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エンタープライズ・サーチ
社内の情報資産を最大限に活用するエンタープライズ・サーチ

第1回:エンタープライズ・サーチが求められる背景
著者:アイ・ティ・アール  上村 陽子   2006/4/5
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雪だるま式に増え続ける電子データ

   ITシステムの利用が増えるにつれ、以前にダウンロードしてどこかにしまいこんだファイルを探す、数週間前に届いたメールを探す、誰かが作成していた(と思われる)データをおぼろげな記憶を頼りに探す…など、PCに向かって電子データを探している時間が最近とても多くなった気がします。

   米国のある調査では、ホワイトカラーの労働時間のうち、実に25%が情報を探す時間にあてられていると報告されています。同様の調査は複数の機関が行っているようで、中には40%もの時間を情報検索にあてているという記事もありました。

   さすがにこれは大げさな気もしますが、ネットワーク環境が整備された代償として、情報を探すことに多くの時間がとられるようになってしまったことは否めません。

   今こうしている間にも、従業員が企業内でアクセスできる電子データの量は増え続けています。

   一般的に表1のようなOffice文書やイントラネットのWebコンテンツなど、あらゆる情報がビジネス・コンテンツとしてとして扱われます。

  • 顧客への提案書/契約書
  • 企画書/設計書
  • 業務マニュアル
  • 通達書類
  • 会議議事録
  • 調査報告書/研究報告書
  • 上記に付随する画像ファイル/音声ファイル
  • 電子メール

表1:ビジネス・コンテンツとして扱われるものの例


情報のライフサイクル管理の問題点

   ストレージの価格が比較的安価になったことで、ディスクの空き容量を注意する必要が薄れ、「とりあえずとっておこう」という程度の情報が残り続けていることもあるでしょう。

   これも情報の氾濫を拡大させる1つの要因です。

   情報の氾濫を避ける上で、情報のライフサイクルを管理することはとても重要です。ここでいう情報のライフサイクル管理とは「XX年経過したファイルは削除する」「XX年アクセスのないファイルは所有者に利用の有無を確認して保管場所を変える」といったファイルについてのポリシーを策定し、実際に運用することです。

   しかし残念ながら、こういった運用を実際に行っている企業は少数です。作成時に削除のタイミングを決定することが困難な情報が多いことや、既存の情報は重要度やアクセス頻度に関係なく同一サーバに蓄積されており、整理・分類するのに大変な手間がかかることなどがその背景にあります。

   また明確なポリシーを定め、ある時点からその運用を開始したとしても、昨今のビジネス環境をかんがみると、ビジネス・コンテンツの増加傾向を止めることは不可能でしょう。

   多くの企業がITシステムの構築をしましたが、利用される情報資産は必ずまとまって保存されているわけではありません。従業員がそれぞれに必要な情報を効率的に入手できる環境を整備することは、現在多くの企業において課題となっています。本連載ではITシステムの構築が終わった段階のユーザ企業が、今度はどう情報資産を有効活用していくかについて解説していきます。

   今回エンタープライズ・サーチを考察するにあたり、まずは「ユーザ企業における主要なIT動向の重要度の分布」「主要なIT動向の実施状況」の説明をしていきます。

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アイ・ティ・アール  上村 陽子
著者プロフィール
株式会社アイ・ティ・アール  シニア・アナリスト
上村 陽子(かみむら ようこ)

データウェアハウス、BI、CRM、コンテンツ管理分野の市場調査を担当する。慶応義塾大学理工学部卒業後、ユーザ企業の情報システム部門を経て、1999年より現職。


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第1回:エンタープライズ・サーチが求められる背景
雪だるま式に増え続ける電子データ
  企業の投資意欲は増加
  エンタープライズ・サーチとは何か