コネクテッドなあなたが実現する、コネクテッドな世界
この業界は常にクールで、イノベーティブで、そして高価なハードが新しい市場にどんどん投入され続けるわけであり、ラップトップや大画面TV、それに携帯電話などでも革新がやむことはない。
いまだに自分の車の窓の開閉にハンドルを回しているだろうか?
昔みたいに鍵で直接開錠しているだろうか?
便利な機能というものは、いずれ何らかの段階で納得できる値段に落ち着くものだ。ただただ価格のことばかりをやり玉に上げることの問題とは、技術がもたらす利便性や価値について、そしてなにより重要なことだがコンシューマ製品を買うことによってもたらされるであろうアイデンティティについての考慮に欠けている点だ。
この考えに同意できないだろうか? だとしたらあなたはある事に気づいていない。昨今、人々がプロダクトやサービスに接続するようになっているのは何も自分自身がやりたいことの為だけでなく、自分たちがどういう存在なのかを表すためでもあるのだ。
テクノロジーは半導体やハードウェアにまつわることと同様に、個人のアイデンティティーになりつつある。もしまだ信じられないのであれば、なぜ街を歩いているとかならずBeats by Dreのヘッドフォンを付けてる人を見かけるのかを考えてみるといい。彼ら全員がオーディオについて深く調べ上げ、価格を比較した結果、ベストな買い物をしたのだと思うだろうか?
それはありえない。彼らがそうする理由はアイデンティティだ。この側面にBのロゴがあしらわれたヘッドフォンは自分というイメージを周りに投影するものだ。周りからそう見られたいと思うイメージかもしれないし、周りがあなたをその様にみているというイメージなのかもしれない。だがはっきり言えることは、これらのテクノロジーは現にアイデンティティーとなっているということである。
コネクテッドデバイスが一般的となる世界の出現は、アイデンティティに深くかかわることだ。事実物事を前に推し進めるものはハードではなく、最も”ソフト”なソフトウェア、つまりはあなた自身になる。あらゆるデバイスがつながり、家のルンバにもうじき戻るから掃除機をかけとくよう自分の車から命令を送れるようになるのは素晴らしいことだろう。しかしこれらの素晴らしいハードウェアはあなたを、あなたのデータを、そしてあなたのアイデンティティを中心としてあるものだ。
このことはある意味、私たち自身がテクノロジーの世界の根本になりつつあるといえる。あらゆるテクノロジーとデータは我々を中心として根差し、活用されるようになる。見方を変えてみよう。たった今、車が家のデバイスに命令するという例を挙げたが、これはコネクテッドな世界で一般的に考えられる光景だ。だがここで本当にすごいことがどのように起こるのかという点についてみていきたい。
Aumeoを例に挙げてみる。この企業は誰にとっても最適な新しい音楽の提供手段を有している。ある意味あなたの為だけのデジタルミュージカルを作っているようなものだ。そしてこれはクラウドやIoTとつながるとき真価を発揮する。朝起きてSonosを付ける場面を想像してほしい。息子は昨晩ビーバーボーイを観るのにそれを使ったが、今利用しているのはあなただとハードは理解し、クラウドから”あなた”にあったものを探してくる。
もうひとつピンと来ないだろうか? では車に乗り込んだ時を想像してほしい。車は座席に座ったあなたの事を検知し、カーステレオを調整する。オフィスに入るときはカーステレオの代わりにヘッドフォンが調整される。
結局のところ、コネクテッドな世界が実現するものとはコネクテッドなあなたである。
それはあなたのもう一つの人格であり、二者は同じ世界でせめぎあうことになる。
重要なのはハードウェアではない、データだ。そしてこれはIoTの世界が非難されるもう一つの要因であるセキュリティの懸念にも関連する。価格云々よりもっと深い問題ではあるが、これはコネクテッドな世界においては過去のものになるであろう時代遅れな観点によるものだ。
現実はどうかというと、コネクテッドな世界をよりパワフルなものにするための目先の課題とは、あなたおよびあなたのデータを守るための強固な防壁を築くことではない。むしろそれらデータを開放し、デジタルなあなたが周りのものすべてと自由につながることだ。つまり、このストーリーにおいてセキュリティは認証ほどには重要ではないということだ。
結局のところ、コネクテッドなあなたが実現するコネクテッドな世界では、アイデンティティがどこまでも抽象化され、物理的制約から解放されたものになるであろう。
もしBeatsの浸透が、アイデンティティがテクノロジに流れ込むことを告げる開始の銃声だとすると、IoTはその次の段階を告げるものだ。そしてBeatsの時同様、価格のことなどだれも気にしないのだろう。
ReadWriteJapan編集部
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