写真で見るKubeCon Europe 2024 ベンダーやコミュニティプロジェクトの展示を紹介
筆者が初めてKubeConに参加したのは、2017年12月のテキサス州オースティンだ。その時のショーケースを紹介した記事でも「断トツに活気のある展示ブース」を紹介しているが、毎回KubeConに参加して驚くのは常に新しいベンダーが入れ替わり参加して新陳代謝が起きていることだ。オースティンのショーケースの記事は以下を参照して欲しい。
●参考:KubeCon+CloudNativeCon、大手からベンチャーまで活気のあるブースを紹介
今回もCNCFの新しいメンバーとしてMercedes-Benz Tech InnovationやAkamaiなどがキーノートで紹介され、それぞれPlatinum Sponsorとして存在を示していた。しかしもっとも活気があるのは新興のベンダーブースだろう。今回はショーケースに参加しているベンダー、プロジェクトのブース、そして番外編として会場の外で3月21日に開催されたAIに関するミートアップを紹介する。
KubeConのような規模のカンファレンスではカンファレンスの時間外、つまり夕方以降にさまざまなパーティやミートアップが開催され、多くのベンダーやコミュニティが参加者の注意を惹き、対話を行おうと躍起になっている。今回参加したのは「Local & open-source AI developers meetup(Paris)」と題されたミートアップで、OllamaやMistral AIなどの新興AIベンダーに加えて、DaggerのSolomon Hykes氏なども参加してデモやプレゼンテーションを行っていた。
それぞれ15分程度の時間でプレゼンテーションとデモを行うライトニングトーク形式だったが、多くの参加者が集まり、盛んに情報交換を行っていた。
Daggerは2024年2月に行われたCivo Navigateでもインタビューを行っているが、キーノートでも登壇し、今回の注目の存在だったと言える。
●参考:Civo Navigate North America 2024、元Dockerで現DaggerのCEO、Solomon Hykesのインタビューを紹介
スタートアップと言えるかは微妙だが、2023年のKubeCon Europeでインタビューを行ったSpectro Cloudもブースを出展していた。
●参考:エッジでKubernetesを実装する新しいプラットフォームをIntelとSpectro Cloudが紹介
他にもDaprの開発元として知られているDiagrid、Database as a ServiceのAivenなどが出展していた。
Aivenについては過去の記事も参照して欲しい。パブリッククラウドを使いこなすことで高可用性のデータベースを提供するフィンランドの企業だ。
●参考:マルチクラウドのDBaaSを抽象化するAivenの製品担当VPにインタビュー
オープンソースの生成型AIのベンダーとしてCNCFから何度も紹介されていたOllamaもブースを構えていた。
活気あふれるWebAssembly関連のベンダー
WebAssembly関連のベンダーブースも紹介しよう。
Second StateはWebAssemblyのランタイムであるWasmEdgeを開発するベンチャーだが、企業としてのブースは出展せずにCNCFのプロジェクトパビリオンに出展していた。創業者でCEOのMichael Yuan氏は、今回のテーマである生成型AIをWebAssemblyのランタイムから実行することで軽量かつ高速に生成型AIを使ったチャットアプリが実行できることなどを過去数回のKubeConで訴求しており、ここでも啓蒙に勤しんでいた。
Cosmonicは前日の併催イベントであるCloud Native Wasm Dayでユースケース(フランスの通信会社Orangeの事例)を最大限に訴求しており、非常に注目されていたと言える。
WebAssemblyの実行ファイルをコンポーネントとして組み合わせて実行するための仕組み、Component Modelを解説していたTaylor Thomas氏も、元気に参加者との対話を行っていた。
SpinをWebAssembly実行のフレームワークとして公開しているFermyonは、Kubernetesに対応した新しいフレームワークSpinKubeをキーノートで紹介していたことが印象的だった。また併催イベントではドイツのツァイスを2日目のキーノートの中で登壇させていた。CosmonicとFermyonのどちらも、一部とは言えエンタープライズ企業が本番環境でWebAssemblyを使い始めていることを訴求していた。
CEOのMatt Butcher氏は会場内でも大人気で、さまざまなメディアでインタビューを受けていた。
メジャーなベンダーではRed Hatが存在感を示していた。参加者がRed Hatのノベルティである赤い帽子を好んで入手していたのはKubeConのいつもの風景だろう。
Microsoftも規模は小さいながらもデモとプレゼンテーション主体の従来の展示を続行。
GitHubもIT業界で最も好かれていると思われるモナリサを使って、ポップな雰囲気のブースを展示。
日本人エンジニアの座談会でNTTドコモの津留崎氏が「どこに行ってもCiliumの名前が出てくる!」と驚いていたCiliumの開発元Isovalentのブースでは、著者が書籍にサインをして配布する恒例のイベントが実施され、ここも大人気となっていた。
●参考:KubeCon Europe 2024に日本から参加したメンバーで座談会@桜の木の下
OracleはスポンサーとなっているF1チーム、Red Bull Racingのドライブゲームを展示していたが、エンジニアにはあまり人気がないようだった。
CNCFのプロジェクトパビリオン
CNCFのプロジェクトパビリオンも紹介しよう。すでに多くのプロジェクトが卒業しているが、新たにサンドボックスとして追加されるプロジェクトも多く、新陳代謝が正常に行われていることが感じられる。
ここでも単にプロジェクトを紹介するだけではなく参加者と対話して欲しいという意図を感じる設計となっている。単にプロジェクトのコントリビューターに直近の休憩の場を与えるというだけではないだろう。
ソフトウェアアップデートのための仕様、TUF(The Update Framework)のコントリビューターでNYUの教授でもあるJustin Cappos氏も説明員として参加していた。
●参考:OpenSSF Day Japan開催。中国からの脅威から新しいOSSプロジェクトの紹介までを総括
Linkerdもプロジェクトブースに展示。WasmEdgeの部分でも紹介したが、プロジェクトのブースには参加しても企業ブースは出さないというやり方だったのはLinkerdのBuoyantも同様で、リードを獲得するというステージはもう過ぎたからというのがその背景だ。
CNCFは公式グッズ作りにも精力的で今回はプロジェクトのキャラクターを模したフーディとスウェットが登場。スウェットはNBCの人気シットコム(シチュエーション・コメディ)FRIENDSのデザインを模したデザインだ。
CNCFのプロジェクトパビリオンにブースを構えることはできなくても、液晶モニターで紹介されるという仕組みが用意されていたこともメモしておく。CNCFのサンドボックスまでには至らないが、参考としての出展という意味合いだろう。ここではIBM ResearchのActoとKINEMAをその例として挙げておく。
●参考:Acto: Automatic End-to-End Testing for Operation Correctness of Cloud System Management
●参考:https://github.com/JannikSt/kinema
こういう形で露出を行うことで、少しでも参加者の興味を惹き付けたいという意図が感じられた。
最後にKubeConではおなじみのジョブボードを紹介して終わろう。プロジェクトパビリオンに設置されたボードには多くの求人情報が書き込まれている。事前に準備したチラシを貼る準備の良い企業もあるが、多くは未だに手書きだ。
そんな中、日立の古いロゴが手描きで書き込まれていたが、これの効果は果たしてどの程度だったのか? 次回のKubeConではぜひ、日立製作所のエンジニアに質問してみたいと思う。
パンデミック以前の大規模なパーティはなくなってしまったが、ベンダーも参加者も盛んに対話を望んでいることがわかるカンファレンスとなった。2024年11月のソルトレークシティーでのKubeCon North Americaにも期待したい。
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