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「人間×センサー」で進化する組織!

2008年12月1日(月)
矢野 和男

既に起きた未来

 本連載では、センサーを活用した新しい情報技術が社会を変えることを書きたい。その時、従来のWebなどの情報技術は、現在とは質的に違ったものになる。

 将来のITの議論において、センサーというキーワードは度々出てくるが、現実に何が起こるかの将来像を具体的に書いているものを見たことがない。しかし、この連載は違う。既に筆者らは、センサー情報を使った新しいワークスタイルやライフスタイルで大きな実績を上げており、今回紹介するのは、現実に起きていることである。もちろん、現実に起きている場所は限られているが、今後間違いなく広がる。ドラッカーの言葉を借りれば、「既に起きた未来」である。

 センサーを用いた情報技術は、説明が難しい。特に、人や組織のセンサー情報は、これまでのモノや環境に関するセンサー情報とは質的に異なる。人には心がありメンタルモデルがあるからだ。これまで、どんなシステム設計図にも描かれていないメンタルモデルが重要なのだ。

 今回は、物語仕立てで、既に、われわれ自身が組織運営の中で実践し、また実際のコンサルティングを通じて顧客に提供したエッセンスを紹介する。机上の空論ではなく、読者の皆さんが日々戦っている問題の本質が含まれているだろう。

 それでは、物語の第1話を始めよう(名前などは仮名)。テーマは「仕事を楽しむ会社」の誕生である(図1)。

第1話:新製品開発の現場で起きた本当の話

 新IT製品の開発を担当しているマネージャの日高さんは、1年を振り返って、その前の10年分にも相当する密度の年だったと感じていた。ただ忙しかったというのとは違う。

 常に自分が成長している感覚があった。

 実際、仕事の進展はめざましかった。しかし、それは単に当初の目標が問題なく達成できたというのとは違った。見えないことが見えてくる度に、それを超える大きなものが見え、自分と目標とがともに成長しているような感覚。それを繰り返すうち、未知のものでも挑戦すればなんとかなるという感覚がいつか自分の中にできていた。先日、あるプロジェクトが一区切りついた打ち上げの席でこう話すと、一緒にやってきた部下も同じ感覚を持っていることを知った。

 あらためて振り返れば、これは1年前に導入した「新しいIT」が起こしたことだ。名前は「ビジネス顕微鏡」。センサーで業務を計測するということで、最初は「また管理を厳しくするのか」と思った。実際は、全く違っていた。

 それまでもITは導入されていた。グループウエア、予算経費管理、資材発注、業務進ちょく管理、人事管理、ナレッジマネジメントなどだ。正直、これらは自分の業務を大きく変えることはなかった。それまで紙で行っていた手続きが、IT上で行えるようになっただけだ。便利なところもあったが、具合の悪いところもあった。従来の手続きは、直接部下と対話するきっかけになった。それが単にITに入力し、承認するかしないかの無機質なものに置き換わってしまった。

 センサーによるITは、大げさに言えば、日々の業務が新たなものを生む舞台に生まれ変わった。オフィスの入り口の前に、「世界で最も仕事を楽しむ集団になる」というパネルが数ヶ月前に掲げられていた。それはメンバの限りない進化を象徴するようであった。ITによって、このような変化が可能とは、夢にも思わなかった...。

株式会社日立製作所
1984年日立製作所入社以来、中央研究所にて半導体の研究、特に世界初の単一電子メモリの室温動作、携帯電話用プロセッサなどのシステムLSIの研究を行う。現在、センサー情報を使った新しい生き方や働き方の研究と事業化を進めつつ、自ら実践している。中央研究所主管研究長と基礎研究所人間情報システムラボ長を兼任。工学博士。IEEE Fellow。http://www.hitachi.co.jp/

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