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  インタビュー

技術者としての成長と納得できる仕事の場を求めてmanebiに集まった3人のエンジニアたち

2022年7月12日(火)
工藤 淳

「どうせ働くなら楽しく働きたい」。誰もが願っている、単純でしかも一番大きな、それなのになかなか叶えられない願望だ。とりわけITエンジニアの場合は、激しい市場競争の中で技術者としての関心やこだわりと、組織に求められる利益や効率のジレンマに悩む例は少なくない。そうした中で、「自分の納得できる仕事をしてみたい」との志を胸に、あるスタートアップに集まった3人のエンジニアがいる。「世界縁満」をミッションに掲げ、エンジニア各人の成長と支え合いを通じて楽しく仕事をしようという株式会社manebiの3人に話を聞いた。

転職の動機は「誰かに注文されたのではない、
自分たちのシステムを作ろう」

株式会社manebi(マネビ)は、オンラインで教育ができるラーニングプラットフォーム「playse.(プレース)」や派遣業界向けeラーニング「派遣のミカタ」などを提供しているオンライン学習のプラットフォーマーだ。2013年に設立され、現在は正社員約50名。他には数十名のアルバイトや委託社員が日々業務に取り組んでいる。

呉 珍喆(オ・ジンチョル)氏は、同社でVice President of Engineeringを務める自らもエンジニアの管理職だ。大阪の小さな商社で、いわゆる「ひとり情シス」を振り出しにキャリアをスタート。その後上京して独立系SIerでメガバンクや大手企業のシステムインフラを中心に手がけ、管理職としても長年活動してきた。ビジネスパーソンとして順調にキャリアを積んできた呉氏が、あえてスタートアップであるmanebiに移ろうと思ったのはなぜなのか。

「誰かに注文されて作るのではなく、どうせなら自分たちのシステムを作りたいと思っていました。それで探していたところ、manebiの『世界縁満』という世界観に共感したのです。これは全世界的に良いご縁で満ちた世界を目指すという考え方で、自分の可能性や会社の可能性が広がると感じて入社しました」

そもそも同社が教育プラットフォームにフォーカスしているのも、色々な人が学びの場や機会を得られる環境を作りたいという理念を持ち、その実現に向けて「自分らしく輝くためのプラットフォームを作る」というビジョンを掲げているからだという。では、そんなmanebiが求めているエンジニアとは、どんな人だろうか。

「やはり、今お話ししたような当社の理念に共感してもらえるかどうか。もう1つは、次々に出てくる新しい技術をキャッチアップするための学習や自己研鑽を、自分から努力して技術力を磨くという意識を持っていることが一番のポイントです。また開発チームがそれほど大人数ではないので、手取り足取り教えてもらわなくても、ある程度自走できる人の方が望ましいですね」

株式会社manebi President of Engineering 呉 珍喆(オ・ジンチョル)氏

株式会社manebi President of Engineering 呉 珍喆(オ・ジンチョル)氏

呉氏自身は、エンジニアとしてコミュニケーションスキルも大切にしていると明かす。コミュニケーションがうまく取れれば、人に助けを求めることもできるし、反対に人を助けることができる。これはそのままmanebiの経営理念である「利他心による支え合いの社会」でもある。

「もう1つは、『だから自分はエンジニアを仕事に選ぶ』という理念やこだわりを持っていること。収入だけを考えるなら他にも選択肢はたくさんありますが、あえてエンジニアでなければいけないと自分で思う気持ちですね。それがある人は決して多くはないけれど、モチベーションも高いし必ずこの先成長していけると思っています」

もちろんそうした志を持っているエンジニアを、制度や環境の面から支えるのは会社の仕事だ。そう考えて最近同社では、現場のエンジニアも参加して評価制度の見直しを進めているという。

「ひとくちにエンジニアと言っても、年数が経つにつれ対応できる領域が広がり、レベルも上がっていく。そうしたタイミングでマネジメント志向なのか、ジェネラリスト志向なのか、あるいはスペシャリスト志向なのか、自分の目指すところを見直すことになります。そのときに誰もが自分に合った選択肢を選べ、色々な働きができるようにと願って制度を作っているところです」

大企業の限界を感じて
「自分のやりたいことが提案できる環境」を目指した

現在manebiでテックリードを務める川添 裕治氏は、大手のITベンダーから同社に移ってきた経歴を持つ。新卒で同ベンダーの子会社に勤め、親会社と一緒に仕事をする日々を送ったが、5年目の2020年にmanebiに転職してきた。安定や福利厚生などを考えると、せっかく新卒で入った大手企業をやめてスタートアップに移るのは少々もったいない気もするのだが、川添氏自身にはどんな意図があったのだろうか。

「それまで非常に大きな組織にいたこともあって、自分のやりたいことが提案できるようになりたいと思ったのです。それで転職するならベンチャーやスタートアップが良いと考えて何社か面接を受ける中で、manebiの世界縁満という理念にものすごく共感できました」

川添氏は、前職で「大きい会社ではやりたいことができない」というのを痛感していた。せっかく若手が提案しても「それって、本当に必要なの?」と言われ、なかなか採用に至らない。それが続くと自分から声を挙げる人も減っていくし、仮に提案が通ったとしても「通常の業務とは別のタスクで」と言われ、実質的に手が回らないという悪循環だった。

「そういう諦めみたいな気持ちがあったので、スタートアップなら失敗を前提にいろんなことにチャレンジできるんじゃないかという期待があったし、エンジニアとしては絶対そっちの方が成長すると確信していたので、採用の知らせをもらった時にはすぐに決めました」

株式会社manebi President of Engineering 呉 珍喆(オ・ジンチョル)氏

株式会社manebi プロダクト開発部 フロントエンドテックリード 川添 裕治氏

川添氏は、自分がエンジニアをやっている理由として2つの「軸」を挙げる。1つは単純にアプリを作るのが好きということ。自分が作ったもので誰かが喜んでくれるのが嬉しいし、スキルアップする毎にできなかったことができるようになる。そこにやりがいを感じるという。そして、もう1つは「エンジニア=ものづくりは楽しいことであるはず」、という確信だ。

「前職では、エンジニアが辛い思いをしながら指示通り開発を行う現場をいくつも見てきました。そんなわけで、せっかく仕事をするのだから楽しんでやった方が良いのではと思い、どんなアプローチをすればみんなが楽しく幸せにやっていけるのか、自分なりに勉強するようになりました」

同氏は現在テックリードとして、チームメンバーのマネジメントという責任も持っている。今最も重要な課題の1つと考えているのは、各人のスキルと業務のマッチングをどう最適化していくかということだ。

「特に現在はパートナーさんの割合が多いこともあって、スキルもバックグラウンドにもかなりの差があるのです。そういう人たちが一緒にチームで仕事をしていくには、どんな方法があるかを考えています。もちろん個人のスキルに依存しない仕事の仕方もあるのですが、それをやってしまうと今度は能力のある人が腕前を発揮できず、仕事が楽しくなくなってしまうという懸念があります。色々試していますが、これが当面の課題ですね」

今後の目標としては、こうしたメンバー構成の課題も含めて、開発スタッフがいきいきと開発できるチーム作りを実現できるマネージャーを目指したいと語る川添氏。また個人の目標としては、フルスタックエンジニア的なポジションを目標にしていると明かす。

「今社内の業務ではフロントに特化していますけど、業務外ではバックエンドやインフラなどの勉強もしていて、将来的にはアプリ全体、また開発部全体をトータルに見られるエンジニアになりたいと願っています」

「人ができなかったことを叶える力」を
持ったエンジニアになりたい!

昨年manebiに入社したばかりというエンジニアの大石 陸氏は、ちょっと変わった経歴の持ち主だ。美容専門学校を卒業後、美容師として活躍していたが、立ち仕事が自分には合わず、辛くなってきたため、職業訓練校で学びなおしエンジニアの道に入ったという。

「座ってできる仕事というのが条件だったのですが、パソコンには両親の影響で子供の頃から慣れ親しんでいたので、パソコンを使う仕事をしようと思いました。そこでパソコンを使う仕事をしようと思って、最初はWebデザイナーを目指したんですが、そのうちコーディングしている方が楽しくなってWeb制作会社に入り、4年ほど働いた後、2021年3月にmanebiに入社しました」

Webデザイナーとして最初に入る会社は、初心者を育ててくれる体力があるところを選ぼうと考えて、300名くらいの規模の企業を選んだ。だがそこで色々スキルを身につけるうちに、むしろ大きいゆえの制約を感じるようになったという。

「例えば自分で新しい技術を勉強しても、必ずしもそれを発揮できる環境があるわけではありません。またそれを使ってサービスを作っても、他の人がメンテできないならやらない方が良いと言われてしまいます。それでもっと自分の担当や業務の範囲が広げられ、スキルアップできる環境に行こうと転職活動を始め、manebiに入ったのです」

株式会社manebi President of Engineering 呉 珍喆(オ・ジンチョル)氏

株式会社manebi プロダクト開発部 フロントエンドエンジニア 大石 陸氏

最初は必要に迫られて選んだ仕事だったが、経験を積むにつれてエンジニアとしてさらにステップアップしたいという気持ちは、ますます強くなってきていると大石氏は語る。その原動力は「できなかったことを叶える力」に感動した経験だ。東日本大震災で原発事故が発生し、放射能汚染された区域での修理作業が発生した。そのプロジェクトを手がけた研究者のエピソードをたまたまテレビで目にしたとき、それを自分でも確信したという。

「放射能が強くて誰も現場に入れない。ではどうするかというときに、その研究者の方が開発したロボットを乗り込ませて処理作業を行なったのです。それを見たとき、この人のやっていることはすごい。テクノロジーには、今まで人が叶えられない領域を叶える力がある。これが僕のやりたいことだと感じたのです」

そうしたテクノロジーが広げる人間や社会の可能性に通じるものとして、これからもものづくりを手がけていきたいと大石氏は語る。そのために今はちょうどUXや人間中心設計という考え方などを勉強中だ。ここで得た知見をベースに将来は、プロダクトの戦略部分から参画できるようになりたいと考えている。

「特にインターフェースというのは、単なる使いやすさや見た目の洗練度だけではなく、製品やサービスの戦略がよく練られた上で、その戦略を叶えるためにはどんな見た目にすれば良いかというところが重要です。そうした深い部分までも考えて製品やサービスを作っていけるプロダクトオーナーになれたらいいなと思っています」

* * *

それぞれに異なる経歴を持つ3人のエンジニアだが、「自分のやりたいことにチャレンジしたい」「エンジニアとしてもっともっと成長したい」そして何よりも「楽しく仕事をしたい」という思いでmanebiに集まってきた仲間だ。

最後に呉氏は、「当社は小さな組織なので、自分がこうしたいと提案すれば通る可能性が高い。そういうスタートアップならではの、やりたいようにできる部分が非常に大きい=エンジニアそれぞれの裁量が大きい会社です。もし自分で追求したい技術や目標に真摯に向き合っていきたいと考えている方がいたら、その思いをぜひ聞かせてほしいし、そういう場所で仕事をしたいという方は一度気軽に話をしに来てください」と呼びかける。本気で技術を究めたい、どうせ働くなら楽しく仕事をしたいと思っているエンジニアは要注目だ。

株式会社manebi President of Engineering 呉 珍喆(オ・ジンチョル)氏

3名のエンジニアは取材中、終始にこやかに、楽しく対応してくれた

フリーランス・ライター兼エディター。IT専門出版社を経て独立後は、主にソフトウェア関連のITビジネス記事を手がける。もともとバリバリの文系出身だったが、ビジネス記事のインタビュー取材を重ねるうち、気がついたらIT専門のような顔をして鋭意お仕事中。

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