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  インタビュー

スピリットベンチャー宣言のもと「学び、成長する人を後押し」を合言葉に組織ぐるみでの人材育成を推進

2021年7月20日(火)
工藤 淳

国内でも屈指のネットワーク企業~GMOインターネットグループの中核企業であり、インターネットインフラ事業を中心に、インターネット広告やメディア事業などを幅広く展開するGMOインターネット株式会社。同社では最先端のテクノロジーを常に取り入れながら、市場のニーズや社会の変化に即応したサービスを提供するため、「自分ごととして、自分のサービスを育てるマインドを持ったエンジニア」を求めている。開発・研究部門のリーダーであり、新卒・中途人材の採用や教育も手がけるお2人に、同社の必要とする人材像や育成、働き方で重視しているポイントなどを伺った。

欲しいのは、自ら成長する力や
新しい技術へのアンテナが高い人

まだインターネットの黎明期だった1995年に事業を起ち上げ、現在はわが国有数のインターネット企業として知られるGMOインターネット株式会社。そのインフラサービスの利用数は、すでに2019年時点で1000万件を突破。現在までに10期連続で増収・増益の2桁成長を続けている。そうしたビジネスの伸びを背景に、同社では常に「人手が欲しい」状態が続いている。

同社ではリモートによる採用面接や動画コンテンツによる会社説明など、オンラインへのシフトをかなり早い時期から進めてきたこともあり、コロナ禍が始まった昨年以降の求人応募数は急速に増加していると、システム本部 UXデザイン開発部長の安藤雄飛氏は語る。

「全体的な応募者数もかなり増えていますし、特に新卒では情報アンテナの高い学生が来てくれている印象があります。また中途採用では、現在の勤務先がコロナ禍への対応が遅れていることに不安を感じて、転職を考えているケースも増えています。具体的な事業への関心としては、やはり自社で開発している、自社サービスを展開している点に魅力を感じてくれている方が多いですね」。

GMOインターネット株式会社 システム本部 UXデザイン開発部長 安藤雄飛氏

これに対して、同社が求める人材像はどうだろうか。安藤氏は「自ら成長する力や環境に適応する能力=例えばコロナ禍で、勤務環境が突然オンラインに変わっても、これまでと変わらないコミュニケーションが維持できる。また、そういう変化に瞬時に順応できる点を重視している」と言う。

同社には、国内最大級のドメイン公式登録サービス「お名前.com」(登録実績2,500万件)のように20年以上続いているサービスもある。これらを今後も確実に継続していくためには、技術力だけでなく業界やサービスそのものを熟知して、長く取り組んでいける人材が欠かせないと安藤氏は説明する。

一方、データサイエンスやブロックチェーンをはじめ、自社のビジネスへの最先端技術の導入・応用を手がける、次世代システム研究室 チーフクリエイター 兼 デベロッパーリレーションズチームの稲守貴久氏も「当社で求めるのは、自分ごととして自分のサービスを育てるマインドを持っている人」だと強調する。

「当社の事業の特徴は、すべて自社で開発したサービスを展開している点で、そこに自分の活躍の可能性を見いだせる方ですね。特に次世代システム研究室に限って言えば、最先端技術の研究・応用なので、常に新しいことにチャレンジしている人。実際、最近はデータサイエンスなどの教育・研究機関から転じてきた方も少なくありません」(稲守氏)。

GMOインターネット株式会社 次世代システム研究室 チーフクリエイター 兼 デベロッパーリレーションズチーム 稲守貴久氏

社員のコミュニケーション重視で
出社とリモートをバランスよく配分

コロナ禍を機に多くの企業がリモートワークに移行したが、GMOインターネットは、日本国内で初の感染者が確認された2020年1月に、早くもリモートワークへの移行と新卒研修のオンライン化を決定した。同社では2011年の東日本大震災以降、BCPの観点からリモートワークの活用に取り組んできた経緯があり、突然のコロナ禍にも即応できたという。

「例えば、年に一度は在宅勤務をしてみるなど、国内での感染者発生とほぼ同時に移行できたのは、そうした毎年の蓄積が効いたと思っています。またこの先コロナ禍が収束した後も、週に2日のリモートワークと、出社を組み合わせる方針です」(稲守氏)。

このアフターコロナを「出社とリモートのハイブリッド」で行うという発想は、同社のワークスタイルや仕事の仕方、組織づくりのフィロソフィーと密接につながっている。特に開発エンジニアの組織であるシステム本部では、対面勤務やオンライン/オフラインにはこだわりがあったと安藤氏は明かす。

「インターネット企業でありながら、むしろ伝統的にフェイストゥフェイスのコミュニケーションを大事にしてきた社風なのです。コロナ禍でも政府の宣言発令とは別に独自の在宅勤務体制レベルを設けて、社員のコミュニケーションを最優先に、感染状況を見ながら出社とオンラインのバランスをとっています」(安藤氏)。

人材採用でもオンラインで面談を進めながら、最終面接だけは来社してもらい、会社や業務現場の雰囲気を見て決めてもらう。また、新卒者や入社して日が浅い人には、先輩社員やメンターが一緒に出社してコミュニケーションを取るといったメリハリを大切にしているという。

教育の基本スタンスは
「自ら学び、成長する人を後押しする」

実際のエンジニア教育の取り組みについて伺ってみよう。まず新卒向けでは、ビジネスマナーや一般的な教養から始まり、GMOインターネットグループのテクノロジーを全体研修で学ぶ。その後、グループ各社ごとにOJT研修が用意されている。中途採用は、ほぼ全員がアプリケーション開発の経験者なので、即戦力として現場に入るケースがほとんどだ。

基本的に、同社では教育に対して「学び、成長する人を後押しする」というスタンスを取る。このため、技術参考書の購入費用を補助する、外部のセミナーに業務時間内に参加させるといった支援も手厚く制度化されていると安藤氏は語る。

「その他、社内コミュニケーションとか他部署との関わり方のような、ネット検索では得られない知識や考え方も、部署ごとに細かく教育します。またエンジニアリングスキルはOJTが中心ですが、これも画一的にカリキュラム化するのではなく、当人がやりたいと思ったことを周囲が後押ししてあげるスタンスです」(安藤氏)。

これを受けて稲守氏も「会社としては、自ら手を挙げる文化を育てていきたいと考えています。そのため新卒にも、その意欲を育て、支える仕組みを意識して整備してきました」と言う。複数の教育や支援制度が設けられ、自分の関心や課題に合わせてこれを利用した上で、もし困ったことがあればいつでも上司や先輩に相談できる仕組みだ。

こうした教育風土から、社内の勉強会なども自然発生的に生まれてきている。GMOインターネットグループでは、デベロッパリレーションの一環として年に1回大規模な技術カンファレンス「GMO Developpers Day」を開催。ここで登壇者の発表を聞いて「その問題なら、あの人に聞けばわかる」といった情報が参加者に共有され、そこから新しいコミュニケーションが生まれるサイクルもでき上がりつつある。

「半年に1回は各部署の技術責任者と私たちがミーティングをして、部署ごとの課題や要望の聞き取りや調整も行っています。当社では意思決定のスピードアップのために『梁山泊経営』といって各部門に権限を委譲し、採用は各部門で行っています。その一方では、こうした部署間や技術者同士の声を集めてコミュニケーションを図ることで、グループのメリットやシナジーを出せる工夫もしています」(稲守氏)。

個々の技術よりも会社のスピリットを共有し
共に歩めるかを見る

激しく変化するインターネット業界で長く活躍していくために、エンジニアにはどんな能力が必要だろうか。安藤氏は、GMOインターネットグループの評価指針として3本の柱=「自分に与えられたミッションを高め、効率化していく意識」「新しい価値を創造していく力、革新・改革を起こしていく意欲」「人のマネジメントを通じて、組織の価値を高める能力」を挙げる。

「このいずれかを満たせれば、その人は当社のビジネスに価値を提供できます。例えば60歳を超えても現役でオープンソース開発をやっている人もいます。またその部署が若手ばかりでまとめ役がいない場合は、年長者として入ってもらう。能力さえあれば、年齢や性別は問いません」(安藤氏)。

また現在、優秀な人材は引く手あまたで、外を探しているだけでは出会えない。そこで最近では、自社の若手を欲しい人材に育てるのに注力していると稲守氏は言う。

「会社が真剣に育てていることが伝わって、退職者数も大きく減りました。ただ、やはり新しい環境や外の世界を見てみたいという人は一定数います。私たちもそうした前向きな気持ちならば喜んで送り出すし、そういう人たちはまた何年かして戻ってきてくれることが多いのです。それは、とても嬉しいですね」(稲守氏)。

この先本当に転職を考えるときに備えて、有利な言語やスキルは何か知りたいところだ。だがGMOインターネット株式会社の場合は、チームごとに使っている言語も技術も異なるため、会社としての標準や採用方針は設けていない。むしろ同社としては「すべてのサービスを自社で開発して売る」という点に大きなこだわりがあり、応募の際もその人がサービスそのものに関心があるか否かを見ると安藤氏は語る。

「当社には『スピリットベンチャー宣言』というものがあり、ここでは全員で共有すべき夢やビジョン、フィロソフィー、経営マインドなどが謳われています。当社の人材採用では、個々の言語や技術の前に、こうした会社のスピリットを共有し、実現に向かって一緒に進んでいける人が望ましいと考えているのです」(安藤)。

一方で稲守氏は「ICT業界はこの先も大いに伸びしろがあり、成長途上です。非常にエキサイティングかつダイナミックで面白い業界だけに、まだまだ人が足りません。今持っている自分の能力を活かしたいという人は、ぜひ私たちと一緒に自分の目標や夢を実現するべくチャレンジしていただけると嬉しいですね」と呼びかける。

最近では、北九州や大阪にエンジニアだけの開発拠点を起ち上げ、東京とネットワークで結ぶことで、まったく同じチーム/組織として稼働させるなど、さらに多様なワークスタイルの追求も急ピッチで進めているGMOインターネット株式会社。自分の新しい可能性や実力を試してみたいというエンジニアは、同社の今後の動向に注目してみてはどうだろう。

フリーランス・ライター兼エディター。IT専門出版社を経て独立後は、主にソフトウェア関連のITビジネス記事を手がける。もともとバリバリの文系出身だったが、ビジネス記事のインタビュー取材を重ねるうち、気がついたらIT専門のような顔をして鋭意お仕事中。

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