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Red Hat Enterprise Linuxってなに?

2015年12月4日(金)
平 初
この記事は、書籍『できるPRO Red Hat Enterprise Linux 7』の内容を、Think IT向けに特別にオンラインで公開しているものです。詳しくは記事末尾の書籍紹介欄をご覧ください。

RHELの概要

Red Hat Enterprise Linux(RHEL)は、Red Hatが提供する企業向けのLinuxディストリビューションです。Red Hatがソフトウェアをパッケージングし、品質管理(QA)プロセスを経て、各種メーカーのハードウェア上で動作認定した上で提供されます。さまざまなハードウェアプラットフォームで利用できます。また、契約ユーザーには、長期の製品ライフサイクルとテクニカルサポートが提供されます。このレッスンでは、RHELを使う上で知っておきたい販売形態や開発形態、サポートライフサイクルなどの仕組みについて解説します。

RHELの概要

RHELは、ノートPCからメインフレームまでを幅広くカバーする、クライアント向けおよびサーバー向けOSです。3000個以上のRPMパッケージで構成され、3000種類を超えるハードウェア認定、9000種類を超えるISVアプリケーション認定、また、現在ではIntel EM64T、IBM POWER、IBM System z向けアーキテクチャーをサポートしています。2014年6月にリリースしたRHEL 7からは64bit版のみを提供しています。

サブスクリプション契約のもとに、無制限回数のテクニカルサポートが提供されます。物理サーバー、仮想サーバー、パブリッククラウドと、幅広い環境で稼働します。

RHELは、企業や政府、自治体、研究機関など、業種業態問わず広く利用されています。日本市場では国内の商用Linuxディストリビューションのうち約85%のシェアを占めています(執筆時点)。

これまでのRHEL

バージョン リリース
RHEL 2.1 2002年 3月
RHEL 3 2003年10月
RHEL 4 2005年 2月
RHEL 5 2007年 3月
RHEL 6 2010年11月
RHEL 7 2014年 6月

RHELの歴史

昔に遡ること1993年、Red Hat Enterprise Linuxの前身となるRed Hat Linuxがありました。Red Hat Linuxは、SlackwareやDebian GNU/Linuxなどと並ぶ最古参のLinuxディストリビューションです。

Red Hat Linuxは、RPMパッケージというパッケージ管理システムを採用し、AnacondaというGUIのインストーラーが搭載された、当時では画期的なLinuxディストリビューションでした。その当時は、FTP版と言われる無償提供版がFTPサーバーからダウンロードできたり、PC雑誌の付録とかについていたり、また、サポート付きRed Hat Linuxが箱に入った状態で量販店のソフトウェアコーナーで売られたりしていました。

1990年代後半になると、SAP社やOracle社などの商用のアプリケーションがRed Hat Linux上での動作を保証するようになりました。しかし、当時のRed Hat Linuxは、マイナーバージョンアップするだけでもカーネルやライブラリの互換性が失われてしまい、企業で利用するには少々難点がありました。

そこから方向転換をして、2002年に企業向けに長期間安定して提供するRed Hat Enterprise Linux(RHEL)2.1をリリースしました。それまでのFTP版にあたるものは、2003年にFedora Core(現在のFedora)としてリリースされるようになりました。The Fedora Projectで開発されるFedora Coreは、次世代RHEL開発用のLinuxディストリビューションとして定義されました。

2002年3月にRHEL 2.1をリリースした後、2年から3年おきにメジャーバージョンアップを繰り返し、2014年6月にRHEL 7をリリースしました。

RHELの販売形態

RHELは、デスクトップ、ワークステーション、サーバー、メインフレーム向けに製品型番が用意されており、通常1年もしくは3年単位のサブスクリプション形式で提供されます。「サブスクリプション」という言葉に耳慣れない方もいるかもしれませんが、簡単に言うと保守サポート契約です。RHELのサブスクリプションは会計上、ソフトウェア資産には該当しません。

RHELには、Red Hatの直販営業もしくはRed Hat認定ディストリビューターから販売されRed Hatから1〜3次サポートが提供されるリテール版RHEL(L1-L3サポート)と、サーバーベンダーから販売されサーバーベンダーから1〜2次サポートが提供されるOEM版RHEL(L3サポート)が存在します。

どちらも同じOSとして提供されますが、大きく違うのは、どこから買うのかという点と1〜2次サポートの提供者がどこの会社なのかという点です。3次サポートとしては、どちらでもRed Hatが対応します。

また、細かいところでは、サーバーベンダーが提供するOEM版の場合には、自社のサーバーで最適に利用するためのデバイスドライバーやハードウェア監視プログラムをセットで提供して、そのサポートを提供している場合があります。

さらに最近では、Red Hat認定クラウドプロバイダーから提供される、従量課金のCCP版RHELがあります。クラウドプロバイダーから、インスタンス費用と合算で利用した分だけ請求され、個別のサブスクリプション契約は不要です。クラウドプロバイダーによっては、RHELを1時間単位で提供してくれますので、突発的なトラフィックが予想されるキャンペーンサイトなどで一時的に多数利用する場合にはリーズナブルです。この場合、RHELの1次サポートはクラウドプロバイダーが行います。

RHELの開発形態

RHELは、Fedoraが開発のベースとなっています。Fedoraから約3年間隔で派生してエンタープライズブランチが作られます。RHELに収録されているソフトウェアは、必ずしもコミュニティで開発されているソフトウェアの最新版ではなく、少し枯れたバージョンがピックアップされて収録されます。

まずはコミュニティで開発されたソフトウェアをパッケージングしてFedoraとしてリリースします。Fedoraで、バグ修正や他のソフトウェアとの組み合わせが確認されます。その結果が月日を経てRHELとなり、長期安定版として多くの人へ届けられるという流れです。

昔からRed Hatは、コミッターと呼ばれる決定権を持つ世界中の開発者をフルタイムで雇っています。以前はLinuxカーネル中心でしたが、現在では主要なコミュニティにはRed Hat社員がいる状況となっています。そして日夜、さまざまなコミュニティのプロジェクトの中で開発しています。このような個々のソフトウェアの集合から生まれる最終形がRHELと言えます。

また、RHELでは「アップストリームファースト」という開発形態を採用しています。これは、開発コミュニティに対してバグ修正や機能改善を行った上で、自社のディストリビューションであるRHELの中のパッケージに修正を取り込むというやり方です。オープンソースソフトウェアにおいて、アップストリームにマージしない独自拡張をメンテナンスするためにフォークするのは手間もコストもかかり合理的な選択肢ではありません。20年以上LinuxでビジネスしているRed Hatが導き出した最適解とも言えるでしょう。

サポートライフサイクル

Red Hat Enterprise Linuxのライフサイクルは、2012年5月に、7年から10年に延長されました。現在では、標準サポートライフサイクルで10年間のサポートが受けられるOSです。企業で利用する汎用OSの中では、最も長いサポートライフサイクルです(執筆時時点)。

しかも、この10年間のライフサイクルは、サーバー向けのRHELだけではなく、デスクトップやワークステーション向けのRHELに対しても適用されます。

サブスクリプション契約を更新すると、バグ修正やセキュリティ修正を行った更新パッケージが提供されます。そして、無制限回数のテクニカルサポートを受けられるようになります。また、バージョンアップやバージョンダウンに対する追加費用も発生しません。

Red Hat Enterprise Linuxのライフサイクル
https://access.redhat.com/ja/support/policy/updates/errata

※延長ライフサイクルフェーズは、限定的なサポートしか提供されないが、Red Hat CDNからソフトウェアを入手できる延命期間

適切な問い合わせ先

Red Hatは、年間サブスクリプションモデルと呼ばれる形式で提供されており、ソフトウェアの販売ではありません。では、Red Hatは何を提供するかというと、Enterprise Agreement(EA)という契約文書のもと、サブスクリプション契約が有効な期間だけ、製品や修正パッケージ、テクニカルサポートを提供します。

テクニカルサポートの拠点は日本を含む世界中にあります。日本で購入したサブスクリプションでは、日本のオフィスに勤務するサポートスタッフが日本語もしくは英語で対応します。カスタマーポータルのグローバルサポートサービスのページから新規サポートケースの受付およびサポートに関するSLAなどの情報を提供しております。

カスタマーポータル - グローバルサポートサービス
https://access.redhat.com/support/

Bugzillaをバグ報告先だと思われて、直接Bugzillaへ報告されている方がときどきいます。そのまま報告されてもサポートケースに紐付いていない報告は何もコメントもなく未着手になる事があります。有効なサブスクリプション契約をお持ちの場合にはカスタマーポータルからサポートケースをオープンして頂き、そこでテクニカルサポートがバグだと判断して、開発チームへエスカレーションする仕組みになっています。では、現在のBugzillaは何かというとテクニカルサポートと開発チームとの間のバグ追跡システムという位置づけが強いです。

ちなみに、サブスクリプションを購入していない時点において、Red Hatに対して質問したい場合の質問先もあります。レッドハットへのお問い合わせフォームがあり、ここから質問すると、Red Hatの営業が購入前の質問に対して答えてくれます。

(2019年3月19日更新)サポート内容に関する記述を一部修正しました。

できるPRO Red Hat Enterprise Linux 7

平 初 著/できるシリーズ編集部 著
価格:3,000円+税
発売日:2015年6月25日発売
ISBN:978-4-8443-3839-0
発行:インプレス

できるPRO Red Hat Enterprise Linux 7

新人のIT管理者向けにビジュアルを使い、RHEL 7の基本操作、サーバー構築について、ハンズオン形式で解説します。Red Hatログインのアカウントを作成し、RHEL 7の評価版のダウンロードから始め、OSのインストールと操作の基礎を学んだあと、企業内で利用する各種サーバーを構築します。RHELは、企業内の基幹業務システムの運用を目的としたOSであるため、システム管理、各種サーバーの構築など、運用管理の応用に重点を置いています。また、RHEL 7で一新された、新しい管理手法を学ぶ技術者にも役立つ内容です。

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レッドハット株式会社

サービス事業統括本部 ソリューション・アーキテクト部
ソリューションアーキテクト&クラウドエバンジェリスト

商社系システムインテグレーター、外資系ハードウェアベンダーを経て、現在、レッドハット株式会社にてクラウドエバンジェリストとして活躍。2006年に仮想化友の会を結成し、日本における仮想化技術の普及推進に貢献した。

主な著書に「KVM徹底入門」(翔泳社)、「Xen徹底入門」(翔泳社)、「100人のプロが選んだソフトウェア開発の名著」(翔泳社)、「Red Hat Enterprise Linux 7がやってきた」(日経ITpro)がある。

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