写真で見るKubeCon Europe 2024 ベンダーやコミュニティプロジェクトの展示を紹介

2024年6月20日(木)
松下 康之 - Yasuyuki Matsushita
KubeCon+CloudNativeCon Europe 2024の展示ブースをまとめて紹介する。

筆者が初めてKubeConに参加したのは、2017年12月のテキサス州オースティンだ。その時のショーケースを紹介した記事でも「断トツに活気のある展示ブース」を紹介しているが、毎回KubeConに参加して驚くのは常に新しいベンダーが入れ替わり参加して新陳代謝が起きていることだ。オースティンのショーケースの記事は以下を参照して欲しい。

●参考:KubeCon+CloudNativeCon、大手からベンチャーまで活気のあるブースを紹介

今回もCNCFの新しいメンバーとしてMercedes-Benz Tech InnovationやAkamaiなどがキーノートで紹介され、それぞれPlatinum Sponsorとして存在を示していた。しかしもっとも活気があるのは新興のベンダーブースだろう。今回はショーケースに参加しているベンダー、プロジェクトのブース、そして番外編として会場の外で3月21日に開催されたAIに関するミートアップを紹介する。

キーノートで紹介された新規メンバー

キーノートで紹介された新規メンバー

スタートアップとして参加しているスポンサー企業

スタートアップとして参加しているスポンサー企業

KubeConのような規模のカンファレンスではカンファレンスの時間外、つまり夕方以降にさまざまなパーティやミートアップが開催され、多くのベンダーやコミュニティが参加者の注意を惹き、対話を行おうと躍起になっている。今回参加したのは「Local & open-source AI developers meetup(Paris)」と題されたミートアップで、OllamaMistral AIなどの新興AIベンダーに加えて、DaggerのSolomon Hykes氏なども参加してデモやプレゼンテーションを行っていた。

ミートアップはStation Fという元駅舎を改造したスタートアップのための施設を使って行われた

ミートアップはStation Fという元駅舎を改造したスタートアップのための施設を使って行われた

それぞれ15分程度の時間でプレゼンテーションとデモを行うライトニングトーク形式だったが、多くの参加者が集まり、盛んに情報交換を行っていた。

Daggerのブース。最小の規模ながら注目を集めていた

Daggerのブース。最小の規模ながら注目を集めていた

Daggerは2024年2月に行われたCivo Navigateでもインタビューを行っているが、キーノートでも登壇し、今回の注目の存在だったと言える。

●参考:Civo Navigate North America 2024、元Dockerで現DaggerのCEO、Solomon Hykesのインタビューを紹介

Solomon Hykes氏。ブースでも質問攻めにあっていた

Solomon Hykes氏。ブースでも質問攻めにあっていた

スタートアップと言えるかは微妙だが、2023年のKubeCon Europeでインタビューを行ったSpectro Cloudもブースを出展していた。

●参考:エッジでKubernetesを実装する新しいプラットフォームをIntelとSpectro Cloudが紹介

Spectro Cloudのブース

Spectro Cloudのブース

他にもDaprの開発元として知られているDiagrid、Database as a ServiceのAivenなどが出展していた。

Diagridのブース。Daprの開発元としてMicrosoftからスピンオフした企業だ

Diagridのブース。Daprの開発元としてMicrosoftからスピンオフした企業だ

Aivenについては過去の記事も参照して欲しい。パブリッククラウドを使いこなすことで高可用性のデータベースを提供するフィンランドの企業だ。

●参考:マルチクラウドのDBaaSを抽象化するAivenの製品担当VPにインタビュー

Aivenのブース

Aivenのブース

オープンソースの生成型AIのベンダーとしてCNCFから何度も紹介されていたOllamaもブースを構えていた。

Ollamaのブース。最も小さくコストもかけていないが注目度は高かった

Ollamaのブース。最も小さくコストもかけていないが注目度は高かった

活気あふれるWebAssembly関連のベンダー

WebAssembly関連のベンダーブースも紹介しよう。

WasmEdgeの開発をリードするSecond Stateのプロジェクトブース

WasmEdgeの開発をリードするSecond Stateのプロジェクトブース

Second StateはWebAssemblyのランタイムであるWasmEdgeを開発するベンチャーだが、企業としてのブースは出展せずにCNCFのプロジェクトパビリオンに出展していた。創業者でCEOのMichael Yuan氏は、今回のテーマである生成型AIをWebAssemblyのランタイムから実行することで軽量かつ高速に生成型AIを使ったチャットアプリが実行できることなどを過去数回のKubeConで訴求しており、ここでも啓蒙に勤しんでいた。

CosmonicのCEOのLiam Randall氏とCTOのBailey Hayes氏

CosmonicのCEOのLiam Randall氏とCTOのBailey Hayes氏

Cosmonicは前日の併催イベントであるCloud Native Wasm Dayでユースケース(フランスの通信会社Orangeの事例)を最大限に訴求しており、非常に注目されていたと言える。

WASMのComponent Modelのプレゼンテーションを行ったTaylor Thomas氏

WASMのComponent Modelのプレゼンテーションを行ったTaylor Thomas氏

WebAssemblyの実行ファイルをコンポーネントとして組み合わせて実行するための仕組み、Component Modelを解説していたTaylor Thomas氏も、元気に参加者との対話を行っていた。

SpinをWebAssembly実行のフレームワークとして公開しているFermyonは、Kubernetesに対応した新しいフレームワークSpinKubeをキーノートで紹介していたことが印象的だった。また併催イベントではドイツのツァイスを2日目のキーノートの中で登壇させていた。CosmonicとFermyonのどちらも、一部とは言えエンタープライズ企業が本番環境でWebAssemblyを使い始めていることを訴求していた。

Fermyonのブース。常に賑わっていたのが印象的だった

Fermyonのブース。常に賑わっていたのが印象的だった

CEOのMatt Butcher氏は会場内でも大人気で、さまざまなメディアでインタビューを受けていた。

会場内でインタビューに応えるMatt Butcher氏

会場内でインタビューに応えるMatt Butcher氏

メジャーなベンダーではRed Hatが存在感を示していた。参加者がRed Hatのノベルティである赤い帽子を好んで入手していたのはKubeConのいつもの風景だろう。

Red Hatのブースはいつも大盛況

Red Hatのブースはいつも大盛況

Microsoftも規模は小さいながらもデモとプレゼンテーション主体の従来の展示を続行。

Microsoftのブース

Microsoftのブース

GitHubもIT業界で最も好かれていると思われるモナリサを使って、ポップな雰囲気のブースを展示。

GitHubのブースの中心となるキャラクターはモナリサ

GitHubのブースの中心となるキャラクターはモナリサ

日本人エンジニアの座談会でNTTドコモの津留崎氏が「どこに行ってもCiliumの名前が出てくる!」と驚いていたCiliumの開発元Isovalentのブースでは、著者が書籍にサインをして配布する恒例のイベントが実施され、ここも大人気となっていた。

●参考:KubeCon Europe 2024に日本から参加したメンバーで座談会@桜の木の下

Ciscoに買収されたIsovalentのブース

Ciscoに買収されたIsovalentのブース

OracleはスポンサーとなっているF1チーム、Red Bull Racingのドライブゲームを展示していたが、エンジニアにはあまり人気がないようだった。

OracleのブースではF1マシンのドライブゲームを使って客寄せ

OracleのブースではF1マシンのドライブゲームを使って客寄せ

CNCFのプロジェクトパビリオン

CNCFのプロジェクトパビリオンも紹介しよう。すでに多くのプロジェクトが卒業しているが、新たにサンドボックスとして追加されるプロジェクトも多く、新陳代謝が正常に行われていることが感じられる。

プロジェクトが一堂に会するパビリオンでは対話のための椅子などが置かれている

プロジェクトが一堂に会するパビリオンでは対話のための椅子などが置かれている

ここでも単にプロジェクトを紹介するだけではなく参加者と対話して欲しいという意図を感じる設計となっている。単にプロジェクトのコントリビューターに直近の休憩の場を与えるというだけではないだろう。

各プロジェクトのステッカーブースは大盛況で早々に品切れになるステッカーも

各プロジェクトのステッカーブースは大盛況で早々に品切れになるステッカーも

ソフトウェアアップデートのための仕様、TUF(The Update Framework)のコントリビューターでNYUの教授でもあるJustin Cappos氏も説明員として参加していた。

●参考:OpenSSF Day Japan開催。中国からの脅威から新しいOSSプロジェクトの紹介までを総括

TUFの説明を行うリードコントリビューターのJustin Cappos氏

TUFの説明を行うリードコントリビューターのJustin Cappos氏

Linkerdもプロジェクトブースに展示。WasmEdgeの部分でも紹介したが、プロジェクトのブースには参加しても企業ブースは出さないというやり方だったのはLinkerdのBuoyantも同様で、リードを獲得するというステージはもう過ぎたからというのがその背景だ。

Linkerdのブース。左から2人目の髭の男性がBuoyantのCEOであるWilliam Morgan氏

Linkerdのブース。左から2人目の髭の男性がBuoyantのCEOであるWilliam Morgan氏

CNCFは公式グッズ作りにも精力的で今回はプロジェクトのキャラクターを模したフーディとスウェットが登場。スウェットはNBCの人気シットコム(シチュエーション・コメディ)FRIENDSのデザインを模したデザインだ。

プロジェクトのキャラクターを模したフーディ

プロジェクトのキャラクターを模したフーディ

FRIENDSのロゴにそっくりのスウェットシャツ

FRIENDSのロゴにそっくりのスウェットシャツ

CNCFのプロジェクトパビリオンにブースを構えることはできなくても、液晶モニターで紹介されるという仕組みが用意されていたこともメモしておく。CNCFのサンドボックスまでには至らないが、参考としての出展という意味合いだろう。ここではIBM ResearchのActoとKINEMAをその例として挙げておく。

IBM Researchが開発するKubernetesのテストためのツールActo

IBM Researchが開発するKubernetesのテストためのツールActo

●参考:Acto: Automatic End-to-End Testing for Operation Correctness of Cloud System Management

Kubernetesクラスターのスケジューリングのためのツール、KINEMA

Kubernetesクラスターのスケジューリングのためのツール、KINEMA

●参考:https://github.com/JannikSt/kinema

こういう形で露出を行うことで、少しでも参加者の興味を惹き付けたいという意図が感じられた。

最後にKubeConではおなじみのジョブボードを紹介して終わろう。プロジェクトパビリオンに設置されたボードには多くの求人情報が書き込まれている。事前に準備したチラシを貼る準備の良い企業もあるが、多くは未だに手書きだ。

ジョブボードも活況

ジョブボードも活況

そんな中、日立の古いロゴが手描きで書き込まれていたが、これの効果は果たしてどの程度だったのか? 次回のKubeConではぜひ、日立製作所のエンジニアに質問してみたいと思う。

なぜか日立の古いロゴが手描きで描き込まれていた

なぜか日立の古いロゴが手描きで描き込まれていた

パンデミック以前の大規模なパーティはなくなってしまったが、ベンダーも参加者も盛んに対話を望んでいることがわかるカンファレンスとなった。2024年11月のソルトレークシティーでのKubeCon North Americaにも期待したい。

著者
松下 康之 - Yasuyuki Matsushita
フリーランスライター&マーケティングスペシャリスト。DEC、マイクロソフト、アドビ、レノボなどでのマーケティング、ビジネス誌の編集委員などを経てICT関連のトピックを追うライターに。オープンソースとセキュリティが最近の興味の中心。

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