新レプリケーション機能とは?
非同期・圧縮データレプリケーション機能
データレプリケーションでは同期元と同期先のディスクが全く同じ内容であることが理想的だ。そのため、稼働系サーバの同期元ディスクへの書き込みでは、同時に待機系サーバの同期先ディスクへの書き込みを実行して、同期先へのデータ転送が終わった段階で書き込み終了と判断している。
新機能では、同期先への書き込みを非同期で実行できるようになった。これは主にWANで使用するときに大きな恩恵をうける変更だ。
WAN環境では通常、同期元のサーバと同期先のサーバを結ぶ回線の帯域幅は、LAN環境に比べてはるかに狭いためデータの通信速度(転送速度)が遅い。つまり単位時間あたりに同期できるデータ量がLAN環境に較べて少ない。このようなWAN環境でデータレプリケーションを同期モードで使用した場合、常に同期先サーバへのデータ書き込みを完了してから、同期元サーバへのデータを書き込む方式である。そのため、アプリケーションが書き込むデータ量が多くなるとネットワークのスピードの遅さにより、同期元サーバの書き込みパフォーマンスが落ちる。つまり、アプリケーションの処理速度が低くなるという問題点があった。しかし、非同期書き込み機能を使用すればこれを防ぐことができるのである。
さらに、使用するWAN経路でデータ通信速度が非常に遅い場合は、転送データを圧縮することもできる。この非同期・圧縮機能と次に述べるリワインド機能により、新しいデータレプリケーションはディザスタリカバリへの活用がより強化されている。
レプリケーションデータを復活できるデータ・リワインド機能
ミッションクリティカルな環境においてLinuxサーバを運用する場合、その構築時には必ず、ディザスタリカバリの手段と実行方法について検討が行われていると思う。では、これまでどんな手法をとってきただろうか?
SDRのバージョン6ではデータ・リワインド機能により、Continuous Data Protection(CDP)機能を提供することができるようになっている。CDPとはデータにもたらされるすべての変更点を自動的にコピーしてバックアップし、それをユーザや管理者が必要なときに必要な内容を選んで復元できるサービスのことである。
使い方が難しそうなリワインド機能だが、操作は非常に簡単だ。まず待機側サーバ上の同期先ディスクに対するデータレプリケーション機能を一時停止して書き込みを終わらせる。それからデータの巻き戻しをユーザが定義したブックマークか、タイムスタンプを選択して行い、待機系サーバ上の同期先ディスク上に復元する。データは通常のファイルとして待機系サーバ上に復元されるため、簡単に内容を確認することができる。もし、必要なデータがなければ、その前後を自由に復元して探すことができる。必要なデータを取り出し終われば、一時停止したデータレプリケーション機能を再び実行すればよい。
この機能を使用すれば、読者のディザスタリカバリに必要とされる要件のいくつかはすでに解決できているのではないだろうか。また、先ほど述べた非同期・圧縮レプリケーション機能と組み合わせれば、WANを使用した地理的に離れた場所での活用も可能となる。