Civo Navigate North America 2024を紹介。低価格でベンダーロックインしないクラウドベンダーのCivoとは?

2024年4月16日(火)
松下 康之 - Yasuyuki Matsushita
2024年2月にアメリカのテキサス州オースティンで開催されたイベントCivo Navigateを紹介する。

イギリスで起業されたクラウドネイティブなソリューションを提供するCivoが開催したCivo Navigate North America 2024を取材した。テキサス州オースティンで開催された2日間のイベントの概要とキーノートを紹介する。

会場はテキサス大学オースティン校

Civoは2019年にイギリスで創設されたベンチャーで、アメリカではDigital Oceanと似ていると言われることもあるIT企業だが、Kubernetesをサービスとして提供しているほか、ハイパースケールのパブリッククラウドプロバイダーを下回る価格でのサービス提供を売りにしている企業だ。そのCivoが始めたテックカンファレンスがCivo Navigateである。2023年2月にフロリダ州タンパで最初のカンファレンスが開催され、その後、2023年9月にロンドンでも開催、3回目として今回テキサス州オースティンで開催されたというわけだ。場所はテキサス大学オースティン校のキャンパスにあるAlumni Centerという建物を借り切って行われていた。

Alumni Centerのエントランス。これがCivo Navigateの唯一の入口

Alumni Centerのエントランス。これがCivo Navigateの唯一の入口

このエントランスの写真を見れば理解できるが、複数の会議室を持つ建物ではあるが規模は小さくキーノートが行われた部屋を除いてどれも100名程度が着席できる規模だ。

キーノートセッションが行われた最も大きな会議室。約250名程度のキャパシティか

キーノートセッションが行われた最も大きな会議室。約250名程度のキャパシティか

2月のオースティンは気温が高く湿度が低いという過ごしやすい気候のためか、屋外で行われる会場も用意されていた。

屋外のセッション会場。液晶のモニターが見辛いのが欠点

屋外のセッション会場。液晶のモニターが見辛いのが欠点

またエントランスから会議室に至る通路には展示ブースが用意されており、イベントのスポンサーがそれぞれブースを展示していた。

通路に設置された展示ブース。どれも小さいながらも参加者との対話に励んでいた

通路に設置された展示ブース。どれも小さいながらも参加者との対話に励んでいた

2番めに行われたキーノートセッションを紹介

初日の最初のセッションはキーノートとなるのが通常だが、今回は元DockerのSolomon Hykes氏を招いたパネルディスカッションが行われた。そしてその次に行われたのがCivoのCEOで共同創業者のMark Boost氏のセッションだ。今回はその内容を紹介したい。

キーノートセッションを行うMark Boost氏

キーノートセッションを行うMark Boost氏

このセッションはCivoの存在する理由と価値を紹介するものであり、これこそCivoが最も伝えたかったことと言って良いだろう。テーマは「Cloud is Broken(クラウドは壊れている)」だ。

自己紹介。イギリスでLCNというホスティング会社を始めたのが1999年だという

自己紹介。イギリスでLCNというホスティング会社を始めたのが1999年だという

テーマである「クラウドは壊れている」というのは、最初にパブリッククラウドを始めたAWSがそのユーザーベースと先行者利益をそのままモノポリーとベンダーロックインに繋げてしまっているという主旨である。

CivoのCEO曰く「クラウドは壊れている」

CivoのCEO曰く「クラウドは壊れている」

Boost氏は2012年のAWSのプライベートカンファレンスでのコメントを紹介し、当初は低価格でコンピューティングリソースをユーザーに提供することがモットーであったことを紹介。

2012年のAWSは「大きなインフラリソースを使って低価格でサービスを提供していた」

2012年のAWSは「大きなインフラリソースを使って低価格でサービスを提供していた」

しかし多くのメディアが報じるように、AWSを始めとするパブリッククラウドベンダーはユーザーをロックインし、価格を上げ始めていることを紹介し、このコスト上昇が多くのユーザーにとっての共通の悩みになっていることを説明。

ガーディアンの記事などを引用してパブリッククラウドのコスト高とロックインを紹介

ガーディアンの記事などを引用してパブリッククラウドのコスト高とロックインを紹介

そしてFlexeraのリサーチ結果を紹介し、多くの企業がパブリッククラウドのコストを最大の問題と考えていることを紹介した。

Flexeraのリサーチより、企業のサイズに関わらずコストが問題点と指摘

Flexeraのリサーチより、企業のサイズに関わらずコストが問題点と指摘

そしてCivoが行ったリサーチでも、52%のユーザーはパブリッククラウドが当初約束していた低コストを守れていないと感じており、47%のユーザーがパブリッククラウドからの移行を考えていることを紹介。

コストが問題点として指摘。半分近くがパブリッククラウドからの移行を検討している

コストが問題点として指摘。半分近くがパブリッククラウドからの移行を検討している

そしてCivoはかつてパブリッククラウドが掲げていた「低コスト」というテーマを守り、オープンなソフトウェアを使うことでロックインを防ぐことを目指していると説明した。

Civoのテーマはコスト低減とアンチロックイン

Civoのテーマはコスト低減とアンチロックイン

具体的にはAWSなどのハイパースケーラーと比べて約60%低いコストでサービスを提供し、ベンダーロックインをしないというのがメッセージだ。

Civoのテーマは低価格とアンチベンダーロックイン

Civoのテーマは低価格とアンチベンダーロックイン

また企業としての姿勢も紹介。ここでは企業として持続することとオープンスタンダードとインターオペラビリティを守ること、コミュニティを重視することなどが説明されている。ワーカホリックな日本人にとって注目すべきは、最後に挙げられた週4日の勤務という部分だろうか。

企業としての姿勢を紹介。フレックスだけではなく週4日の勤務を推奨

企業としての姿勢を紹介。フレックスだけではなく週4日の勤務を推奨

展示ブースのようす

展示ブースについても紹介しよう。KubeConなどでは見かけないスタートアップが多かったのは、出展コストの低さが表れていると言えるだろう。

主催社であるCivoのブース。特にデモ用のPCなどは用意せずにノベルティ配布だけ

主催社であるCivoのブース。特にデモ用のPCなどは用意せずにノベルティ配布だけ

主催者であるCivoは説明員などを置かずにノベルティを配布するだけのブースを設置していた。

Spinでお馴染みのFermyonは定番のデモを実施

Spinでお馴染みのFermyonは定番のデモを実施

サーバーレスのワークロードを実行するSpinフレームワークを紹介するFermyonもブースを構えていた。Matt Butcher氏もブースで説明を行い、新しく制作した「Phippy's Field Guide to WASM」という絵本を配布していた。

コンテナマネージメントのPortainerのブース

コンテナマネージメントのPortainerのブース

●参考:Portainer

デベロッパーのライフサイクルを統合したサービスを提供するNorthflankのブース

デベロッパーのライフサイクルを統合したサービスを提供するNorthflankのブース

●参考:Northflank

SBoM管理のFOSSAのブース

SBoM管理のFOSSAのブース

●参考:FOSSA

OpenTelemetryを使った監視サービスのMiddlewareのブース

OpenTelemetryを使った監視サービスのMiddlewareのブース

●参考:Middleware

生成型AIを使ったデベロッパー向けアシスタントを提供するPiecesのブース

生成型AIを使ったデベロッパー向けアシスタントを提供するPiecesのブース

●参考:Pieces

Defense.comはCivoのMark Boost氏が創業したセキュリティ企業

Defense.comはCivoのMark Boost氏が創業したセキュリティ企業

●参考:Defense.com

ポリシー管理ソリューションのCerbosのブース

ポリシー管理ソリューションのCerbosのブース

●参考:Cerbos

どのブースも小さいながら参加者と対話することで自社のプロダクトやサービスを訴求していた。Civo Navigateは言わばローカルなITカンファレンスという規模だが、AIやセキュリティ、オブザーバービリティなどのトピックを揃えているだけではなく、イギリス発祥というところからDeep Greenの取り組みを紹介するセッションなどもあり、規模は小さいながらも興味深いイベントだったと言える。

●参考:Deep Green

ちなみにDeep Greenはイギリス発の企業で、データセンターの廃熱を温水プールなどに活用することでエネルギーコストを下げつつ、分散コンピューティングを提供するデータセンターを展開している。

サーバーの廃熱で温水プールを温め電気代を削減するDeep Green

サーバーの廃熱で温水プールを温め電気代を削減するDeep Green

著者
松下 康之 - Yasuyuki Matsushita
フリーランスライター&マーケティングスペシャリスト。DEC、マイクロソフト、アドビ、レノボなどでのマーケティング、ビジネス誌の編集委員などを経てICT関連のトピックを追うライターに。オープンソースとセキュリティが最近の興味の中心。

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