連載 :
  ReadWrite Japan

株式会社Fablicの”些細なニーズ”に応える開発とは

2016年7月16日(土)
ReadWrite Japan

- バイク専門のフリマサービス『RIDE』を展開した理由はなんですか?

坂田氏:会社としては、フリマアプリ『フリル』だけでずっとやっていくことは元々考えていませんでした。そこで、僕らの経験のあるフリマビジネスを軸にビジネスチャンスのある分野は今どこか? と探した時に見つけたものが”バイクの中古売買”でした。フリルもそうだったのですが、SNSやオークションサイトを使って個人間で売買している人は元々いたので、僕らにもやれるチャンスはあると考えたためです。

すでにバイク専門の中古売買サービスを展開している企業は、売買が成立した際は整備され、品質は高いとは思いますが、その分だけ購入価格もそれに見合ったものになります。今年の3月に新しくローンチした『RIDE』では、それらの中間の工程を省き、個人間で安価にバイクの売買ができる場を提供できればと考えています。

”小さな工夫と地道な積み重ね”が競争優位につながる

- サービス開発にあたって工夫されたことや、他社との差別化となるポイントはなんでしょうか?

坂田氏:開発前に色々な人にインタビューをし、徹底的にユーザーの声を拾いました。私自身バイクの免許や単車を持っているわけではないので、実際のやり取りをすることがない分、リアルなユーザーの声をヒアリングして反映するようにしました。たとえば、車種を選ぶ時もメーカーや排気量があってとか、どういう順位で選ぶのが自然か、などですね。

その中で分かったことは、当たり前のことですが、「実際の現物を見なければ購入の意思決定ができない」ということでした。慣れている人は現物を見ずにやり取りをしているのですが、そんな方でもエンジン音の動画をお互いに送りあって、ちゃんと物が動くかを確認するなど、何かしらの「確認」のプロセスが存在していました。そのため、RIDEでは取引のフローの中でユーザー同士が直接会って現物を確認するステップを組み込みました。

大半の方は、現物を見て購入を決定することが多いので、自分がいる距離から何10キロという絞られた範囲で商品を検索できる機能を初期の段階から実装し、単純な車種名とかスペックだけではない、ネットとリアルを融合した検索方法を機能として組み込みました。

UI面では、出品者の手間を省くために、登録時に質問にいくつか答えると、基本的な商品情報が自動で入力されるようにし、なるべく操作が簡単に感じられるような流れにする工夫をしました。

また、利用者視点で写真の枚数は最大10枚程度まで掲載できるようにしました。バイクは実際に使っていると傷がつくので、そのような箇所の写真がきちんと載せられるように、買い手も納得して買えるように、写真の枚数なども多めにしてあります。ここも工夫のポイントですね。

『フリル』自体は、フリマアプリというワードがない時代に最初に作ったフリマアプリだからこそ、最初の段階で人が集まってくれ、先行優位な状況であったと思います。しかし、『RIDE』に関して言うと、先行しているサービスが複数ありました。同じような機能性では絶対に利用してもらえないので、他のアプリを使っている際の「ここがあったら良いのに」といった声を集め、サービスに実装していきました。

本質的に必要なのは「いいチーム」であること

- Fablicに入ったきっかけはなんですか?

坂田氏:ユーザーが喜んでくれるサービスを作ることが、自分のやりたかったことであり、Fablicへの入社理由でした。また、知り合いが経営陣だったということも理由の1つです。組織にはチームリーダー的な存在はいますが、リーダーの上長は社長。すぐに相談や意見交換ができる環境にあります。また、小さな組織だからこそ、自分の影響力をちゃんと出せるところもやりがいではあります。

コミュニケーションの面で気を付けているところは、情報共有ツールのひとつにしても、誰でも見られるような状態を作るように心がけています。また、お互いの日報も見られるような状態であり、なるべく会社全体でチームの隔たりができないように意識していますね。このフロアも社長のこだわりでワンフロアになりました。フロアを分けたりパーティションを作ったりしたくないというこだわりがあり、見通しの良い雰囲気のオフィスにしています。そして、そのこだわりが実際の組織の空気感に強く影響してると思いますね。

開発体制としては、『フリル』も『RIDE』も、エンジニアとかデザイナーが事業責任者のアイデア出しの段階から参加するようにしています。デザイナーから出てきたアイデアに対しても、エンジニアの視点で意見を言っています。どんな方法で、こう作ったほうが早いとか。

色々な方とのディスカッションの中でサービスを作っていくことがすごく楽しいんです。僕自身、デザインは好きだけど自分の能力が高いとは思っていません。いざ作るにあたって、エンジニアとデザイナーの目線って使い分けなきゃいけない。それを一人でやるのは厳しいと思っています。

”さまざまな立場の方とチームとして一緒に何かを作る”という部分は崩したくないので、「いいチーム作り」をずっと追いかけていきたいです。そのためにも、より良いエンジニアとはどういう人なのか? より良いチームとして、どんな会社だったらみんなの生産性が一番上がるのか? などを追求していきたいです。

今後、苦しくなる時もあると思いますが、本質的に楽しければ踏ん張りが効いて最後まで頑張れると思っています。チームで楽しく仕事ができる環境、そんな組織をつくるために貢献できる存在でありたいですね。

- さいごに、坂田さま個人としての今後の展望を教えてください。

坂田氏:10年後どうなりたいかなどは考えないようにしていて、1~2年後にいかに楽しいことをやるかというところを徹底的に考えていきたいなと思っています。その時に一番面白いなと思うものにいかにアンテナを張るか? だと思っており、それを引き続き実践していきたいですね。もっと野望っぽいことを話した方が良かったかもしれませんが(笑)

- いや、とても等身大で素敵です(笑)

坂田氏:直近では、『RIDE』の事業自体を大きくするという目標があるので、短期的にはそれにコミットしていきたいと思っています。長期的な話だと、独立やフリーでやることなどはまったく考えていません(笑)。アプリなどを作っている段階で、やはりデザイナーや他のエンジニアの方とのディスカッションの中で作品を作っていくのがすごく楽しみです。

先ほどもお伝えしましたが、僕自身デザインは好きだけど能力が高いわけではないですし、エンジニアとデザイナーの目線を一人で使い分けるのは困難だと思っているので。本当に尊敬できるデザイナーらと一緒にチームとして何かを作りあげるプロセスは、よいアウトプットのためにも絶対に崩したくないです。

以前、社長らと話していたのですが、アップルがiTunesでも儲けてiPhoneでも儲けたように、企業がトップで成長し続けるためにはビジネスの中心をどんどん自分たち自身で変えていくべきだと思っています。”いかに少し先を見据えて面白いものを創り出すか”が大切だと思いますし、それにチャレンジしていきたいですね。

- ありがとうございました。

ユーザーの声を徹底的に集め、反映する。ネットとリアルを融合した検索機能を組み込むなど、小さな工夫を地道に積み重ねていくことで、『RIDE』はユーザーに必要とされ続けているのだろう。すべてはユーザーにとってのより良いプロダクトを生み出すために。決して派手ではない、地道にヒトとモノに取り組むこの姿勢こそが、人気サービスを作る開発者の真の姿であり必要な要素なのかもしれない。

----------------------------------------

今回取材した方

株式会社Fablic アプリエンジニア 坂田 晃一(さかた・こういち)氏

山口県出身。首都大学東京大学院システムデザイン研究科修了。
学生時代から働いていた会社で4年間iOSアプリの開発を経験し、2015年1月に株式会社Fablicに入社。日本初のフリマアプリ『フリル』の開発に携わる。同年夏からは新事業であるバイクのフリマ『RIDE(ライド)』に立ち上げから参加し、現在はiOS/Android両方のアプリ開発を担当している。モットーは「サービスではなく価値を創りだす」こと。

ReadWrite[日本版] 編集部
[原文]

※本ニュース記事はReadWrite Japanから提供を受けて配信しています。
転載元はこちらをご覧ください。

連載バックナンバー

Think ITメルマガ会員登録受付中

Think ITでは、技術情報が詰まったメールマガジン「Think IT Weekly」の配信サービスを提供しています。メルマガ会員登録を済ませれば、メルマガだけでなく、さまざまな限定特典を入手できるようになります。

Think ITメルマガ会員のサービス内容を見る

他にもこの記事が読まれています