Microsoft + OSSでどうやって世界を変えるのか―“Microsoft + OSS” Meetupレポート
OSSコミュニティとマイクロソフトのコラボによる「“Microsoft + OSS” Meetup」が、日本マイクロソフトのパートナー向けイベント「Microsoft Japan Partner Conference 2017 Tokyo」の中で開催された。
Microsoft Azure上でのOSSアプリ操作を体験するテクニカルワークショップ、OSS関連団体のキーパーソンが“Microsoft + OSS”について語りあうパネルディスカッション、ライトニングトーク大会の、3部構成で実施された。
AzureでWordPress Linuxを動かす体験ワークショップ
テクニカルワークショップではまず、Azure上のOSSの事例が紹介された。日本郵船グループMTIではコーポレートサイトをAzureに移行、CMSにWordPressを採用し、KUSANAGIで高速で安定して動作させているという。
読売新聞社の事例では、ポータルサイトをAzureに移行。Linuxや、MariaDB Galera Clusterデータベース、nginx、Azure Load Balancerなどを組み合わせた構成で、迅速にスケールアウトするようになったという。
そして、ワークショップの実作業に入った。題材は、AzureのPaaSであるApp ServiceのWebAppsを使って、Linux上のWordPressを動かすというもの。Azure Portalへのログインや、Marketpladeでの選択、データベース作成などのデモを見て、各自それぞれAzureの環境を体験した。
MicrosoftはOSSでどう変わったか
パネルディスカッションは「Microsoft + OSSでどうやって世界を変えるのか」というテーマで開催された。パネリストは、吉田行男氏(株式会社日立ソリューションズ/OSSコンソーシアム 副会長/オープンソースビジネス推進協議会 理事)、宮原徹氏(株式会社びぎねっと/OSPN)、黒坂肇氏(サイオステクノロジー株式会社L/日本OSS推進フォーラム 副理事長、広報部会長)、佐藤久氏(日本マイクロソフト株式会社)。司会は本誌「Think IT」編集長の鈴木教之氏が務めた。
最初の話題は「なぜMicrosoftがOSSか」。佐藤氏は、「Microsoftが考えているのは『Azureをいちばん安心して使えるクラウドサービスにしよう』ということ。トラディショナルなITでは市場は伸びない。市場を倍にしたいので、垂直統合の囲い込みをやめる」と説明。これを黒坂氏は「かつてMicrosoftとOSSは敵対していたが、それは同じ円の中だった」とまとめた。
一方、イベント「オープンソースカンファレンス」を開催している宮原氏は「世の中がクラウドベースになったので、日本マイクロソフトが普通に参加するようになった。プロダクト主体から脱却してきているようだ」と感想を述べた。
「Microsoftの社内文化は変わったか」という話題について、佐藤氏は「わかりやすいのは、iPhoneとMacbook(笑)。あと、OSSのタレントが増えた」という点を挙げた。また、宮原氏が「昔に比べると、押しつけ感がなくなった」とコメントすると、佐藤氏は「改宗はさせないポリシー。使いなれた開発言語やツールを使ってもらう。ぶっちゃけ、Azureを使ってもらえればそれでいい(笑)」と答えた。
そこから、Microsoft社内で社員の評価はどう変わったかという話に進み、佐藤氏は「クラウドをやっていると、社員の評価のしかたも、勘定項目も、フィールドの組織も変える必要がある」と発言。宮原氏は「ユーザーさんも変わった。いままではベンダーにおまかせだったが、パートナーとして入ってくる人を求めるようになった」とコメント。吉田氏は「パートナー対応も変わった」と語った。
黒坂氏が「OSSの人とWindowsの人の、横のつながりが課題」という話題を振ると、佐藤氏は「OSSはハブであり、ベストプラクティスが使える。OSS組もWindows組も、アプリケーションのレイヤーで話すのがいい。特にクラウドのプラットフォームで」と発言した。
最後に吉田氏が「ITの使い方が変わってきている。昔は効率向上だったが、今は自分のビジネスを大きくするのが目的となっている。そこで特定の技術にこだわっていると大きくできない。Microsoftのサービスもうまく使うとよいのでは」とまとめた。
総勢13人によるライトニングトーク大会
ライトニングトークでは「クラウド(Azure)上で進化を発揮する素晴らしいオープンソースソフトウェア。もしくはそれを使った何か(?) 素晴らしいこと」をお題に、13人が登壇して5分ずつプレゼンした。
小林佑輔氏は、「OSSが働き方も変える」ということで、地方でのリモートワークについて話した。自身、九州に移転したという。
Neo4jユーザーグループの案浦浩二氏は、好みにあったコーヒーをガイドしてくれるサービスをグラフデータベースで実現した話をした。
小薗井康志氏は、CMSのDrupalを紹介した。
クリエーションラインの木内氏は、AzureでHadoopを使うHDInsightを紹介した。
岡田忠氏は、Web-GISサーバー「eコミマップ」を紹介。平将門の陣が置かれた場所から古地図の地形を見て昔は川が流れていた場所を知り、さらに液状化マップを重ねてみせたり、下妻駅周辺の東日本大震災で液状化した土地が古地図を重ねると沼地だったと見せたりと、古地図と防災とを結びつけた。
内田太志氏は、Azureで動くオープンソースのWebデータベース「プリザンダー」を紹介した。「脱Excel」を掲げており、表形式でデータを表示し、クロス集計やガントチャート、バーンダウンチャートなどの機能に対応している。さらに、バージョン管理機能やアクセス制御、Active Directoryでのシングルサインオンなどにも対応しているという。
ブラック・ダック・ソフトウェアの梶原史雄氏は、自社の、OSSの自動識別や管理のソリューションについて紹介した。
OSSコンソーシアムの西野大介氏は、社内で作った大がかりなシステムが失敗したが、その認証基盤が別の案件で導入された事例を、ユーモラスに語った。
合同会社リトルビッツの津村彰氏は、自社を支えるOSSとして、WordPressと必要なソフトを最適設定してパッケージングした「KUSANAGI」を紹介。自社コーポレイトサイトが秒間50アクセスに耐えて安定している例などを語った。
TIS株式会社の倉持健史氏は、インフラ構築・テストの自動化フレームワーク「SHIFT ware」を紹介した。Excelでパラメータを記述して、AnsibleやServerspecのコードを生成するという。10月公開予定。
日本PostgreSQLユーザ会の高塚遥氏は、「OSS屋がAzureに入門してみた」として、Azure上にPostgreSQLのHAクラスタを組んだ体験談を語った。
日本openSUSEユーザ会の武山文信氏は、Linuxディストリビューション「openSUSE」に関する国際会議「openSUSE.Asia Tokyo 2017」を10月21〜22日に東京で開催することを紹介した。
パネルディスカッションとライトニングトークの模様はThink ITのYouTubeチャンネルでアーカイブを公開している。
※機器トラブルにより冒頭の音声が聞き取りづらくなっております予めご了承ください
連載バックナンバー
Think ITメルマガ会員登録受付中
全文検索エンジンによるおすすめ記事
- オープンソースカンファレンス2012 Fukuoka
- MSが「Azure IP Advantage」を発表、インテル「BigDL」をオープンソース化、ほか
- そもそもWindows Azureとは
- サーバーレスな事例が次々登場―ServerlessConf Tokyo 2016レポート
- 「第9回 日本OSS貢献者賞・日本OSS奨励賞」受賞者を選定
- オープンソースカンファレンスに行こう!OSC浜松、OSC福岡レポート
- プライム・ストラテジー、実行時間3ミリ秒台、秒間1000リクエストを実現するWordPress実行環境「KUSANAGI」を発表
- #6 KUSANAGIエバンジェリスト登場!
- 東日本大震災支援緊急企画「OSSチャリティーセミナー」レポート
- クロスプラットフォーム開発を始める前に