「富山への愛」から生まれた事業所ならではの自由闊達な雰囲気と抜群のチームワークが自慢(後編)
働き方改革やダイバーシティへの関心が高まる中、IT業界でも東京などの大都市を離れ、より生活環境のよい地方を選択する人が増えている。そうしたU/I/Jターン組や現地採用の動きが盛んになる中で、地域出身者の積極採用や地元に根差した活動を志向して活動を広げているのが、クリエーションライン株式会社の富山事業所だ。後編では、人事や教育などの現場で活躍中のスタッフに登場いただき、その活動ぶりや事業所への思いを語っていただいた。
●クリエーションライン株式会社 富山事業所
https://twitter.com/cl_toyama
●前編はコチラ↓
https://thinkit.co.jp/node/19354/
冒頭の画像は、「富山の薬売り」の原点とも言える池田屋安兵衛商店。腹痛を起こした大名に「反魂丹」を服用させたことで驚異的に回復した出来事をきっかけに全国的に有名になったとのこと。
人事採用では
「みんなと成長し、将来を目指せる人」に期待
富山事業所の人たちに話を聞いてみると、共通しているのが「職場の働きやすさ」だ。開発者を育てる姿勢や教育制度などはもちろんだが、もう1つの特徴に「各人のライフスタイルや事情に即したフレキシブルな働き方ができる」点が挙げられる。同事業所で人事(採用担当)・総務を担当する辻 佳那氏も、そうした特色を大いに歓迎している1人だ。
辻氏はこれまで医療機関やメーカーで、新卒採用や労務手続きなどの人事総務業務を経験。2021年にクリエーションラインに入社して、富山事業所のエンジニア採用や総務関連の業務を担当している。一児の母でもある辻氏が入社を決めたきっかけは、ホームページや面接を通じて感じた、あたたかい社風に惹かれたことと、同事業所のフレキシブルな勤務体制だったと振り返る。
「前職ではフルタイムで遅い時刻まで働いていましたが、子どもが小さいこともあり、勤務時間に融通がきいてプライベートを大切にできる会社で働きたいと思っていました。現在は16時までの短時間勤務なので、子供とゆっくり話したり一緒に過ごす時間ができて、すごく充実しています」
現在の辻氏のメイン業務は、人材採用だ。人事畑は長いがIT業界は初とあって新たな発見の連続だが、エンジニアならではの何ごとも深くロジカルに掘り下げて考える姿勢や熱意は、自分の仕事にも大いに参考になっているという。
「応募者の方にも、これまで作ったプログラムなどをよければお持ちくださいと伝えているのですが、実際に拝見するたび、本当にその方が好きで熱意を持って取り組んできたというのが門外漢の私にも鮮明に伝わってきます。こういう方が大勢いるのは、やはり IT業界ならではの素晴らしいところだと感じています」
現在、富山事業所における新卒のエンジニア採用で軸となっているのがインターンシップだ。富山県の運営するWebサイト「INTERNSHIP NAVI とやま」を募集に活用していることもあって、応募者も県内の高専生、大学生が多いと辻氏は語る。
「インターンに来てくださる方はもともと意欲が高く、実際にインターンシップに参加してからも当社の仕事に強い関心を持って質問してくれたり。当社では社員同士のコミュニケーションやチームプレーを重視しているので、進んでその中に入って打ち解けてくれる方が多いですね」そんな辻氏が、採用担当として最も重視しているのが「みんなと一緒に成長し、その先を目指していけること」だ。この背景には、クリエーションラインの掲げる企業理念「HRT + Joy*」があると同氏は明かす(*:HRTはHumility(謙虚)、Respect(尊敬)、Trust(信頼)の頭文字を組み合わせたもの。そこにJoy(喜び)を足し、企業理念に)。
「当社では、勉強したり技術を磨く場合も、自分だけが伸びれば良いのではなく、一緒に働く人たちと目標を共有して、ともに成長し将来を目指すという考え方を大切にしています。そうやって皆で力を合わせながら、お客様に貢献したり、世の中にプラスになる何かを提供することに喜びを感じる方を、採用担当としていつもお待ちしています」
大学生とのインターンシップを通じて得た
「熱い手応え」
一緒に目標を目指し、喜びを分かち合うメンバーを育てるとなれば、当然重要になるのが人材教育だ。同事業所のエンジニア教育を担当する十松和生氏は、カリキュラムの研修などを指導する講師として、日々新卒者や中途採用の研修生に向き合っている。
「そうは言っても自分自身、エンジニアのキャリアは2019年に事業所の起ち上げ時に入社してからで、まだ3年目に過ぎません。それが2021年7月から講師を担当することになって、これは自分に務まるのかとも思いました。それだけに、現在でもまず自分で勉強して、そこで学んだことを若い人たちに伝えるという気持ちで取り組んでいます」
国立の工業系大学院を修了して高度な専門知識はあるものの、富山事業所に入るまでは役者として舞台に上がっていたという異色の経歴を持つ十松氏。今の職場に入ってからは、先輩の2人につきっきりで指導してもらったおかげで、ここまでスキルを伸ばすことができたと振り返る。
「今でも、何回も試行錯誤しているうちに教え方が見えてくるといった経験を通じて、少しずつ着実に前に進んでいる気がしています。また教わる側の若手メンバーも、私がそうやって四苦八苦しているのを心配して逆にフォローしてくれたり、進んでいろんなことにチャレンジしてくれたり。そういう支えが、とてもありがたいと思っています」
そうした十松氏にとって、ひときわ大きな手応えを与えてくれたのが、2021年に開催された早稲田大学の学生とのインターンシップだった。これは「富山県新規事業創造インターンシッププログラム」の一環として、県内の複数の企業と早稲田大学の学生が合同チームを作って行うものだ。
今回はコロナ禍のため完全リモート開催となったが、クリエーションラインの2名と学生3名でチームを作り、富山県の地域に貢献できる新しいイノベーションの企画に取り組んだ。テーマに沿ってディスカッションを進め、最終的に県や大学の関係者の前で発表するが、良い企画ならば会社の新規事業として採用される可能性もある。
「3週間くらいかけて、かなり真剣に密度高く議論を重ねていきました。最終発表をチーム全員で行ったのですが、関係者の方から好評を得ることができました」
十松氏はこの体験を振り返って、「最後まで頑張ろうと思って続けられたのは、やはりメンバーと打ち解けて熱くなれたから」だと明かす。
「毎日いろんなことを話しながら良い関係を築いてきた積み重ねが、彼らと一緒に最後でもうひと踏ん張りしようというモチベーションにつながったと、改めて思います。これは仕事でもまったく同じであり、入社するまでは1人で何でも抱えてしまいがちな私が、まったく正反対の考え方に変わる大きなきっかけになりました」
いつかは富山事業所初のプロジェクトを
チームで実現したい
富山事業所のスタートアップメンバーの1人であり、現在はエンジニアのリーダー格として、インフラ系を中心にさまざまな開発を手がける新森寛治氏。同氏がメンバーに加わったきっかけは、現在の事業所所長である池田氏の誘いだった。2人は新卒で入った会社の同期で、その後、別々の会社に転職した後も連絡を取り合う仲だったという。
「もともと富山出身だったのが転勤で東京に4年くらいいて、いつかは富山に戻りたいなと思っていました。そこに池田さんから久しぶりに連絡をもらい、『新しい事業所を起ち上げたのでぜひ頼む』と言われて『じゃあ行きます』と。東京で家庭も持って楽しく過ごしていたので迷いもありましたが、新しいことを始める良い機会だと決めたのです」
事業所のスタート時のメンバーは、わずか3人。ゼロからのスタートで大変なことも多かったが、これから大きくなっていく期待感や、自分たちで自由にやりながら、いろいろなことにチャレンジできるワクワク感があったと、新森氏は当時を振り返る。
現在の同氏は、現役のエンジニアとして仕事をこなしながら、同時にチーム全体をまとめていく立場も担っている。
「いま事業所には9名ほどメンバーがいますが、各自で別のプロジェクトを回しているので、いずれは全員でスクラムチームを作れたらと思っています。富山事業所発のプロジェクトみたいなことをチームでやっていけたら絶対に楽しいし、そういうチャレンジを経験することでさらにチームの気持ちをひとつに固めていけると信じています」
そのためにも、今手がけている分野や技術を深掘りするだけでなく、その技術を使って自分が何をしたいのか、自分は何を作りたいのかといった目標をエンジニアには持って欲しいと新森氏は語る。
「例えば『Web アプリを作りたい』とか『自分でもインフラを組んでみたい』という気持ちがまずあって、それならこういう技術を身につけようと考えるようにすれば、それだけで知識やスキルの吸収が格段に違ってくるはずです。その意味でクリエーションラインは、自分の腕前もモチベーションもアップできる場だと思います」
「HRT + Joy」のスローガン通り、社員1人ひとりを大切にして一緒に仕事に取り組むことを楽しむ。「黙ってこれをやれ」みたいな縦社会ではない。また出社とリモートワークを自由に使い分けて、チームワークの楽しさと1人で集中する時間を選べるのは、富山事業所ならではの良さだと新森氏は付け加える。
「やりたいことをどんどんやらせてくれる場があって、自分のやってみたいことはほぼ実現できる会社だと私は思っています。そういう意味では、みずから意欲を持って自分のテーマを追求している人には、より成長しやすい職場ではないでしょうか」
* * *
●取材を終えて
「チームワーク」「成長」「楽しむ」というキーワードと想い。取材を通じて、富山事業所のメンバーがこれらをとても大事にしていることが強く感じられた。また、もう1つ重要な点は、メンバーそれぞれがしっかりと目標を持って日々の業務に取り組んでいることだ。なんとなく目の前の仕事をこなすのではなく、「なぜ」「なんのために」仕事をしているのか、明確にされていると感じた。
富山事業所はフレンドリーなメンバーに囲まれ、アットホームな雰囲気で働ける職場だ。また、富山という土地自体も風光明媚な景観と、豊富な海の幸を楽しめるという魅力がある。コロナ禍でテレワークが当たり前の世の中になりつつある今、「どんな会社で働くのか」も大事だが、「どこに住むか」も大事な要素だろう。ぜひ1度富山県を訪れ、その魅力に触れてみていただきたい。(Think IT編集部:伊藤 隆司)
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