「KubeCon NA 2022」から、初日のキーノートセッションを紹介

2023年2月10日(金)
松下 康之 - Yasuyuki Matsushita
KubeCon NA 2022から初日のキーノートセッションを紹介。

Cloud Native Computing Foundation(CNCF)が主催する「KubeCon + CloudNativeCon North America 2022」から、初日の朝一番に行われたキーノートセッションを紹介する。

朝9時からスタートするキーノートは一番大きな会場を使って行われるが、今回は参加者、出展社などを合計すると約9000人くらいの規模というセッションだ。今回のカンファレンス全体では約16000人が登録、その半数がオンラインでの参加ということでリアルの参加者は8000名、そこに出展社などのベンダーからの参加者、CNCFのスタッフなどを加えても9000人程度だろう。それら参加者が一同に会して3日間聴講するのがキーノートということになる。

CNCFのExecutive Director、Priyanka Shrma氏

CNCFのExecutive Director、Priyanka Shrma氏

キーノートの先頭として行われたSharma氏のセッションは約40分間という長さだったが、前半はオープンソースプロジェクトの拡大とメインテナーの功績を称える内容で、途中に2名のメインテナーをステージ上に招いてトーク、その後はユーザーである自動運転タクシーを展開するCruiseがゲストとして登壇するという内容だ。ダイバーシティに気を遣うCNCFらしくアジア系男性とイスラム系女性がゲストである。

ArgoCDとKubernetesのメインテナーを招いてトーク

ArgoCDとKubernetesのメインテナーを招いてトーク

オープンソースプロジェクトにはコードやパッチを書くコントリビュータ、そのソフトウェアを使うエンドユーザーに加えてプロジェクトそのものを維持するメインテナーが存在し、約1000人のメインテナーが17万5千人のコントリビュータを支えて、ユーザーとして7百万人のデベロッパーがオープンソースソフトウェアを使っていると説明。ここでは多くのオープンソースプロジェクトでは重要な役割を果たしていると語り、2名のメインテナーとの対話を通じてメインテナーの必要性を訴えた。

また、実際にコントリビューターの活動をこのカンファレンスで経験するためのContribFestを紹介した。ContribFestはいわばコントリビュータのためのお祭りという位置付けだが、KeyvernoやPrometheus、ArgoCDなどのメインテナーが実際にテーマを設けて具体的にコードに対する貢献を一緒に行うセッションとなっている。参加者は予めコードをGitHubからラップトップPCにダウンロードすることを求めていたことからもわかるように、単にプレゼンテーションを聴くのではなく、実際に作業を行うというのが特徴だろう。プロジェクトによってはCLA(Contributor License Agreement)やDCO(Developer Certificate of Origin)に署名を行うことを必要としていた。実際にコントリビューターと隣り合わせでコードに貢献する体験をするという内容だ。

Sharma氏の持ち時間の後半は、2022年のエンドユーザーアワードの発表から始まった。担当したのはCNCFのHead of Ecosystem、Taylor Dolezal氏だ。Dolezal氏はCNCFに加入することの意義を強調した上で、ベンダーではなくユーザー企業がCNCFのメンバーとなることでクラウドネイティブなシステム構築が容易になることや人員獲得にも役立つことなどを説明。その流れからオープンソースプロジェクトに貢献したエンドユーザーに与えられる2022年度のエンドユーザーアワードとして、Spotify、Apple、Lyftなどの中から今年はIntuitがアワードを勝ち取ったことを発表した。IntuitはかつてはPC用会計ソフトウェアのベンダーとして知られる存在だったが、ArgoCDの主な開発チームを持っていることでも知られるように、積極的にオープンソースソフトウェア、そしてクラウドネイティブを採用したクラウドサービスベンダーに姿を変えている。

エンドユーザーアワードのノミネーション企業にはLyftやSpotify、Appleなども挙げられていた

エンドユーザーアワードのノミネーション企業にはLyftやSpotify、Appleなども挙げられていた

その後は、AIを活用した自動運転タクシーを提供するCruiseが登壇し、CNCFのプロジェクトで構成されたソフトウェアスタックを使って機械学習からクラウドベースのアプリケーションまでを稼働させるインフラストラクチャーについて解説を行った。

プレゼンテーションを行うCruiseのエンジニア

プレゼンテーションを行うCruiseのエンジニア

CruiseはAKSとGKEの上でKubernetesを運用していると説明し、クラスターが簡単に構築できる、自動化も進んでいるなどの利点を説明したが、実際には多くの課題が残されていると説明。

Kubernetesクラスターを簡単にデプロイできる?

Kubernetesクラスターを簡単にデプロイできる?

ここでは、アメリカの人気テレビホストであるOprah Winfreyの「You get a car! You get a car!!」をもじって「You get a cluster」と変えたツイートを引用し、誰もがKubernetes Clusterを手に入れられる気分になるだろうが、それは間違っていると、この後に続いて説明を行った。

現実的には運用の複雑さが増しただけだったと説明

現実的には運用の複雑さが増しただけだったと説明

このスライドでは、社内の様々な要求に応えるために運用エンジニアが苦労していることを説明。その後、Operatorを使ってノードをプール化することで自動化を進めたことを説明し、GitOpsによってこれまでの3倍のクラスターを運用できるようになったと語った。

Operatorによってノードをプール化してGitOpsで運用

Operatorによってノードをプール化してGitOpsで運用

この後、VMwareのプレゼンテーションなどが行われたが、今回のMC役、CERNのRichardo Rocha氏が登壇し、CNCFのプロジェクトアップデートに次いでウクライナについて語り、その流れから戦闘に参加しているデベロッパーのIhor Dvoretskyi氏を紹介。Dvoretskyi氏はKubeCon EU 2022では動画での参加だったが、今回はリアルに登壇しウクライナへの支援を訴えた。このときは会場が総立ちとなり、CNCFのコミュニティがウクライナを支援していることを感じる場面となった。Dvoretskyi氏は元Mirantisで現在はCNCFのシニアデベロッパーアドボケイトという立場だが、実際はウクライナの侵攻から母国を守るために活動しているということだろう。

ウクライナ支援を訴えるIhor Dvoretskyi氏(左)

ウクライナ支援を訴えるIhor Dvoretskyi氏(左)

プロジェクトアップデートは、以下の動画を参照して欲しい。これまでは壇上のプレゼンターが紹介する形だったが、それぞれのプロジェクトのメンバーが短いビデオで紹介する形に移行している。LinkerdやKeyvernoなどのプロジェクトのメンバーが最新情報を紹介した。

●Project Update:https://www.youtube.com/watch?v=AQb_LKpkRDY

CNCFがウクライナを支援しているという部分に関しては、以下のブログを参照されたい。

●CNCFによるウクライナ支援:https://www.cncf.io/blog/2022/08/19/cloud-native-community-donates-21000-to-ukraine/

また、スライドの中でQRコード付きで紹介されたウクライナの退役兵士にITトレーニングを行うことで就業支援を行うVeteraniusについては、以下を参照されたい。

●Veteranius:https://www.razomforukraine.org/projects/veteranius/

初日はオープンソースプロジェクトとメインテナーへの支援を訴え、コントリビュータを増やすための施策、ContribFestを紹介し、エンドユーザーアワードとユースケースの紹介、主要なプロジェクトのアップデートを動画で行った後で、ウクライナ支援、そしてスポンサーであるVMware、Kasten by Veeam、Slim.AIなどが登壇するという盛り沢山の内容となった。

著者
松下 康之 - Yasuyuki Matsushita
フリーランスライター&マーケティングスペシャリスト。DEC、マイクロソフト、アドビ、レノボなどでのマーケティング、ビジネス誌の編集委員などを経てICT関連のトピックを追うライターに。オープンソースとセキュリティが最近の興味の中心。

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