第2回:ナレッジマネジメントを具現化するツール (2/3)

エンタープライズ・サーチ
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第2回:ナレッジマネジメントを具現化するツール
著者:アイ・ティ・アール  上村 陽子   2006/4/19
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ナレッジマネジメントとは

   ここでナレッジマネジメントについて触れておきます。

   ナレッジマネジメントとは個人の経験や業務ノウハウなど企業にとって有益であるにもかかわらず形式化されていない情報(暗黙知)を形式化し、共有・再利用可能にするための情報管理のことです。

   企業の生産性向上へ向けた取り組みは、これまで様々な方法によって行われており、1990年代に注目を集めたBPR(注1)はその代表です。しかし、業務プロセスの効率化のみに照準をあてる方法は工場などの定型化されている業務の効率化には一定の効果をもたらすものの、ホワイトカラーの生産性向上に関しては、「属人的なノウハウが伝達できない」などの理由から企業の長期的な成長を阻害する可能性があることがわかってきています。

※注1:BPR(Business Process Reengineering)
売上高や収益率などの企業活動に関するある目標を設定し、それを達成するために業務内容や業務の流れと組織構造を分析して最適化すること。

   そこで定型化できる業務のみならず、あらゆる場面での効率化を求めて個々の従業員の成功体験・失敗体験から「作業のコツ」にいたるまで、従業員の生産性向上に寄与する属人的なノウハウを蓄積・共有していくことが必要だと考えられるようになりました。これがナレッジマネジメントの概念の発祥であり、元々は暗黙知を形式化することに重きが置かれていたのです(図2)。

ナレッジとなりうる様々な情報/出典:ITR
図2:ナレッジとなりうる様々な情報
出典:ITR
(画像をクリックすると別ウィンドウに拡大図を表示します)

   なお本連載は、ナレッジを「経験や見聞を通じて得られた情報、アイデアおよび物事の進め方のうち、特に価値があると認められたもので他の人が再利用可能なもの」と定義しておきます。


米国から日本へ

   ナレッジマネジメントを具現化するITツールの多くは米国を発祥の地としています。「個人主義」「結果主義」の風土が強い米国には日本のような終身雇用の文化はなく人材の流動が激しいことから、従業員個人のナレッジを企業のナレッジとして残す仕組みが重要であったといえるでしょう。

   一方、縦型社会の日本には様々な経験知を先輩から後輩へと自然に継承していく風土がありますが、残念ながらこの風土は薄れつつある状況です。また、「2007年度問題」ではこれまで企業を支えてきた団塊の世代の様々なナレッジをどのように企業に残すかが大きな課題の1つであり、ナレッジマネジメントは企業にとって以前に増して重要度が高まっています。

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アイ・ティ・アール  上村 陽子
著者プロフィール
株式会社アイ・ティ・アール  シニア・アナリスト
上村 陽子(かみむら ようこ)

データウェアハウス、BI、CRM、コンテンツ管理分野の市場調査を担当する。慶応義塾大学理工学部卒業後、ユーザ企業の情報システム部門を経て、1999年より現職。


INDEX
第2回:ナレッジマネジメントを具現化するツール
  業務の分類とエンタープライズ・サーチの役割
ナレッジマネジメントとは
  ナレッジマネジメントを具現化するツール
社内の情報資産を最大限に活用するエンタープライズ・サーチ
第1回 エンタープライズ・サーチが求められる背景
第2回 ナレッジマネジメントを具現化するツール
第3回 エンタープライズ・サーチの機能を見極める
第4回 各社エンタープライズ・サーチの機能を見極める
第5回 企業導入における留意点

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