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連載 [第6回] :
  月刊Linux Foundationウォッチ

Linuxシステムの管理スキルを学習する「Linuxシステム管理入門」を開始、Docker社がDocker Hubのソースコードの一部をCNCFに寄贈、ほか

2021年3月26日(金)
吉田 行男

こんにちは、吉田です。今回は、2021年2月にLinux Foundationから発表されたリリースから、いくつかの話題をピックアップして紹介していきます。

Linuxシステム管理に必要なスキルとプロセスを学習する日本語のオンラインコース「Linuxシステム管理入門」を開始

Linux Foundationは2月18日、日本語のオンライン講座「Linuxシステム管理入門(LFS201-JP)」の提供を開始しました。このコースはLinuxシステム管理に必要なスキルとプロセスを学習する「Essentials of Linux System Administration(LFS201)」の日本語版で、Linuxシステム管理者認定試験「Linux Foundation Certified System Administrator」で求められる知識領域をカバーしており、学習から認定試験までを日本語で受けられることになります。

【参照リリース】Linuxシステム管理に必要なスキルとプロセスを学習する日本語のオンラインコース「Linuxシステム管理入門」を開始
https://www.linuxfoundation.jp/press-release/2021/02/japanese-version-of-essentials-of-linux-system-administration-now-available/

このコースは、ITの初心者やLinux以外のOSを使用した経験があり、Linuxシステムの管理に携わりたい技術者を対象としています。多くのクラウドインスタンスの基礎として機能するLinuxの管理について理解することはキャリアアップをめざす際に役立つほか、クラウドエンジニアにも多くのメリットがあります。

学習内容は、3つの主要なLinuxディストリビューションファミリー(Red Hat、SUSE、Debian/Ubuntu)のいずれかを実行しているLinuxシステムの管理、設定、アップグレードする方法について学ぶことができます。また、本番環境のLinuxインフラストラクチャを効率的に構築および管理するために必要なすべてのツールと概念についても学ぶこともできます。

また、オープンソース関連の求人とキャリアの動向に関する調査によると、新型コロナウイルス感染症の影響で求人は減少したものの、37%の採用担当者が(調査時より)今後6ヶ月間でスキルのあるITプロフェッショナルを雇用したいと回答しました。中でも、Linuxは2020年採用担当者の間で最も需要の高いスキルであり、74%がLinuxの経験を持つ人材を求めています(続くクラウド/コンテナ分野は69%)。このように、求人ニーズの高い人材を育成することは大いに意義のあることだと言えると思います。

LF Energy、ソニーコンピュータサイエンス研究所と提携しオープンソース マイクログリッド プロジェクトを発足

Linux Foundationがホストする団体であるLF Energyは、ソニー株式会社の子会社である株式会社ソニーコンピュータサイエンス研究所(ソニー CSL)とともに、再生可能エネルギーのピアツーピア配電を自動化するためのマイクログリッドイニシアチブ「Hyphae」を2月16日に発表しました。

【参照リリース】LinuxLF Energy、ソニーコンピュータサイエンス研究所と提携しオープンソース マイクログリッド プロジェクトを発足
https://www.linuxfoundation.jp/press-release/2021/02/lf-energy-partners-with-sony-computer-science-laboratories-to-launch-open-source-microgrid-project/

気候変動や自然災害の今後の影響に対応するためにエネルギー資源やインフラがますます課題を抱える中、Hyphaeはマイクログリッドの耐障害性を高められるとしています。地域で発電された再生可能エネルギーを自動的かつ効率的に直流グリッドで配電するソニー CSLの既存のソフトウェア「Autonomous Power Interchange System(APIS)」を交流グリッドに対応させることで実現をめざしています。耐障害性を備えたピアツーピアのマイクログリッドエネルギー取引では、最も遠隔地にあるコミュニティでも、大規模な発電所や配電網に接続することなく、エネルギーを自律的に蓄電・配電できるようになります。

世界が耐障害性と柔軟性に優れたマイクロ グリッドの開発・構築を競う中で、Hyphaeのようなオープンソースの自動化されたマイクロ グリッド コントローラーとピアツーピア取引プラットフォームは、多くの関係者のコスト負担を軽減しながら、より迅速なイノベーションを可能にします。ソニー CSLとの提携により、LF Energyは自己完結型でオフグリッドでも運用でき、電力会社の管理下にある配電網に接続もできる、初の交流および直流対応で相互運用可能なマイクロ グリッドを構築するという目標に近づきました。

Docker社、Docker Hubのソースコードの一部を「Docker Distribution」としてCloud Native Computing Foundationに寄贈

米Dockerは2月4日、「Docker Distribution」をLinux FoundationのCloud Native Computing Foundation(CNCF)に寄贈したことを発表しました。

【参照リリース】Donating Docker Distribution to the CNCF
https://www.linuxfoundation.jp/press-release/2021/02/lf-energy-partners-with-sony-computer-science-laboratories-to-launch-open-source-microgrid-project/

いわゆるDockerコンテナレジストリのサービスは、現在多くの企業や組織が社内で、あるいはサービスとして提供されています。これらの多くは「Docker Distribution」のコードをベースにしていますが、それらの多くは個別に機能拡張が行われ、アップストリームに反映されていないことが判明しました。

そこで、このプロジェクトを明確に業界全体での共同作業とするため、Docker社はKubernetesやContainerdなど多くの成功した共同作業プロジェクトの本拠地であるCNCFに寄贈することにしました。

CNCFでは、すでにこれを「Distribution」という名称のサンドボックスプロジェクトとして受け入れていますが、成熟度が高いことからすぐに「インキュベーション」に昇格するとみられています。また、名称も「Docker Distribution」から「Distribution」に変更され、「Apache License 2」ライセンスで公開されています。

このように混乱している状況から脱することにより、今後より積極的なコントリビューションが行われていくことが期待されています。

Linux FoundationとGoogle、Linuxカーネル安全性強化に向け専任担当を起用

Linux FoundationとGoogleは2月24日、Linuxカーネルの安全性にフォーカスするためにフルタイムの開発者2名(Gustavo Silva氏とNathan Chancellor氏)を起用する資金の設立を発表しました。

【参照リリース】Google Funds Linux Kernel Developers to Focus Exclusively on Security
https://www.linuxfoundation.org/en/press-release/google-funds-linux-kernel-developers-to-focus-exclusively-on-security/

Chancellor氏は、4年半にわたってLinuxカーネルの開発に携わり、2年前にはLinuxカーネルをClangおよびLLVMコンパイラツールで構築するためのClangBuiltLinuxプロジェクトでLinuxのメインラインへの貢献を始めました。今後は、Clang/LLVMコンパイラで発見されたすべてのバグをトリアージして修正することに集中し、この作業を継続的にサポートするための継続的インテグレーションシステムの確立に取り組むことになります。

Silva氏は現在、フルタイムでLinuxのセキュリティに取り組んでおり、長さゼロの配列や要素数1の配列のすべてのインスタンスをFlexible-Arrayメンバーに変換することで、いくつかのクラスのバッファオーバーフローを解消する作業を進めています。さらに、バグがメインラインに到達する前に修正することにも積極的に取り組むほか、脆弱性のクラス全体を遮断する防御メカニズムの開発にも積極的に携わっています。

Silva氏は2010年に初めてカーネルパッチを送り、現在はKSPP(Kernel Self Protection Project)のメンバーとして活躍しています。2017年以降、常に最も活発なカーネル開発者のトップ5に名を連ねており、メインラインで2,000以上のコミットを行っています。

Linux FoundationのDavid A. Wheeler氏は「Linuxカーネルのセキュリティを確保することは、現代のコンピューティングとインフラの重要な部分です。私たちはChancellor氏とSilva氏のLinux カーネル セキュリティ開発作業を支援してくれたGoogleに感謝します。また、Linuxカーネルを共同で世界的に成功させてくれたすべてのメンテナ、開発者、組織にも感謝します」と述べています。

Linux FoundationのOpen Source Security Foundation(OpenSSF)とLaboratory for Innovation Science at Harvard(LISH)は最近、オープンソース貢献者調査レポートを発表し、大規模に普及しているLinux OSを含むオープンソースソフトウェアのセキュリティに関する追加作業の必要性を指摘しました。Linuxは2万人以上のコントリビューターによって支えられており、2020年8月現在、100万回のコミットが行われています。何千人ものLinuxカーネル開発者がおり、その全員がセキュリティを考慮して作業を行っていますが、今回のGoogleによる2人のフルタイムLinuxセキュリティメンテナの資金提供は、オープンソースソフトウェアの持続可能性におけるセキュリティの重要性を示しています。

OpenSSFはマイクロソフト、Google、GitHub、IBM、Red Hat、VMwareなどをはじめとする企業により2020年8月に設立された団体で、OSSのセキュリティを向上させる業界横断的な連携することを目的としています。また、2020年10月には、安全なソフトウェアを開発するための無料トレーニングや認定プログラムを発表しています。

このような取り組みは、Linuxカーネルのセキュリティが確保されることで世界中のシステムが安定して稼働できるようになることに繋がるため、とても重要です。

2000年頃からメーカー系SIerにて、Linux/OSSのビジネス推進、技術検証を実施、OSS全般の活用を目指したビジネスの立ち上げに従事。また、社内のみならず、講演執筆活動を社外でも積極的にOSSの普及活動を実施してきた。2019年より独立し、オープンソースの活用支援やコンプライアンス管理の社内フローの構築支援を実施している。

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