UNIX系OSを比較検討する~まとめ

2009年7月10日(金)
大村 幸敬

これまでに検討したサーバーOSを振り返る

 連載5回にわたって4カテゴリ、11種類のサーバーOSを見てきました。ここで全体を振り返ってサーバーOSの特徴について総括していきましょう。

 各カテゴリによって、業務アプリケーションの対応状況は大きく異なり、そのため各OSで実現できる機能に特色が出ていました。

 Windows Serverは圧倒的シェアを持つWindowsクライアントの管理OSとして、そして近年は各種のアプリケーションが対応を進めたことから、基幹系アプリケーションの稼動プラットフォームとして幅広い環境で利用されていました。

 商用Linuxはオープンソース系プロダクトの稼動プラットフォームとして確固たる地位を築いているほか、UNIXのマイグレーション先として基幹系での用途が拡大しています。

 フリー系のOSはサポートはないもののオープンソース系のプロダクトを使用して高コストパフォーマンスを得るために利用されているほか、Linuxの学習用途で利用されています。

 UNIX系はハードウエアも含めて高い信頼性を提供できることから、主に基幹系の業務で利用されています。一方UNIXであってもMac OS X Serverはクライアント管理用OSとしての機能を拡充しており、教育機関におけるクライアントの管理サーバーとして利用されることが多くなっています。

 運用・構築への適合性という点では、OSを変更することによって得られる各種のメリットと運用・構築にかかる難易度やコストの増加のバランスをとることになります。この点ではよりメジャーなOSの方が受け入れられる可能性が高く、Windows Serverの採用を増やす要因となっています。一方で同じWindows ServerであってもWS2003が広く利用されすぎた結果、WS2008のユーザーインターフェースや設定内容変更にかかる抵抗感が多くなっているというマイナス面もあります。

 またUNIX/Linux/フリー系といったサーバーOSにおいては、シェルという共通のインターフェースがあることと、OSアーキテクチャの概念(すべてをファイルのI/Oで表現する)が共通しているため、1つのOSに習熟するとほかのOSへの移行も容易に行えるというメリットがあります。

 運用管理ソフトウエアへの対応としては、エージェントの基本機能はフリー系を除くほとんどのOSに対応しており、異種混合の環境であってもシステム全体の統合管理が可能な状況と言えます。運用監視ソフトウエアは数多くのオプションが利用できますが、ミドルウエアの監視機能など一部の機能で対応OSを選ぶものがあります。その点については注意が必要です。マネージャについては対応にバラツキがあるため、LinuxやUNIXが主な環境であっても、運用監視サーバーだけはWindows Serverを求められることが多いようです。

 サポート期間については基幹系で使われるUNIXは非常に長期にわたってサポートされ、安心感があります。一般の商用OS(Windows/商用Linuxなど)は、5年~10年程度のサポートが提供されます。逆にサポートが重視されないオープンソースのものはコミュニティーによる対応でも2年程度であり、安価である代わりにOSを次々にバージョンアップしていくことを推奨しています。

 仮想化への対応としてはUNIXが別格です。独自ハードの機能と組み合わせた高度な仮想化環境が提供されており、機能だけで見た場合はIAサーバーに比べて大きなアドバンテージがあります。一方、IAサーバー上の仮想化はここ数年で伸びてきた領域であり、技術的には最も面白い部分といえるでしょう。Windows/商用LinuxなどではサーバーOSがハイパーバイザの機能を持っていること、そしてハイパーバイザによってその上で稼動するサーバーOSが限定されるという2点を押さえ、今後も情報を追いかけていく必要がありそうです。

No. 評価ポイント コメント
(1) 業務系アプリケーションの対応状況 OSカテゴリにより、オープンソース系、基幹系、クライアント管理系など、得意な業務アプリケーションが異なる。
(2) 既存運用・構築経験への適合度 どのOSであっても既存と同じOSが選定される傾向が強い。UNIX/Linux/フリー系はUNIXという同様の概念を持つため相互の変更障壁は小さい。
(3) ハードウエアの対応状況 OSシェアが大きくなるとハードウエアの対応状況も良くなる。国内/海外のメーカーによっても対応状況は大きく異なる。
(4) 運用系ソフトウエアの対応状況 基幹系ほど統合運用の考えが強く、よく対応されている。Windowsはマネージャとして存在感。
(5) OSのサポート期間 UNIXは10年程度、通常の商用OSは5年程度。フリー系は早期にバージョンアップすることが必要。
(6) 仮想化への対応状況 UNIXはハードとの組み合わせで強力な仮想化を実現。IAサーバーの仮想化は混戦模様で今後に注目。

表3:サーバーOS評価の振り返り

インテック
株式会社インテック ITプラットフォームサービス事業部所属。社内のLinux/OSS事業立ち上げに参画後、金融機関を中心に大規模システム基盤の提案・構築・運用サポートを担当。
Linuxから仮想化を経て、現在はクラウドの中身が気になる日々。
http://www.intec.co.jp/

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