仕事を選ぶことは生き方を選ぶこと。「みんな電力」代表大石氏とNZ在住の作家四角大輔氏が示す「未来のための働き方」とは

2019年11月19日(火)
望月 香里(もちづき・かおり)

9/13(金)、みんな電力株式会社にて、未来のためにこれからどう働く?U35限定 サスティナブルワークスタイル Open Meetingが開催された。

働き方改革などとともに、昨今耳にすることの多いSDGsや持続可能(サスティナブル)な社会というフレーズ。35歳以下限定、今後の社会の中でどう働くか、または生きていくかを考えるイベントとなった。

今回、リズミカルで歯切れの良いファシリテーターを務めたのは、株式会社ラッシュジャパンの丸田千果氏。また、本イベントの内容は、グラフィックレコーダーの田辺エリー氏がイラストに起こしていくという趣向である。

株式会社ラッシュジャパン 丸田千果氏

セミナーの内容を田辺エリー氏がイラストで記録していく

ゲストスピーカーは2名。1人目はみんな電力株式会社 代表取締役の大石英司氏だ。大石氏は自社を「コンセントの向こう側はどこに繋がっているのか。自分の使った電気の電気代を知っている人に払えたら良いなと、生産者の顔が見える野菜のように電気を売っている」と説明。現在は服や食べ物にも視野を広げ「顔の見えるライフスタイル」に関心を寄せている。

みんな電力株式会社 代表取締役の大石英司氏

「面白い」「儲かる」を原則に、自分が面白いと思うこと優先し、世の中やお客様に面白さを広げていけるように仕事をしている。社内には「人を再生する」という意味の「スナック再生」があり、社長がスナックのママとなり、普段はなかなか話せないようなことを社員と話したり、交流の場にしているそう。

社長と社員の交流の場「スナック再生」は社内にありながらも本格的な佇まいだ

2人目は、元レコード会社プロデューサーで、現在は執筆業を中心に「場所に縛られない自由な働き方」を10年にわたって実践する四角氏だ。ニュージーランドの森で生活しながら、ネットとモバイルデバイスを駆使して仕事をこなす。水は目の前の湖(湧き水)を汲み上げ、その湖や近くの海で釣りをし、野菜を育てての自給自足ベースの生活を送るが、その前は約15年間音楽業界で会社員をしていた。自分で食料を調達し、近隣の顔の見える生産者から足りない分を買うことが「真のフェアトレード」であると言い、いよいよ電力も自給自足していきたいとのこと。遊び・暮らし・仕事に垣根のない生き方をしている。

Lake Edge Nomad Ltd. CEOで執筆家、ニュージーランド在住の四角大輔氏

自己紹介が終わり、さっそくイベント本編へ。ここからは、参加者がゲストに聞きたいことをフリップボードに書き、その中からゲストが質問を選んで回答していくという、参加者参加型のインタラクティブな会となった。

参加者がゲストに聞きたいことをフリップボードに書いて掲げる

Q:そもそも「働く」とは?

  • 四角3つある。
    (1)表現:「一度しかない命」をかけた究極の表現活動
    (2)仕事:お金を稼ぐためだけでなく、誰か一人にでも貢献できること
    (3)遊ぶ:本気で遊ぶことは尊く、それが仕事になる
    仕事には雑務もある。「どうすれば楽しくできるか」を考えて実践してみると良い。すると、自分のパフォーマンスも確実に上がる。
  • 大石1にワクワク、2にハラハラ。自分が熱中できることがあれば、そこから仕事を考えれば良い。ワクワクがベースにあればハラハラも乗り越えられるし、そこにはストレスがない。

Q:今就職活動中だが、仕事先の選び方は?

  • 大石みんな電力の採用方法は相性チェック。1次審査から社長・人事担当が対応し、全ての質問に答えながら、徹底的に相性をチェックする。過去の業績は一切問わない。自分の子どもに会社選びを相談されたら、「『大好きな人と働きたい』という相性を大事にしてほしい」と勧めたい。みんな電力には社会課題を面白く解決することを念頭に置き、自分たちの熱量で周りを巻き込んで行くパワーがある。このカルチャーを大事にしていきたい。
  • 四角過去に採用を担当したことがある。やはり相性が1番大事。心で「この人と一緒にいたい」と思うかどうか。スキル・資格などのスペックだけで判断しないこと。頭だけで判断すると必ず後悔する。仕事は「人」で選ぶことが大事。人と何かをやる時は大変なこともあるが、チーム・仲間で成し遂げた感動はとても大きい。「人」を決める上で大事なことは、心がワクワクするかどうか。心がワクワクしていたら、何があっても乗り越えられる。
  • 丸田組織にはカルチャーや色がある。自社では「カルチャーフィット」とよく言っているが、やはり互いの温度感が大事。お互いを開示する上でタイミング・相性・互いの共感ポイントなどが持続可能な関係性において大切になってくる。
  • 四角日本人は正規ルートからの就職しか考えないが、実は非正規ルートは必ずある。人や自然を傷つけず、礼節さえわきまえれば、破ってもいいルールもある。仕事は人生において重要な部分を占めるから「入り方」は妥協すべきじゃない。音楽業界には、雑用だけのバイトからプロデューサーになった人は何人もいる。長期的に考えることが大切で、諦めずにコツコツと積み重ねていけば、必ずやりたい仕事に就ける。今はまさにそんな時代。

ゲストたちは相談者と真摯に向き合い熱いコメントを送っていた

Q:「お金を稼ぐ」とはどういうことか。
好きなことは仕事になりうるのか?

  • 四角これまで一度も、お金を稼ぐためだけに働いたことがない。肉体には寿命があり、時間=命だから、どうでもいいことに自分の命を使いたくない。「自分や家族が健康的に生きていける最低限の金額=ミニマムライフコスト」が稼げればいいはずなのに、多くの人がどうでもいいことに無駄なお金を使い、それによって上がっていくライフコストを維持するために、本当はやりたくない仕事をしたり、過剰に働いてしまう。そうやって、体や心、家庭や大切なことを壊してしまっている。人間は、自分のやりたいことを成し遂げるために生きているはず。余計なお金も、周りの目や評価も必要ない。

参加者たちもゲストたちの話に真剣に聞き入っていた

Q:「エシカル」「サスティナブル」を仕事にするには?

  • 四角10年前、ニュージーランドへ移住する際に「場所の制約を受けずに好きなことや好きな人としか仕事をしない」と決めた。5年ほど前、さらにそこに「平和のため、地球環境のための仕事しかしない」ことを付け加えた。この信念を腹で決めて、より強くそういう発信をしていると、いつの間にか感性の合う人や必要な情報が集まり、そういう仕事しかこなくなった。
  • 大石大企業のHPなどで「サスティナブルなことをやっている」と経営者が言っていても、現実的にはできていないこともある。大企業だからという理由ではなく、中小企業や小規模でも、エシカル・サスティナブルの想いが強ければ、満足にやりたいことができるのではないか。
  • 四角オーガニック・エシカル・サスティナビリティは世界で成長市場にある。2016年、世界のエネルギー関連の設備投資の75%は再生可能エネルギーになっていて、原発はわずか5%。この大きな潮流は、間違いなく日本にも来る。「人類が地球に生き続けられるため」に今日から一緒に行動しよう。

働き方は短期的ではなく、長期的、持続可能に考えてほしい。「世の中に心や身体を壊してまでやらなくてはいけないことはない」と四角氏が締めくくったところで、イベントは終了した。

イベント終了後に完成したエリーさんのグラフィックレコード。いつもは紙に描き起こすことが多いようだが、今回はタッチパネルに描いていた。

完成したエリーさんのグラフィックレコーダー

トークセッションの後は、大石氏・四角氏がスナックのママとなり、より深く語らい合う時間となった。参加者の中から予め決められた数人のみが参加でき、内容は非公開。参加者はきっと濃密な時間を過ごしたことだろう。

スナックスペースは1つしかないため待っている間は外での語らいが行われていた。こちらはオープンだ

* * *

「頭だけで考えず、心で感じ、腹で決めて生きてほしい。世の中には心や身体を壊してまでやることはない」と言い切る四角氏の言葉には、彼が腹で決め実践して来たからこその強い芯・核の部分を感じた。また、採用方法は「断然相性」というみんな電力の大石氏。給料は手渡しで、中にはくじが入っていたりと遊び心が満載で、人を大切にしていることがエピソードから感じられ、心が温かくなった。

「いま」は、いつでも未来のはじまり。大手企業もだんだんと複業解禁になって来ている今こそ、働くとは・お金とは・生き方とはを、一度じっくり考えてみるのも良いのでは。あなたは自分の未来のため、どう働きますか?

著者
望月 香里(もちづき・かおり)
元保育士。現ベビーシッターとライターのフリーランス。ものごとの始まり・きっかけを聞くのが好き。今は、当たり前のようで当たり前でない日常、暮らしに興味がある。
ブログ:https://note.com/zucchini_232

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