライセンスで言えば、SaaSであればGold、オンプレミスであればUltimateということですね。
Jung:そうです。
最後に日本でのビジネス展開について教えてください。GitLabはすべてリモートで仕事をするユニークな企業ですが、それは日本でも同じですか?
Jung:基本的には同じであることが好ましいと思っていますが、日本からの要望があれば対応していくことになると思います。逆に質問したいのですが、日本でのビジネスには何が必要だと思いますか?
日本の企業ユーザーは、外資系のITベンダーに対しては日本にちゃんとした拠点を持つことを要求しがちであると思いますね。電子メールのアドレスしか書かれていない名刺は、企業を不安にさせるかもしれません。
Jung:そういうニーズがあるのは理解しています。日本でのビジネスにとって最優先は、まず日本にサポートなどのリソースを持つことだと思っていますが、それは我々のような外資系ベンダーにとって難しいことですね。しかし日本のユーザーがGitLabにとって重要であることは確かなので、そこに関しても順次進めていければと思っています。
CNCFから移ってGitLabの人になったNatashaにも聞きたいのですが、GitLabはどんな会社ですか?
Woods:あなたも知っているようにCNCFはKubernetesから始まった組織で、そこでの仕事はとてもエキサイティングでした。PR Managerとしては非常にやりがいのある仕事だったと言えます。しかしGitLabもオープンでトランスペアレンシーな会社として、これからもっと成長することを目指しています。日本も韓国も中国も重要な市場ですし、これからどんなエキサイティングなことができるのか、わくわくしています。企業としての特徴は実はちゃんとハンドブックの形でまとめられているので、外部からも理解してもらいやすいのではと思います。こういうハンドブックをちゃんと書いておくというところにも、GitLabのオープンネスが表れていると思いますね。
日本ではどうしてもGitHubが先行している関係で、GitLabはソースコードリポジトリがビジネスのメインと誤解されがちなである。しかし冒頭でも紹介したように、フォレスターのリサーチによればCIの領域でGitLabは高く評価されており、SaaSとオンプレミスの両方で同じコードベースでソリューションを提供しているという部分でも、非常にユニークなベンダーである。最後に紹介したハンドブックも、対外的な広報の手段というレベルを超えた内容が満載で、ソフトウェアをベースにしたビジネスを展開したいという日本企業には、一読を強くお勧めしたい。これからのGitLabの日本での展開にも注目したい。
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