自社サイトを見つめ直す
CMSという概念が作り上げるもの
次にCMSというものが何を作り上げるものなのか、という点について説明をしていきます。
CMSとは、コンテンツ・マネジメント・システムの略称であり、このシステムというのがソフトウエアやツールを指しているように思われている現実があります。システムと言うからには、物事の流れを指しているわけであり、単なるソフトウエアやツールを指しているのではありません。
要するにCMSというのは、「コンテンツを管理するための流れもしくはそれらを行うために必要な要素の集合体」という意味が正しいと言えます。CMSを導入するということは、この流れを構築することにほかなりません。
では、CMSという概念は何を作り上げるのでしょうか。Webサイト全体を考えると大きな話になってしまうため、1つのコンテンツ「ニュースリリース」が公開されるまでの流れを例に考えてみましょう。
まず、WordなどでWebサイトに掲載するニュース文章を検討します。文書校正ののち、問題がなければリリースするためのWebページ形式に加工を行います。こうして最終的なアウトプットをチェックし、公開の承認を得ます。この流れを経て初めてニュースリリースは公開されます。
ニュースリリースという1つのコンテンツだけでもさまざまな工程を経ていることが分かると思います。皆さんも日常業務の中でこのような作業を行っているのではないでしょうか。
一言でいえば、CMSというのは、一連の作業の流れを明確に規定したもので、ガイドラインなどと同じ機能を担うものなのです。
こう聞くと、Webサイトのコンテンツ更新などとは全く違うと思うかもしれません。しかし、コンテンツを更新できるようにする、またはコンテンツを作れるようにする、というのもコンテンツ管理の中では重要な役割を持っているのです。
なぜならそれらの工程がボトルネックになってしまうようであれば、一連の作業の流れがそこで分断されてしまうからです。もちろん、それらの流れを作成して、コンテンツ作成の部分を外部の制作会社というのも普通のことであり、そういった枠組みもあります。
Webサイトを管理・運営する上でどういった枠組みを採用して行うのかを規定したものがCMSであり、これを明確にし利用することで、すばやくミスのない情報の提供をすることができるようになると言えます。
CMSがもたらすもの
ここまで読んでいただいた読者の方であれば、CMS導入の骨格がだいぶ理解できたことと思います。
要するに、「計画 → 選定 → 設計 → 導入 → 移行」という流れがすべて行われて初めてCMS導入を成し得ることができると言えるわけです。
では次に、CMSがもたらすものについて説明をしましょう。そもそもなぜCMSの導入を行いたいのでしょうか。それにはさまざまな要因があると思います。
ビジネスツールの1つとして、明確にWebサイトが確立されている現在においては、コンテンツ量も非常に膨大になります。もちろんそれに合わせてWebサイトにかかわる人員も非常に多くなりますし、持っている知識や能力についてもさまざまなばらつきが出てきているはずです。
CMSの導入は、これらの問題を解消するために行われるべきものです。ただ1つ、運用を楽にするという目的での導入は、間違った認識であることを心にとどめておいてください。
多くの人員によってコンテンツを作成すれば、それまでに比べて作業負荷が軽減されます。しかし、増えたコンテンツを新たに管理することや、コンテンツ作成者自体を管理することも必要になってきます。このため、運用そのものが楽になるということではなく、より有益な情報を、よりスムーズにユーザーに提供することができるようにするのがCMSの本来的な役割であるということを理解してください。
具体的なCMSの効果としては、以下のことが明確になり、効率的な運用が可能となります。
・コンテンツホルダが誰であるかの明確化
・運用フローの明確化
・指示系統の明確化
・サイト構造の統一化
・情報のつながりの明確化
これらが明確になることで、CMSはユーザーに対して有益な情報をすばやく提供するというメリットを届け、運用者に対して明確な指示系統を構築し、コンテンツがスムーズに公開される流れを作り、サイト構造を統一してくれるというメリットを届けてくれます。つまり、CMSは、企業とユーザーの関係性をよりよくしてくれる優良な仲介者となってくれるわけです。
このように、CMSがもたらしてくれる効果にはさまざまなものがあります。これら効果を受けるためには、しっかりとした事前の計画が必要であり、それができていなければCMSと上手に付き合うことはできないのです。
【参考文献】
「Webブランディング成功の法則55」生田昌弘/株式会社キノトロープ著 発行・株式会社翔泳社(2005)
「CMS構築成功の法則」生田昌弘+門別諭/株式会社キノトロープ著 発行・技術評論社(2007)