「DApps」と「メタバース」
NFTの規格
Ethereumの仮想通貨に使われている規格はERC20ですが、NFTに関しては別の規格が用意されています。代表的な規格はERC-721とERC-1155です。ERCはEthereum Request for Commentsの略で、イーサリアムのスマートコントラクトの規格を表します。これらの規格はすべての取引(トランザクション)と所有権が正しく記録されることを保証します。
ERC-721とERC-1155の違いを表1に示します。以下、項目に沿って説明しましょう。
項目 | ERC-721 | ERC-1155 |
---|---|---|
リリース時期 | 世界初のNFTの標準規格 | 2019年6月に採用された新しい標準規格 |
利用しているDApps | CryptoPunksやCriptKittiesなど多くのNFTが採用 | The SandboxやAxie Infinityなど多くのNFTが採用 |
トランザクションとNFTの関係 | 1トランザクション1NFT | 1トランザクションで複数のNFTを操作可能 |
トークンの種類 | NFTのみ | NFTと代替可能トークンの両方 |
リリース時期
ERC-721は世界初のNFT標準規格なので、多くのNFTがこの規格を採用しています。一方、ERC-1155は後発の分、ERC-20とERC-721の特徴を合わせ持ち、最近はERC-721と人気を2分しています。ただしERC-721との互換性がないためERC-721上のDAppsを移行するのは大変です。
トランザクションとNFTの関係
ERC-721は1つのトランザクション(取引)で1つのNFTを操作しますが、ERC-1155は1つのトランザクションで複数のNFTをバッチ処理で操作(移動や発行など)できます。
例えば、ゲームのキャラクターとアイテムを丸ごと売却する場合、ERC-721だとそのNFTの数だけトランザクションが発生しますが、ERC-1155なら1トランザクションにまとめることができます。取引手数料(GAS)はトランザクションごとにかかるので、ERC-1155の方がガス代を節約できるメリットがあります。
トークンの種類
ERC-721で発行できるトークンはNFTのみで、トークンに固有のIDを振って唯一無二のものとします。一方、ERC-1155は1つのスマートコントラクトでNFT(代替不可能)とFT(代替可能)のどちらも発行・管理できる規格で、マルチトークンスタンダードとも呼ばれています。
例えば、The Sandboxで取引されるアイテムやアセットはNFTですが、売買に使われる内部通貨のSANDはFTです。ERC-1155を採用することにより、1つのDAppsで両方を取り扱えるわけです。
NFTマーケットプレイス
仮想通貨はCoincheckやDMM Bitcoin、GMOコインなどの取引所で売買できます。これに対してNFTを売買できる場所がNFTマーケットプレイスです。表2に人気の高いマーケットプレイスを示します。最も人気の高いのがOpen Seaで、ここはイーサリアムだけでなくPolygon(ポリゴン)やFlow(フロー)などのブロックチェーンもサポートしています。
Magic EdenはSolanaというブロックチェーンを使っています。Solanaは、Ethereumよりも高速に処理できるとされており、Ethereumで開発されたDAppsを移行できる互換性を持っています。
Market Place | 特徴 | 規格 | 主なNFT |
---|---|---|---|
OpenSea | さまざまなNFT規格をサポートする一番人気 | ERC-721、ERC-1155、 Polygon、Flowなど |
BeepleやJose Delboなどのデジタルアート、AxieInfinity、Decentralandなどのゲーム |
Rarible | NFTに焦点を当て独自トークンPARIを発行 | ERC-721 ERC-1155 |
BeepleやPranksy、Fewoxiousなどのデジタルアート |
Fundation | クリエータが招待制で参加できる | ERC-721 | FidenzaやMad Dog Jones、Nyan Catなどのデジタルアート |
Magic Eden | EthereumでなくSolanaを基盤としている | SPL Token | Degenerate Ape AcademyやSolanautsなどのデジタルアート |
Coincheck NFT | 日本のCoincheckが運営。日本円での購入や売却が可能 | ERC-721 | 三代目JSB、ドラゴンクエストⅦなど |
まとめ
第7回の今回は、以下の内容について学習しました。
- NFTは2021年~2022年がトレンドのピークだったが、現在も着実に普及している
- メタバースも2021年~2022年がトレンドのピークだったが、今度どのように発展するかはまだ判断しにくい
- DAppsはスマートコントラクトを利用して実現できるP2P型のアプリケーションで、さまざまな分野に広がりつつある
- Ethereumの仮想通貨に使われている規格はERC-20。NFTに使われているのはERC-721とERC-1155
- スマートコントラクトはイーサリアム以外のブロックチェーンでも提供されてきている
- NFTの取引はOpen SeaやRaribleなどのNFTマーケットプレイスで行われている
よく、デジタルアートそのものをNFTと理解していたり、NFT化されたデジタル資産はコピーできないなどと勘違いする人がいます。しかし、NFTが実物とは別のデジタル証明書であるという関係を理解すれば、逆に今後どのようにNFTを活用できそうかイメージが広がると思います。
次回は、具体的な活用方法として広がってきたDeFi(分散型金融)について解説します。お楽しみに!
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