連載 [第5回] :
  月刊Linux Foundationウォッチ

日立とみずほがサプライチェーンファイナンスの実証実験を開始、LFが「オープンソースの管理と戦略」トレーニングプログラムを発表

2021年2月26日(金)
吉田 行男

こんにちは、吉田です。今回は、2020年12月から2021年1月にかけてLinux Foundationから発表されたリリースから、いくつかの話題をピックアップして紹介していきます。

日立とみずほがブロックチェーン活用した金流・商流・物流の
一体管理とサプライチェーンファイナンスの実証実験

Linux Foundationは、2020年12月にエンタープライズ向けのブロックチェーンコミュニティであるHyperledgerプロジェクトにBSOS、EDF、JD Digits Technology Holding Co., Ltd,.を含む10社が新たに参加したことを発表しました。また、日立製作所とBSOSが認定要件を満たしたことから新たにHyperledger Certified Service Providers(HCSP)に加わり、合計20社になったと発表しました。

【参照リリース】HyperledgerにEDFとJD Digitsを含む10社の新メンバーが加盟
https://www.linuxfoundation.jp/press-release/2020/12/hyperledger-welcomes-10-new-members-including-edf-and-jd-digits/

このように適用の広がりを見せるブロックチェーンを使用した実証実験を日立製作所とみずほファイナンシャルグループ(以下、みずほ)が、みずほ銀行・みずほ情報総研・Blue Labと共同でブロックチェーン技術を活用した物流業界の輸配送代金の早期資金化に関する実証実験の開始を発表しました。

【参照リリース】日立とが、ブロックチェーン技術を活用した金流・商流・物流の一体管理とサプライチェーンファイナンスの高度化に関わる実証実験を開始
https://www.mizuho-fg.co.jp/release/20201228release_jp.html

現在、物流業界ではドライバー不足や労働環境の整備、煩雑な帳票管理の解決を目指す動きが加速し、アナログ中心の見積・受発注管理、配車・運行管理業務、請求管理等をデジタル化する機運が高まっています。さらに、今般の新型コロナウィルス感染拡大の影響を受け、運送会社の資金繰りが喫緊の課題であり、輸配送代金の早期資金化は、物流業界のさらなる発展に寄与する重要なテーマになっています。

このような背景のもと、物流業界では荷主から受注した後、複数の運送会社に運送事業を委託する多重構造の商流が存在しており、この実証実験を通じて、物流データと連携したファイナンス提供を行い、輸配送代金の早期資金化の実現を目指しています。

これまでも日立とみずほは、サプライチェーン領域におけるブロックチェーン技術の活用促進と新規事業の創出に向け、共同で検討を重ねてきました。ブロックチェーン技術を活用して、リアルタイムでの真正性を確保した取引情報をもととする、高度なサプライチェーンファイナンスの実現を目指しています。

具体的には、日立のLumadaで開発を進めるサプライチェーン決済プラットフォーム(図1)上で、みずほが開発を進めている新たなファイナンス決済スキーム(図2)を金融付加価値機能として提供することを進めています。

図1:サプライチェーン決済プラットフォーム

図2:新たなファイナンス決済スキーム

また、日立は本プラットフォームの開発を進め、今後、金融以外の業種とのサービス連携も含め幅広い展開を検討しています。みずほは、新たなファイナンス決済スキームの確立に向け、技術的側面以外に法律・会計等に関しても整理し、物流業種以外の業種へのニーズ調査も含め、ビジネス化に向け検証を実施して2021年度内のサービス開始を目指しています。

このように、Linux Foundationがホストするプロジェクトが実ビジネスのプラットフォームとして採用されることは、参加している企業にとってはモチベーションの上がる出来事です。また、社会の発展に貢献することにもなり、これからもこのようなプロジェクトが増えていくことを望みたいと思います。

Linux Foundation「オープンソースの管理と戦略」
トレーニングプログラムを開始

Linux Foundationは2021年1月12日、組織内の管理職や技術スタッフにオープンソースのベストプラクティスを紹介する新トレーニングプログラム「Open Source Management & Strategy (オープンソースの管理と戦略)」を発表しました。

【参照リリース】Linux Foundation「オープンソースの管理と戦略」 トレーニングプログラムを開始
https://www.linuxfoundation.jp/press-release/2021/01/open-source-management-strategy-training-program-launched-by-the-linux-foundation/

このプログラムは7つのコースで構成されており、経営者、管理者、ソフトウェア開発者、エンジニアが組織内で効果的なオープンソース プラクティスを構築するための基本的な概念を理解・説明できるように設計されています。また、オープンソース プログラム オフィス (OSPO) 作成方法の説明を含むなど、オープンソースの効果的なプログラム管理を任せられたリーダーにも役立つ内容となっています。

なお、プログラムはコースごとに区分されているため、受講者は各自に関連するコースのみを選択できます。コースは以下の通りです。

  • LFC202―オープンソース イントロダクション:
    オープンソースとオープン スタンダードの基本的なコンポーネントについて
  • LFC203―オープンソース ビジネス戦略:
    さまざまなオープンソース ビジネスモデルと、それぞれの実践的な戦略や方針を策定する方法
  • LFC204―効果的なオープンソース プログラム管理:
    効果的なOSPOを構築する方法と、それを運営するために必要なさまざまなタイプの役割と責任
  • LFC205―オープンソース開発プラクティス:
    健全なオープンソース プロジェクトにおける継続的インテグレーションとテストの役割
  • LFC206―オープンソース コンプライアンス プログラム:効果的なオープンソース ライセンス コンプライアンスの重要性、オープンソースを安全で効果的に消費できるようにするためのプログラムとプロセスの構築方法
  • LFC207―オープンソース プロジェクトとの効果的なコラボレーション:
    アップストリームのオープンソース プロジェクトと効果的に連携する方法、プロジェクト コミュニティとの作業から最大の利益を得る方法
  • LFC208―オープンソース プロジェクトの作成:
    新しいオープンソース プロジェクトを作成する理由と価値、新しいプロジェクトを立ち上げるために必要な法的プロセス、業務プロセス、開発プロセス

今後、オープンソースが活用される場面は増えていくことが考えられます。前回も紹介したように「OpenChain 2.1」がISO/IEC 5230:2020で国際規格として承認されたこともあり、サプライチェーンの中でのオープンソースの取り扱いが重視される中、社内で「オープンソースの管理と戦略」に関わる人材が多く求められることになります。

オープンソースが従来のような一部の開発者だけのもののように考えているだけでは、ビジネスが進まない状況になっていくことになりますから、1人でも多くこのようなカリキュラムを受講し、オープンソースの管理や戦略を立案できるエキスパートになってもらえればと思います。

2000年頃からメーカー系SIerにて、Linux/OSSのビジネス推進、技術検証を実施、OSS全般の活用を目指したビジネスの立ち上げに従事。また、社内のみならず、講演執筆活動を社外でも積極的にOSSの普及活動を実施してきた。2019年より独立し、オープンソースの活用支援やコンプライアンス管理の社内フローの構築支援を実施している。

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