「仕事を愛せず人生は愛せない」ー四角大輔氏『超ミニマル主義』出版記念「超時短仕事術とサステナブルな働き方」イベントレポートー
9月18日、湘南T-SITEにて、四角大輔氏(以下、四角氏)による著書『超ミニマル主義』出版記念イベント「超時短仕事術とサステナブルな働き方」が開催された。台風14号が関東地方に迫る中、会場は満員御礼。日頃はニュージーランド、湖畔の森で暮らしており、約3年ぶりの単独トークライブとなった。
現在は執筆家・環境保護アンバサダーの四角氏は、以前は敏腕プロデューサーだった。1995年からソニーミュージック、ワーナーミュージックで15年働き、10年にわたり10回のミリオンヒットを創出。幼少期から自然好きだった四角氏は、実績・地位や名声を捨て、現在、学生時代からの夢であった、ニュージーランドの湖畔の森で、ポスト資本主義的ともいえる自給自足ライフを送っている。
本著のハイライトでもある「思考と習慣の軽量化」は、多忙なレコード会社時代に体得した「もっとも大切なことに集中すべく、優先度が低いタスクは手放し、残ったタスクは効率化&超集中して終わらせる」という仕事術を実践し、ヒットを出してきたという。
「僕ら人間は幸せになるために生まれてきた。『超ミニマル主義』は、ヒットやムーブメントを牽引できたビジネススキルの集大成であり、幸せに生きるために働き方をハッキングするノウハウ本」と、四角氏は語る。「独自のクリエイティブ・ブランディング・メディア戦略を武器に、多数のヒットを生み出していたことは知っているが、ビジネスパーソンとしても独特の仕事術を実践していたはず」という編集者の言葉がきっかけとなり、書き下ろしの新刊ビジネス書としては、10年ぶりとなった。
本著は、10年前に刊行しベストセラーとなった『自由であり続けるために 20代で捨てるべき50のこと』のアンサー本。不要なモノはもちろん、それ以外の非物質(人脈・タスク・ToDo・スケジュール等)も捨てよと書いた前著は、強烈なインパクトをもたらし「人生や考え方が変わった」という人も多数いた一方、実践する具体的な方法を知りたいという声も多く寄せられた。「今回の『超ミニマル主義』は、それを実践するノウハウを全部まとめた。誰一人取り残さないという思いで、4年がかりで書き上げた」という言葉で、トークライブは始まった。
仕事術と働き方は幸せにつながる
冒頭で、四角氏は以下の問いを投げかけた。「(人生でもっとも大きなウェイトを占める)仕事を心から愛せているか」。そして1分間、「自分にとって幸せを感じる瞬間はなにか」を参加者同士で対話した。
その後、四角氏は「命の鼓動を感じているか」と、胸に手を当て心音を1分間聞くように促した。誰もがこの1分間を、対話時間より長く感じたと反応。「超ミニマル主義の裏テーマは、“使い方によって長さが変わってくる時間”を使いこなすこと。僕は、タイムパフォーマンス(時間を効率化して有効利用する)を、人生かけて追求してきた」と四角氏。
- 最も大切なことに集中するために、他のすべてを手放す
- 身軽さ、自由度の高さ、遊び心が、潜在能力を最大化する
- 最短時間で最大効果、最小労力で最大パフォーマンスを
- 仕事を愛し、楽しんで働くことで最高のアウトプットを
- 心を軽くするために、体の負担と環境負荷を最小化する
- 上質な成果を出し続け、持続的に働くために暮らしを整える
- 時間に極端なメリハリをつけて初めて、人生は豊かになる
- 仕事は究極の遊びであり、働き方は生き方である
仕事と暮らし、どちらを優先すべきか。先に整えるのは暮らし。暮らしが整わない限り、仕事で持続的な成果は出せない。レコード会社時代、10年間ヒットを出し続けられた理由は、暮らしと生活習慣をとことん整えたから。これまで色々な仕事をしてきたが、「仕事を楽しみ愛せたら、仕事は究極の遊びとなり、最大級のパフォーマンスを発揮できる」と自身の人生を振り返りながら、本書に込められた想いを語り始めた。
自分を守るための「超幸福主義」
1970年生まれ、現在52歳。幼少期から釣りや登山を始めた四角氏は、アウトドアが大好き。自転車・バイク・車(バン)と、乗り物が変わる度、新たに出会う自然の美しさに魅了され、行動範囲を広げていった。行きたい山や森や湖は、次から次に溢れだした。
変わり者と言われることが多いが、心の声に忠実に従ってきただけ。大好きなこと、楽しいこと、心地いいことを最大化するために、それ以外の余計なことをとことん削ぎ落としてきた。
本書のルーツとなる「手間や労力を最小化する時短術」を思いついたのは10歳の頃。10歳になるまでは病弱体質で体が弱くて気も弱く、学校でいじめられたりして「生きるってこんなに苦しいのか」と思い悩み、「どうすれば楽に生きられるのか」と必死に考えたそう。
「これが僕の幸福論のルーツ。僕にとって超ミニマル主義は超幸福主義であり、弱かった自分を守るため、自分が楽に生きるための流儀」と語る四角氏の目は、澄みわたっていた。
遊ばないといい仕事はできない。
第一優先は休暇の確保
レコード会社時代、友達や先輩、上司を過労死や自死で失った四角氏は「働きすぎて健康を害したり、寿命を縮めることは絶対したくない。どんなに忙しくても休みをとり、ときに“体調不良”というカードを使ってでも、自分を守り抜いた」と明かした。特に、当時のエンタメ・マスコミ業界は、労働時間度外視のブラック産業だった。タスク処理術や仕事を効率化する技術はレコード会社時代に身につけたという。
1995年からソニーミュージックで9年間、そしてワーナーミュージックにヘッドハンティングされ5年半、計15年働いた。平井堅、CHEMISTRY、絢香、Superfly、河口恭吾、絢香×コブクロなど十数組担当し、10年にわたってオリコン1位20回、ミリオンヒット10回、CD累計売上2000万枚という記録を出した。
2003年、当時担当していたCHEMISTRYは、音楽アーティスト年間総売上1位となり、四角氏は音楽業界で一番忙しいプロデューサーの1人だったと思うが、「休みを取らないといい仕事ができない」と、しっかり遊んでいたという。
会社に行く前の1時間と帰宅後の1時間を「セルフケアタイム」と呼び、仕事を100%忘れるべく大好きなことをして過ごした。
土日休みの週休2日を基本とすると、休みは年間104日間ある。ここに国民の祝日16日、お盆休みや年末年始、有休平均20日間を全部足すと、365日のうち150日の休みがあり、これは世界最多。だが有休取得率は先進国で最低だった。「新型コロナウイルスのパンデミックは本当に悲劇だったが、有休消化率と男性の育児休暇取得率は少し上がったり、在宅勤務やリモートワークなど、働き方が多様化し休みやすくなった。コロナ禍で、本書で提案していることは全部できるようになっている。ぜひ、実践してほしい」と四角氏は呼びかけた。
四角氏は東京でレコード会社の多忙な会社員生活を送りながら、1年の3、4カ月は愛する自然の中で過ごす休み方を、周りから非難されながらも新入社員から実践していた。
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